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深く聴き込みたい作品 vol.1

前提

ここ数年「音楽をいかに聴くか」について頻繁に考えていた。音楽を聴くことは楽しく、そして何よりも自分が音楽作品を作る上でこの上なく大事な行為であるからして、出来る限り幅広く「良い」音楽を摂取し続けたい訳だが、果たしていかにそれを達成するか。
(生活や仕事などの比重が増えたことに伴い)以前と比較すると、どうしても音楽をリサーチする時間をあまり確保できなくなっている。学生時代は本を読んだり、ウェブを漁ったり、CDショップを巡ったりと音楽を聞くことに費やす時間が多分にあった。しかし今は残念ながらそう自由には動けない(更に言えば音楽を聴くのと同じくらい音楽を作りたい気持ちもある)。
そうなると、(あくまで自分の場合は、であるが)気軽にSNSでエンカウントした情報を元手に新しい音楽を探す場合が多く、それに伴って(SNSでは直近プロモートされている音楽についてフォーカスが当たりやすいため)最近リリースされた音楽を消費することが多い。

おまけに音楽は映画や小説とは違って、作品(ここではアルバムを指す)全体を聴き追えずとも作品を楽しめることが往々にしてある。どうしても散漫に新譜の1,2曲目やシングル群などを聞いて、記憶に大して定着しない、なんてことも多々ある。なかなかどうして一つの、過去の音楽を集中的に聴くことは自分にとっては意識的に努めないと果たせないことが分かった。

一つの過去の、作品を集中的に聴き込めないことの問題、それは多面的にその作品を理解した、と自分的に体感できるまで聴き込む作業を疎かにするとどうしても作品制作の質が落ちる傾向にある、ということにある。自分は割と長く時間をかけてようやく物事を理解できるタイプの人間なので、ちゃんとじっくり作品と対峙した上で得られる理解を作品制作に落とし込んでいけるようになっていきたい。

対応策として下記の作品を記録していくことにした。

  • 忘れずに聴き込んでいきたい作品

  • 忘れてしまいそうだがもっと聴き込んだ方が良さそうな作品

  • あんまり聞けていないけど何か気になっていた作品

上記の記録対象を考えると同時に、自分があまり聞き込まない傾向にある作品として

  • 名作であることは理解できるものの難解(の射程範囲もこれまた曖昧だが)すぎる作品

  • 聴き込む上での前提知識がなさすぎる作品

  • 最近新作をリリースしていないため、どうしても忘れてしまっていた過去作品

などがあることが明確になった。実に勿体無い。もし「あの頃好きだった作品」「あの頃興味のあった作品」を永遠に思い出せない、なんてことがあったらそれは悲しいことなので、頑張って記録を取ろうと思う。掲題の記録は少なくとも月2回くらいの頻度で更新していきたい(とは言え深く聞きたい音楽がないのであれば更新は止まるが-それは悲しい-)。各回、6枚のアルバムを選ぶ。月12枚アルバムを聞くだけでも自分には案外大変かもしれないが、それでも毎週大量にリリースされる新譜を片っ端から漁るよりも出来そうではある。聴くリズムを自分から作りたい。焦らず聞いていく。
批評的に分析するのではなく、なぜ今になってこれを聞きたいのか、聞いていたいのかを記録していく。前書きは以上である。

Low - Double Negative

Released in 2018
Sub Pop Records
そもそもBon Iverが好きであったことからBJ Burtonに興味を持ち、そのBJ Burtonが関与している、とのことで興味を持った。Lowは本作以前とは全く異なる音像を提示している。その自分達が保有するジャンル性を大胆にも更新しようとする態度自体も素晴らしい。
本作は良く言えば静謐さと緻密さを併せた怪作だが、同時に終始暗く、朧ろ気な雰囲気も強く、それ故に聴き込むのに体力を要するためどうしても頻度高く聞くことを避けるきたように思う。新作も素晴らしかったことだし改めて彼らの大いなる変革点をおさらいしたい。

Taylor McFerrin - Early Riser

Released in 2014
Brainfeeder
グラスパーを筆頭にジャズを新しいものに作り替えることへの意欲を見せていた作家が大勢フィーチャーされていた時期にリリースされた本作は、柔らかいタッチのエレクトロニクスが上質に機能し、実に心地よい。本作はかなり自分をジャズのフィールドに開いてくれた作品として、覚えておきたい。

2022/04/13追記
・6曲目 Stepps
 ・サンプリング素材になりそうな音が無数にある
  ・whosampledで調べてみたらTomMischとかがサンプリングしていた
 ・ビート自体のヨレ,重たさに反して上物が適度に軽やかである種ヒップホップでは得られない体感がある
・7曲目 Already There
 ・グラスパー,Thundercatと名手が集まって作られたこの曲はいつ聞いても色彩感豊かで、美しいスケープが眼前に広がる
・8曲目 Decisions
 ・SEとドラムパーツを並列的に、同価値のエレメントとして扱えるのがエレクトロニックミュージックの利点とも言えるが、本曲はまさしく好例だし、その塩梅が良い(とは言え2014年的ではある)
 ・1:30からの展開でそれまで持続していたリズムに新しい表情をもたらしている。大きい流れ(基盤のビート)に対して細やかに上物をサンプリング的に切り替える手法自体は然程新しいものではないけれど、結構な飛躍を上手いこと乗りこなしているようにも聞こえる。

death's dynamic shrowd - I'll Try Living Like This

Released in 2015
Death's Dynamic Shrowd
Orange milk recordsの作品を好きな傾向はあるが、その周辺までもをちゃんと掬い取れているとは思えない現状である。ddsはOrange milkのkeithがメンバーとして活動しているバンドで、昨年リリースされたFaith in Personaが素晴らしかったことから改めてちゃんと過去作を聴き込もうと思った。Vaporwaveと向き合ってきた変遷をちゃんと見ていきたい。

Kanye West - The Life Of Pablo

Released in 2016
レーベルは長いので割愛
カニエは自分がアメリカに住んでいた頃にThe College Dropoutが激流行りしていたことから好きになり、初期三作くらいまでは頻繁に聞いていた。それ以降の作品も細々聞いていて、とりわけYeezusは音作りも構造もかなり面白く、好き(かつ参考にしているよう)な作品だが、どうしても彼の態度やマーケティング手法などにイラつくことがあったり、普通にどうしようもない曲もあったりすることからいくつかのアルバムはあまり聴き込んでいない。とはいえカニエの作品はアイデアの宝庫と言って差し支えないので、改めてじっくり聞きたい。

Intervals - The Shape of Colour

Released in 2015
Intervals
高校生、大学生の頃はメタル大好きっ子だったこともあり、一時期かなり聞き込んでいた。Djentの系譜にありながら、うまいこと重たさを振り払っていて、それと同時に疾走感が終始削れない。疾走感、ないしドライブ感のある音楽は最高である。忘れたくない一枚。最近の作品も追ってみたい。

Loraine James - REFLECTION

2021
Hyperdub
一曲目がカッコ良すぎて逆に満足してしまった。UKの音楽をこれまで体系的に聞いてこなかったので、少し反省がある(アメリカの音楽好きすぎる)。音に遊び心があるし、もっとちゃんと聞いて感じ入る必要がありそうだ。

以上。おすすめがあったらコメントやTwitterなどで教えて貰えたら嬉しいです。

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