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#5 : SF小説 インターネット蹂躙AI「ツナミ」

ミノルの家の前まで来ると、男はサーバを箱から出して持ち上げた。
「重いぞ。持てるか」
「はい」
ミノルが玄関を開けて道を作り、タカシがサーバを受け取った。
「これにサインして」
男は「レンタル契約書」と書かれたぐしゃぐしゃの紙とペンをミノルに渡してきた。
返却日は翌日、金額は「0」になっている。
ミノルが何か言おうとすると、男は
「お小遣い大事に使えよ。今回はおじさん、ボランティアで協力してやる。次はメモリーカードでも買いにおいで」
と言って去っていった。
タカシが玄関でよろめいていると、コウタが手伝いにきた。
「タカシ、こっち持つぞ」
「ありがとう」
「ぼくドア開けるよ」
3人はサーバの筐体を、まるで御神体でも運ぶように慎重に運び入れた。
四畳半の中央に黒光りするサーバが置かれると、狭い部屋がさらに狭くなった。
「きついなあ」
「しょうがないよ」
タカシとミノルはサーバの電源ケーブルを繋ぐと、電源ボタンを押した。
「ディスプレイは?あとキーボードも」
「お父さんのやつ持ってくる」
ミノルは家の中を行ったり来たりして必要なものを揃えた。
「初期化始めるよ」
タカシはサーバ筐体の上に置いたディスプレイを見ながらキーボードを叩いた。
「ぼく、こっちでインストールディスク作るね」
ミノルはススムの足元でラップトップを開いた。
「コウタ、ススム、コーディングはどう?」
「今チェックしてる。テストはできないからぶっつけ本番でいくぞ」
4人はそれぞれの作業に集中し始めた。
会話はないが、不思議な一体感がある。
冬が終われば、コウタとタカシ以外は学校が別々になる。こうして集まることも少なくなるだろう。
ふと、ミノルは窓を見た。
外はすっかり暗くなっている。
「今何時くらい?」
「11時過ぎたところだね」
「日付が変わる前に何とかなりそうだな」
ススムが言うと、コウタがベッドの上で伸びをした。
「あとはこいつをそこのサーバに仕込んで、イントラネットに繋げるだけだ」
「オッケー、じゃあデータちょうだい。こっちでインストールするよ」
「ここにデータ入れといた」
ススムがメモリーカードをタカシに渡した。
「いよいよだな」
タカシはサーバにメモリーカードを差し込むと、中の実行ファイルを起動した。
すぐに「Ok」が表示が出た。とりあえず、エラーは出ていない。
これで、全ての準備が整った。あとは、イントラネットに接続するだけである。
「いくぞ」
4人が固唾を飲んで見守る中、タカシがLANケーブルを差し込んだ。
(続く)

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