海獺

思想のあるOL

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焼肉は、ひとりでいいです。

永遠に続くんじゃないかと思うような15両編成の東海道線を見送りながらiPhoneで時刻を確かめる。あ〜あ、今日も終電か。呟きながら息を吸う。9月、夏が終わる匂いがする。 小学生の頃、こんな夜中に歩くのはうんと特別なことだった。「夕飯を食べたら家から出てはいけない」という暗黙のルールがあった私の家では、何か素敵な日……例えば祭りとか、お泊まり会とか、そんなことがない限り夜の街を歩くなんてありえなかったのだ。 最終電車に乗り換えながら、そういえば今日まだ何も食べていないことに

    • ぶーちゃんとエヴァンゲリオン

      突然ですが、私はモテます。 異性にも同性にもそれなりにモテるほうだと気付いたのは、高校に入って少ししてから。生きているだけで「カワイイ」と褒めてくれる友人たちのおかげで、それまで自己肯定感ゼロだった私も「生きてていいんだな~」と感じ始めました。恋人も特に何もしなくてもできるし、告白だって笑っちゃうほどされて、でもさして恋愛に興味のなかった私は “来るもの拒まず・去る者追わず” の精神でなんとなく形ばかりのお付き合いをしたり、「価値観が合いません」という売れないバンドみたいな理

      • なんとなく僕たちは大人になるんだ。

         SNSのプロフィール欄に、やけにスラッシュをつけて自己開示している人が、なんだか目についてしまいます。「〇〇高校卒業」とか、「スピッツ好き」とかならまだわかるんですけど「自分の未来は自分で変える」とかなんとか、標語みたいなものを羅列しているのは、「志望大学絶対合格!」みたく書けば叶う的なことなのでしょうか。    もう人生で呆れるほど自己紹介をしているというのに、未だにうまくいったためしがありません。名前、出身地、好きな食べ物、最近の趣味……といった、ごく簡単な項目を一通り

        • わたしと、彼女と秘密のくらし。/ルームシェアとスナックの思い出

           敷金礼金なし、風呂トイレ別、Wi-Fi付き水道費共益費込みポッキリ3万5000円 初めて実家を出たのは、大学3年生の春のことでした。わたしの実家から大学までは、電車で15分、歩いて30分ほどで、1人暮らしをするほどの距離でもありませんでした。というより、実家から通うことを条件に大学に入ることが許されたので、仕方なく地元の大学に進んだというだけのことです。進学当時、父が急に仕事を辞めてしまい(4年に1回は辞めるので、わたしはこれを「オリンピック」と呼んでいました)、当時の担任

        焼肉は、ひとりでいいです。

          固いプリンと父の愛

          プリンと言えば保育園や小学校から帰ってきて、夕食までのあいだ、毎日、毎日、教育テレビを見ていました。中でも、おじゃる丸はちょうど6時頃にはじまるので その頃になると「そろそろ、ご飯できたかな」と思うのでした。 そんなおじゃる丸を、誰しも一度は見たことがあると思うのですが 彼の好物が何だったか、覚えていますか? 「 それは、プリンでおじゃる 」 そう。 おじゃる丸は、主人公カズマのお母さんである、アイちゃんが作るプリンが大好きなのです。 プリンを家で作る、ということは少

          固いプリンと父の愛