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妙薬

 消印の無いプレパラートを黒糖で焚き付けて、明朝みょうちょう、縊死した胡桃を乱
層雲へ野辺送りする

 饒舌な遺跡の周辺を公転する地震計に投入された禁書には、健やかな妄言
が装着されていた

 御息女の夢語りに、手探りで鏤める妙薬の木霊

 辞世の砂絵で彩られた環礁から舞い上がった密輸業者へ、僅少な葉桜を委
託する

 非売品の同一律と矛盾律は同床異夢に終わると知れ

 下枝しずえが欠航し、姦しい郭公の射影が消散する
 謹告された自爆に媚びた金蛇かなへびの潜入による鏡像異性体の争奪

 銀朱をちらつかせる蜻蛉は、静々と裏町を消尽し、不釣合いな高みから教
誨を倒叙した

 中断された引き明け

 画定した欠陥を品定めする鶸も、被弾する檜に直結した集積回路には猜疑
を抱かない

 夢見る金環蝕

 薄暮に翻る飛花を掬う青雀あおがら

 密航した閃緑岩が仕立てる更紗の位相に同期した光苔の慎みから、秀麗な
曙光が遣わされた

 睦まじい複素数に月長石が萌え出す


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