彼はわたしの救世主
彼からの"お疲れ様"が好きだ
その日、休日に出勤で、お店は人の山で溢れていた
駐車場まで並ぶぐらい
皆はバタバタで少しピリつく
周りのスタッフに分からないことを聞くと口調を強くされながら教わる
でも彼だけはどんな時でも冷静だった
周りを見れてテキパキと仕事を回せる優秀な人
そんな中私は額に汗を垂らし、もがきながらあちらこちらへとコーヒーを持って往復する
そんな時
私のエプロンの紐が解れた
ボタンが取れたせいですぐには結べない状況だった
しかし、お客さんが沢山いる
1人欠けたらもっと大変になる
でも、お客さんの前でだらしのない格好をして接客するほうがお店の評判が下がる
ホールに戻り、誰か女性に結んでもらおうと辺りを見渡した
一人の女性はお客さんを席に案内
もう一人はお客さんに商品を提供
他の女性のスタッフも散らばって私の近くにいなかった
ただ、
目の先にいるのは
私が恋心を抱いてる彼だけだった
手が空いてる人が他にいないか探したけれど、それでもすぐにはホールに帰ってこない
ここは意を消して仕方なく彼にこんなお願いをしてみた
『〇〇くん、忙しいのにごめん。後ろのエプロンの紐結んでくれる?』
彼は何も言わず離れた紐同士を結びつけ始めた
少し彼の指が背中に当たる
ドキドキした
こんなの傍からみたらイチャイチャすんなよ。って思われても仕方のない事
忙しいのにも関わらず、私のお願いに応えてくれた彼だった
17:00
あんなに多かったお客さんは次々と減っていた
その時間も私と彼はホールで一緒だった
そこに一人の女性が来客する
そのお客さんは何度か見たことがあった
綺麗な顔立ちをしていてセレブ系の女性
でもその女性の態度に嫌気を差した
『こっち急いでるんだけど』
その女性はホールに来て近くにいる私に強い口調で文句を言う
私はすみません、ただいまお伺い致します。と言いその方にお水とお絞りを席まで持っていった
席が空いていたので、その女性にはお好きなところに座ってくださいと声を掛けたものの、座っていた場所が、大人数じゃないと案内出来ない席だった
い、嫌がらせ、、?笑
私はその女性に恐怖を覚え、声をかけられなかった
困り果てていた私は彼に相談した
『いま来客したお客さんが〇卓に座っているんだけどあそこは案内しちゃいけない席だよね、、?』
「あそこはメニューとボタンないから案内出来ない席だね。席変えるように言える?」
さっきの出来事を思い出す
「行けそう、、?」
彼は優しい声で私に尋ねてくる
『こわい、、』
そう言うと彼はシルバーを持ってこう言った
「俺が行ってくるよ、セットしといて」
いつも私が駄目になって落ち込んでいるとき、困ってるとき、悩んでるときに助けてくれるのは彼しかいない
彼ばっかり気づいてくれる
お客さんに対する対応も完璧で、女性の機嫌を取り戻すのも簡単だった
私は彼に深くお礼をした
バイト終わり
休憩中の彼とまた喫煙所で話していた
さっきの女性のことを話してみる
『怖かった、、』
「あの人常連さんだよ笑」
『や、やだ、、笑』
常連さんならもっと店員にも貢献しろ!とか思っていた
「まぁ、、ああいう客俺も嫌だけどね笑」
嫌なのに代わりに対応してくれたんだと、
私はいつも彼に助けられて救われてばっかり
彼の事、救世主と言っても過言ではない
彼はその日、「頑張ってたもんね、お疲れ様」と私に言ってくれた
この前は「頑張ってね」ではなく「頑張ろうね」って。
嬉しかった
他の言葉が見つからないぐらい
彼は本当に私の心を奪うのが得意だ
彼の優しさと温かい言葉で私の胸は破裂寸前まで大きく膨らんだ