汐見りら

すこやかライフ志望

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  • 読書記録まとめ

    毎月の読書小記録をまとめています。

最近の記事

付き合わなかったひとの行方

🐎引用作品の関係上、異性愛規範を強く感じる表現があります。筆者としては性別にこだわらず「付き合わなかったひと」を主題に綴りたかったのですが中々難しく、あくまで一作品を筆者個人の体験に引き寄せたエッセイであることを前提にお読みいただければ幸いです💨 ・ 中国のベストセラー小説『悲しみは逆流して河になる』(日本語翻訳版)を読んでいて、この文章にすごく惹かれた。 「女の子たち」の強さに頭がくらくらしたから。 付き合わなかった男の子。 それは恋愛至上主義的に考えれば無意味もし

    • 八月の読書小記録

      ・ 🍉八月の三冊 勝手にふるえてろ/綿矢りさ 私は一度好きだった人のことをかなりしつこく憶えているほうで、ずっと昔の記憶を何度も噛んで飲んで戻して噛んで、とっくに胃液の味しかしなくなっているのに、その胃液が妙に甘いせいでまた噛むのをやめられない。前世は牛だったのかもね、と何度目かの反芻を始めようとしたところで読んだ本。つまりめちゃくちゃに刺さった。 中学時代の片思いを引きずって日々妄想、時に暴走してしまう26歳OLの主人公は傍から見れば滑稽なのかもしれないけれど、私は片

      • 夏フェスコンプレックス

        この時期のインスタグラムを覗くと、必ず誰かが夏フェスに行っている。ろっきん、さまそに、ふじろっく……有名どころの名前こそ知っているが、それはあくまで「ロゴ入りのマフラータオルを広げながら、芝生の上で、彩度のすごい写真を撮る」という行事として記憶しているだけで、私にとっては知らない国の季語みたいなものだ。 私は、夏フェスに行ったことがない。 音楽は好きだ。 小学生までは親のカーステレオから流れる昭和の名曲だけがレパートリーだった私も、中学生の時に好きな邦ロックバンドに出会っ

        • 七月の読書小記録

          ・ 🎋七月の三冊 今日は誰にも愛されたかった/谷川俊太郎、岡野大嗣、木下龍也 詩と短歌による「連詩」の世界と「感想戦」が楽しめる贅沢な一冊。 実はこの本を読むのは初めてではなく、オイ!七月の読書記録ちゃうやんけ!と審判 in my heartはホイッスルを構えているのだが、そのころは自分が短歌を詠むようになるなんて思っていなかった。つまり汐見りら(筆名)としては初読、ということで改めてじっくり味わってみる。 すごい。 昔読んだときとは解像度が全然違っていて、連詩のここがこ

        付き合わなかったひとの行方

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        • 読書記録まとめ
          5本

        記事

          短歌25首「低温発火」(第3回U-25短歌選手権予選通過作品) 

          低温発火 /汐見りら やきたてメロンパン鞄に匿えばシュレディンガーの魔法美少女 図書室のSeventeenは立って読む 葉と葉が擦れる音にも怯む はとちゃんは巫女になりたい教科書に殴り書く激裏夢小説 レモン石鹸を手首に塗り込んでわたしの選手生命はどこ 新人賞発表号だけ飛んでいる部室のすばる 多分南へ ロボットに負けない単純作業しよう 呼吸、駆け足、ふたりきりのUNO 「先輩のイケボ配信聞きました 吐息が夜にひかってました」 はじめてのちゅーは吸入

          短歌25首「低温発火」(第3回U-25短歌選手権予選通過作品) 

          六月の読書小記録

          ・ 🌧️六月の三冊 学ぶことは、とびこえること―自由のためのフェミニズム教育/ベル・フックス【著】里見実【監訳】 ブラック・フェミニストの大学教師であるベル・フックスが「自由の実践としての教育」の可能性について論じた一冊。論じた、というと堅苦しい印象を受けるかもしれないけれど、ナラティブな語りゆえにぎやかな大教室で講義を受けているような感覚で読める。 フェミニズムや人権を学んでいくなかで救われたこともあったけど、それまで気にならなかった日常の些細なことが目に付くようになっ

          六月の読書小記録

          五月の読書小記録

          ・ 🎏五月の三冊 ブスの自信の持ち方/山崎ナオコーラ 「ブス」をキーワードに、差別とは、性別とは、理想の社会とは、を考えていくエッセイ集。 電車に乗ればやれ脱毛、やれ二重整形、スマホを開けば「垢抜けメイク」、「10分踊るだけでくびれをゲット」……そんな社会に疲弊しつつ、そうした価値観から外れてなお自信満々でいられるような強さが私には無くて、夜な夜な奇妙なダイエットダンスを踊る日々だ。だけどよく考えたら私たち、個人が責任を負わされすぎでは? この本のタイトルは自己啓発本っぽ

          五月の読書小記録

          四月の読書小記録

          ・ 🌷四月の三冊 六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成 就活をテーマにしたミステリー。前半は正直読むのがかなりストレスだったが、それは多分多くの人が就活で感じる違和感や嫌悪感が「あるある」として書かれすぎていたからだと思う。どこか登場人物に人間らしい魅力や親しみも感じきれず、このまま「あるある」小説として終わるならあまり好みではないかな……と思っていたら、それは巧妙に計算された描写で、後半「あるある」に気を撮られて見落としていたことを手掛かりに諸々がひっくり返っていくのが快感だ

