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【経済】日銀の「YCC」をざっくり解説

人間には、長い言葉をとりあえず略してしまうという悪い癖がある。経営で言えばKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)とか、M&A(Mergers And Acquisitions、合併買収)、CEO(Chief Executive Officer、最高経営責任者)とかあげればキリはない。
これはエンタメの世界も同じだ。アニメなんかでもテニスの王子様は「テニプリ」だし、ベルサイユのばらは「ベルばら」だし、深夜アニメの「僕は友達が少ない」はひらがなだけをとって「はがない」である。なお、芸人の「バイク川崎バイク」は「BKB」である。

さて本題はここからで、日本銀行もこうした略語を使って金融政策を説明してくれている。その代表格が「YCC(Yield Curb Control、イールドカーブ・コントロール)」である。

YCCとは、簡単に言うと世の中に流通しているお金の量を増やすための仕組み、要は金融緩和政策のひとつだ。
日銀は現在、政府の借金である国債を買って金融機関を通じて世の中にお金を供給している。この際、国債を無限に買うというわけにはいかないので「どのくらい買うのか」というめどが必要になる。
この「どのくらい買うのか」というもののめどが、めちゃくちゃざっくり言えばYCCなのだと考えておけばよい(細かいことを言い出すとキリがないので)。

現在はこのYCCの一つとして、主に10年物国債について購入のめどを示している。なぜ10年物国債なのかというと、金融の世界で様々な商品の基準として使われることが多いからだ。
もっとも、金融市場が変に歪んでしまうこともあり、日銀は10年物国債以外にも他の国債も購入している。10年物国債を中心に様々な国債を買って、世の中にお金を供給しているのである。

実は、最近このYCCがやけに注目を集めている。というのも、日銀総裁は黒田東彦氏から植田和男氏に代わり、「YCCをやめるのでは…」と言われているためだ。
先ほど言ったようにYCCは「国債をどのくらい買うのか」のめどであり、そのめどを変えればいいだけなので手っ取り早く修正ができる、とみられている。また実際に黒田前総裁もこのYCCの「修正」をしたこともある。

ゆくゆく行われるであろうYCCの修正は、世の中のお金の量を減らす「金融引き締め」に他ならない。
現時点で日本経済の落ち込みにつながるような拙速な金融引き締めは避けるべきであり、その端緒がYCCの改革であるとすれば、断じてそれは望ましいことではない。

植田総裁は金融緩和を当面継続する方針を打ち出している。YCCが見直されたその時、果たしてそれは日本経済が復調したという福音になるのかーーこれからが見極めの正念場である。

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