マガジンのカバー画像

百卑呂シ言行録

306
日常を切り出して再構築したもの。
運営しているクリエイター

#クリエイターフェス

巡り合わせ(2023/10/29)

 日曜だけれど出社して、トミーと車1台で外出した。  用件は特に問題なく片付いて、ホッとしながら職場に戻る途中、トミーがコンビニに寄りたいと云い出した。食事もせずに15時すぎまでいたものだから腹が減ったらしい。  見るとちょうど近くにセブンイレブンがあったから、そこへ寄ることにした。  自分は別段空腹ではなかったけれど、せっかく来たからブラックサンダーでも買うつもりで一緒に入った。  いつも買うひとくちサイズが、ちょうどラスト1個だった。ひとくちサイズはチョコ感200%超え

鳥の巣、望み

 庭の木に鳥の巣があると妻が教えてくれたから探してみたが、一向に見つけられない。  どこにあるかと問うたら、そっちではなく小さい方の木なのだと云う。それで低い方の木を見ると、確かに枝の根元に丸い鳥の巣があった。  鳥の巣をこんなに間近で見るのは初めてで、ちょっとわくわくした。しかし間近で見られるぐらいだから、随分低い。自分の胸ぐらいの位置で、猫に見付かったらひとたまりもないだろう。こんなに低くていいんだろうかと何だか心配になった。  スズメよりもほんの少し大きめの、お腹の赤い

暗闇、足音(2023/10/27)

 定時を回った後、仕事について思う所あって少々凹んでいると、トミーが「どうしたんですか」と言ってきた。 「うん、凹んでいるのだよ」と言ったら、「大丈夫ですよ」と返ってきた。凹んでいる理由も聞かずにそう云われたって説得力がない。 ※  ひとしきり話して意見を聞いたらいくらか気分が快復したから、帰ることにした。  トミーは片付けたい仕事があるのでもう少し残業していくと云う。 「それじゃぁ、先に帰るよ」と事務所を出たら、誰もいない上階から足音が聞こえた。通常上階にいるのは上の人

鳩、ぬるい蕎麦(2023/10/17)

 目覚めたら、いつもの起床時間を50分も過ぎていたから驚いた。一瞬の二度寝のつもりだったのに、こんなに時間が経過しているようではかなわない。水筒に珈琲だけ準備して、車の中でパンを噛りながら出社した。  今日も遠出の予定だけれど、その前にさっと片付けたい用件があって、ちょうど終えたところへイゴールさんが出てきた。そうして、「百さん、今日は◯◯へ行くのだろう? 一緒に行こう」と言った。  近頃のイゴールさんは、一緒に出かけると車内で上の人をけちょんけちょんに貶す。聞いていたら

公園(2023/10/15)

 娘の友達が二人で遊びに来た。家で遊ばせてほしいと云う。どうぞと上がらせて、妻は近くのスーパーへおやつを買いに行った。  子供らは最初は庭でボール遊びをしていたけれど、じきに室内で遊びだした。自分は2階で読書をしながら、子供らの声を聞くともなく聞いていた。  一人が持って来たゲーム機を取り出して遊び始め、もう一人がそれに加わった様子だが、娘の声だけ聞こえてこない。そっと様子を覗いたら、二人の傍らで紙に絵を描いている。ゲーム機を持たせていないものだからついて行けないのだろうと思

記憶と理屈(2023/10/14)

 昨夜、スマホとモバイルバッテリーを充電しようと思ったら充電器が見当たらなかった。  スマホは古い充電器を使えばいいけれど、モバイルバッテリーはあの充電器でないと、熱くなるから剣呑でいけない。  それで家の中をあちこち探したけれど、一向出て来ない。鞄の中を探したらケーブルだけが見つかった。  全体、自分は充電器を職場には持って行かない。おまけに昨日は終日車移動だったのだから、尚々持って行くはずがない。  にもかかわらずケーブルだけが出てきたものだからややこしい。よくよく思い

海、心(2023/10/13)

 少し遠めの地域へ直行して店回りすることになっており、いつもと同じ時間に出るつもりでいたけれど、うっかり二度寝して1時間ばかり遅くなった。よほど疲れているらしい。  それでも別段遅刻はしないから、普通に飯を食って家を出た。  終日店回りをしていると7割ぐらいが移動時間になる。その間はYouTubeで怪談などを聴きながら運転しているだけだから、何だか仕事をした気がしない。  社用車で海沿いの道を走りながら、きれいさに感心した。  自分は瀬戸内で生まれ育ったものだから、「見渡す

感情、移動、ピュアモルト(2023/10/12)

 昨晩、ネルソン氏が「君、明日はS社へ上の人と行くのだろう? その商談は必要なのかい?」と言ってきた。 「上の人がセッティングしろというからしたけれど、あんまり必要とも思えんね」 「上の人にはS社よりもA社へ行って例の話をしてもらわなければならないんだが、彼は全体どうするつもりなのだろうね?」 「まだ行ってなかったのかい? これは驚いた」 「なにしろ上の人が自分でアポイントを取ると云ったのだからね。こっちは待つしかないさ」  そうして何だか当たり前のように呆れた顔をする。そ

裕福(2023/10/09)

 28の時、知り合いの飲み屋で4人の常連客に紹介された。みんなフリーのライターなのだと云った。  手近にいた2人は自分より2つばかり年上で、ひとしきり語り合って、先に帰っていった。  後に残ったのは、やはり同じぐらい年格好の女と、ネルシャツを着た男だった。  男は何だかどんよりした様子で、「僕はね、今年51なんですよ。だからベテランだって、彼らは持ち上げてくれるけどね、実際、年食ってるだけなんですよ。不安しかない。こんな生活だから結婚もできないしね。このシャツだって、ゴミ捨て

腹痛、ドーナツ、電話(2023/10/05)

 朝、病院へ健康診断を受けに行ったら、車を降りたところで腹が痛くなった。それで受付よりも先にトイレに入ろうとすると、年輩女性スタッフが「健診で採尿がありますが、今トイレ行くんですか? まずくないですか?」と問うてきた。  わかっているけど腹が痛いんだと云うと、「じゃぁ今採尿コップ持ってきましょうか」と言うから、そうしてくださいと頼んでおいた。おかげで一足先に採尿を済ませられたが、別段得をしたようにも思えない。実際、得でも損でもない。  結局、排便の方はあんまり捗々しい結果では