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憧れのプロヴァンス

3年ぶりにヨーロッパへ行った去年の6月のこと。書こう書こうと思っていたら、いつのまにか時間が経ってしまった。

ずっと憧れていたプロヴァンス旅行の際に旅行記もいろいろ参考にしたけど数が少なかったので、このnoteはこれから南仏プロヴァンス地方へ行く人・行きたい人の役に立つことを願って、私の旅行について綴ります。

■プロヴァンスへ行くまえに

まず南仏は日本からの直行便がないので、経由地を決めるところから。どうせなら行ったことのない国も寄りたいな、鉄道旅もいいかなあ、とネットでいろいろ調べていたら、運良くイベリア航空のキャンペーンを発見。マドリード直行便が安かったため、成田からマドリード経由でプロヴァンスIN、アルルとエクスに宿をとって、帰りはいつか行きたかった古都トレドに寄りつつマドリードOUTという旅程になった。

休暇をめいっぱい使った7泊9日のフランス・スペイン旅に決まり、いざ観光地を調べようと思って本やネットの情報を漁りだしたのだけど、その少ないことといったら!

マドリードはある。トレドもマドリードから日帰りで行ける町として紹介されている。では、プロヴァンスは?

探してみると、フランスはパリだけかと言いたくなるようなガイドブックばかり。これが首都とそうでない地域の差……。でも救世主はいた。

地球の歩き方編集室『地球の歩き方 2018〜19 A08 南仏プロヴァンス コート・ダジュール&モナコ』ダイヤモンド・ビッグ社

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他のガイドブックにはない情報ばかりで、プロヴァンスをメインに旅行するならこの本一択と思う。私は大変お世話になりました。地球の歩き方編集室にお礼を伝えたいくらい。本当にありがとうございます。

あと私は大学でヨーロッパについて学んでいたので、大学の教授たちからもいろいろと教えていただいた。なんて贅沢。

ネットでも情報収集をしてから出立したけれど、現地で戸惑うことも多々あった。

■初日 プロヴァンス空港~ニーム~アルル

まずプロヴァンス空港に到着し、いざアルルに移動しようとしたところなぜかニームに行き着いた。これが初日。なぜ……。

列車で移動しようとしたところ日曜日のせいで列車が全然来ないうえ、駅のスタッフに確認してから乗ったはずの電車がアルルに停まらずニームまで行ってしまい、さらにニームからアルルへ行く電車もまた数時間待ちという事態。恐るべしdimanche。プロヴァンスで列車移動は得策ではないと思い知った。

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まあそれも旅の醍醐味と思って、ニームを観光してからアルルへ行くことに。ニームは古代ローマ遺跡が残る街で、至るところにヤシの木に繋がれたワニがいる。ニームのシンボルだそう。街も清潔感があってきれいで、ちょっと立ち寄って観光するには良い街だった。結果オーライ。

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そのあとアルルにも無事たどり着く。ここで見られて嬉しかったのがロマネスク建築のサン・トロフィーム教会。彫刻たちがメチャカワだった。もっと見ていたかったなあ。

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私たちが泊まったのは、ゴッホ《夜のカフェテラス》のモデルとなったカフェの向かいにあるHotel Du Forum。天井が高くて趣もあって、とっても良かった。フロントのお姉さんが親切に「向かいのカフェは激マズ、ネットの評価も最悪だから写真をとるだけにしときなね」と忠告してくれたのも笑った。

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忠告通りお店には入らず、写真だけパシャリ。この写真を撮ったのは夜23時半。6月のアルルは日が長く、23時まで待たないと空が真っ暗にならない。日照時間は長いうえ陽射しも強く、目の奥が痛くなるほどだった。外国人がよくサングラスをかけるのはおしゃれだけじゃなくて、ちゃんと実用的な意味があることを知る。

■2日目 アルル~モンマジュール修道院~エクス

朝は早めに起きて、パン屋さんでパンを買って公園で食べる。ヨーロッパでの安定の朝ごはん。そのあとは、アルル旧市街のはずれに古代から存在する墓地アリスカン(Alyscamps)へ。サンティアゴ・デ・コンポステーラの出発地の一つだけど、目当ては奥にあるサン・トノラ教会跡。人の気配がなく鳩の住処になっているほどで、廃墟好きにはテンションのあがる場所だった。

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その後駅に戻り、駅前のバス停からモンマジュール修道院(Abbaye de Montmajour)へ。10-13世紀のロマネスク建築。ここは平日でもバスの本数が少なく行きづらいうえ、バスが大幅に遅刻してきてフランスらしさを感じた。けど、敷地内が広く見どころも多いので本当に行って良かった!

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このライオンを見てくれ。可愛いがすぎる。

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写真左に写る塔からは周りが一望できる。石を切り抜いて足の下が見える箇所があり、東京タワーのガラス床みたいな度胸試しもできる。居合わせた老夫婦とおっかなびっくり歩いた。

存分に楽しんだ結果、帰りのバスを逃してホテルまで5kmほど歩くことになったのはご愛敬……。その後エクスの宿へ向かうため、アルル~マルセイユ間を列車で、マルセイユ~エクス=アン=プロヴァンス間をバスで移動した。列車の窓から見えた海がきれい。

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エクスで美味しかったのは、名産のロゼワイン! インフォメーションセンター近くのレストランLe Dariusでは店員さんが一生懸命慣れない英語で説明してくれて嬉しかった。

■3日目 エクス~カシ

南仏に来たからには、やっぱり地中海を見て帰りたい。でもマルセイユは治安がよろしくない。できれば避けたい。どこかいいところは……と調べていて、ここ!と思ったのがカシ(Cassis)。地元の人に人気の街らしい。

調べたらエクスからバスを乗り継いで行けるとあったのだけど、このバスが大変厄介だった。(ちなみに、フランス語で大きい鉄道駅はGare、バスターミナルはGare routièreと言うそう。直訳すると道路の駅。なるほど。)

エクスは本当にバス社会で、バスターミナルにはたくさんのバスが停まっている。まずバスターミナルのチケット売り場でオーバーニュ(Aubagne)経由でカシまで行きたい旨を伝え、往復チケットを買う。時刻表をもらうのも忘れずに。

そのあとバスターミナルでバスを待つ、待つ、待つ。が、待てど暮らせどバスが来ない。なぜ? 他のバスはほぼ時刻表どおりに来ているのに。

バスターミナルを行ったり来たり、右往左往して分かったことは、オーバーニュ行きのバスはバスターミナルから2km離れた駐車場から発車するということ! バスターミナルから発車する、という旅行記をネットで見かけていたけど、時期やダイヤ改正で変わったのかも。

わーん、と泣きたい気持ちに駆られつつ、Kryptonという駐車場兼バス停まで歩いた。旅行中は2kmくらい軽々歩ける魔法にかかっている。

乗り換えのオーバーニュではいくつかバス停があり、バスによってスキップする停車場が違うので、エクス~オーバーニュと、オーバーニュ~カシのバス時刻表を突き合わせ、接続のよい停車場を調査する必要アリ。カシでは、ごそっと人が降りる停車場でバスを降り、坂道を下って海を目指す。

すると、たくさんのボート! カラフルな家々! バカンスを楽しむ人々!

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すごい。映画「太陽がいっぱい」でこんな場所見たことある。あれはイタリアだったと思うけど、これこそ地中海。

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地中海のフィヨルドとも称されるカランククルーズに申し込み、きれいな青い海を堪能して、カシの街を散策した。復路のオーバーニュでもバスが大幅に遅れてきたけど、カシで地中海を楽しめたので満足です。

バスに乗るとき気をつけたのは、「Bonjour!」と、降りるときの「Merci, Au revoir!」の一言。フランスではバスやお店、ホテルなどで一言挨拶するだけで対応が全然違う。次にフランスに行くときは挨拶のバリエーションを増やしたい。

私は英語がからっきしで、フランス語も大学ですこし学んだ程度。しかもヒアリング能力が予想以上に落ちていたため、バスターミナルのスタッフとも全然意思疎通できず悔しくなることも。私が片言のフランス語でしゃべると相手もフランス語で返してくれるのだけど、それが聞き取れないのでお互い???となってしまうことが何回かあった。傍から見たらコントだな。

英語だと、ホテルの人々はもちろん堪能だけど観光地のレストランで働いている人やバスの運転手さんなどびっくりするほど流暢にしゃべるかと思いきや、すかさず「I CAN NOT SPEAK ENGLISH!」と言う人もいて。南仏の人々に何か聞きたいとき、その人が英語を話せるか話せないかは運による。

■4日目 シルヴァカンヌ修道院~エクス~空港

この日もまずはバスターミナルへ行き、シルヴァカンヌ修道院(Abbaye de Silvacane)へ向かう。ここもバスの本数が少ないので、時刻表を要チェック。

南仏のロマネスクといえば、プロヴァンスの三姉妹。建築がよく似ているル・トロネ、セナンク、シルヴァカンヌ修道院のことで、シルヴァカンヌはその末っ子にあたる。

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静謐な雰囲気が心地よい場所だった。質素なシトー会建築ながらところどころに施されている装飾が控えめで可愛らしい。回廊近くにはアルトサックス奏者がいて、柔らかい音があたりに響いていた。

エクスに戻ってからは旧市街へ。とても賑わっていたけど、私はそれらを横目にサン・ソヴール大聖堂(Cathedrale St. Sauveur)に向かった。

いちばんのお目当ては一日数回ガイド付きで中に入ることができるという回廊。入口を探してうろうろしているとドアにガイドの張り紙を見つけ、その重たいドアを開いて待つ。

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ここもロマネスクの彫刻が可愛くて可愛くて、中に入れて良かった。そのあとは慌ただしくバスターミナルに戻ってプロヴァンス空港へ。プロヴァンス、ほんとうに楽しかった。

À très bientôt, France!

■プロヴァンスのエッセイ

今回の旅のおともは、プロヴァンスブームを引き起こした本。

ピーター・メイル『南仏プロヴァンスの12か月』(池央耿訳)河出文庫
ISBN9784309461496

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プロヴァンスのことを調べていると、よくこの本の名前が挙がる。著者がイギリスからプロヴァンスに移住してからの1年間が綴られているエッセイ。読むと地方ならではのゆったりとした雰囲気、のどかさが伝わり、ウィットに富む文章に頬が緩む。

今は絶版になっているのか新刊では見つからず、古本屋で購入した。続編も数冊出ているけど、またプロヴァンスに行きたくて堪らなくなりそうで読むのを躊躇している。

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