          四月の読書小記録

          香港・マカオゆる旅行記②

          この記事では主にマカオ(タイパ)観光🇲🇴とちょこっと香港観光🇭🇰の様子をお届けします! ── 香港編🇭🇰はこちら↓ ── いざマカオへ!📍目覚め〜船旅 朝、目覚めてすぐにホテル近くの露店でちまきを食べる。 ねぼすけな私たちが早く活動を開始したのには理由があった。それがこちらのキャンペーンだ。 なんとこちらのキャンペーン、パスポートと航空券を見せれば香港からマカオの移動(船orバス)が無料になるという超太っ腹企画。 私たちが宿泊している九龍からは港のほうが近いので、

          香港・マカオゆる旅行記②

          香港・マカオ無計画ゆる旅行記①

          到着初日からどたばたの女二人旅(⓪は長いわりにまだ観光を始めていないので読まなくてもモーマンタイです)↓ 気を取り直して香港観光へ行くぞ〜〜!ということで、二日目(実質観光一日目)のはじまりです。 写真マシマシ文章ゆるゆるで行きたいと思います。 ── 尖沙咀をあるく📍澳洲牛奶公司(朝食) 朝だぞ〜〜ということで、澳洲牛奶公司 で腹ごしらえ。こちらは朝早くから営業している有名な香港茶餐廳で、伝統的な朝食が食べられるらしい。(昨夜半分夢の・半分ベッドのなかでググり発見した

          香港・マカオ無計画ゆる旅行記①

          香港・マカオ無計画ゆる旅行記⓪

          はじめにこれはたいへんに無計画な筆者によるはじめての香港・マカオ旅行の記録です。完璧な旅程とはほど遠いことを念頭に置いたうえで、反面教師にしながらご笑覧ください。 冗長な旅行記なので、各パートの末尾に枠囲い形式でまとめを掲載しています。お忙しい方や情報収集だけが目的の方はぜひ適宜読み飛ばしてくださいね。 なお本記事⓪では準備段階からホテル着までの移動をメインに取り上げます。以下のような方々にオススメです。 上記にあまり関心がなく、実際の観光まで飛ばしたい方は次の記事①

          香港・マカオ無計画ゆる旅行記⓪

          女子大生、宇宙を燃やした午後の記憶

          大学卒業(寸前)の思い出 ・ 朝、と呼ぶにはだいぶ高いところにある太陽のひかりが目に染みる。友人の絶対遮光カーテン買う!宣言から早三年、この部屋の賃貸契約は残り一ヶ月を切っていた。ペラペラの花柄カーテンはどうやらその寿命を全うできそうだ。おばあちゃんの服の柄でしか見たことがないと笑いの種になっていた花たちも、心做しかどっしりとした態度で揺れている。よかったねー💐! 重たい身体を引きずって布団から這い出ると、8畳のワンルームには開けっぱなしのスナック菓子と缶チューハイと友

          女子大生、宇宙を燃やした午後の記憶

          『傲慢と善良』を読んで怒っている②

          前回の記事では『傲慢と善良』がこれほどまでに私の心を抉った理由と向き合ってみた。 そこから後編を完成させるのに三ヶ月もの時間がかかったのは、私の筆不精と飽きっぽさのせいだけでなく、自分の中で消化し難い問題があったからだ。 『傲慢と善良』を読んで単に傷つくだけに留まらず、激しい怒りを感じたのはなぜなのか。 その理由が分からずに下書きを書いては消してを繰り返したがもうお手上げ、なにか糸口が見つかればと他の方の感想やレビューを拝読することにした。 ・ インターネット上で見かけ

          『傲慢と善良』を読んで怒っている②

          雨が降ったらモー娘。を聞け #推し短歌

          ・ 私の部屋の窓からは木が見える。 誰が植えたわけでもなく、気づいたら随分大きくなっていた品種不明の木。 その葉が青々と茂り、そうかもう夏だったのかと気づいた頃、交換留学の派遣中止を告げるメールが届いた。 2020年。得体の知れないウイルスはあっという間に市中へ広がって、私たちの生活を一変させた。大学に入学する前から目標にしていた留学もそのうねりに飲み込まれ、あっけなく砕けてしまった。 そりゃまあ、予想はついていた。 医療機関をはじめ社会が大混乱し、仕事にも学校にも行け

          雨が降ったらモー娘。を聞け #推し短歌

          『傲慢と善良』を読んで怒っている①

          読書に何を求めるかは人それぞれだが、当時の私にとってそれは少なくとも怒りではなかった。 だから『傲慢と善良』を読了したあと自分の胸に残った感情に驚き、気持ちを静めようとレビューを漁った結果が絶賛の嵐だったことにも軽い絶望を感じ、現在は未だに消えることなく沸々と湧き上がる感情をどう処理するべきか戸惑っているところだ。そういうわけで『傲慢と善良』をめぐる感情の断片をここで整理し、なんとか冷静さを取り戻したい、というのがこの記事の主旨である。 (注:作品批判や評論というよりも自己

          『傲慢と善良』を読んで怒っている①

          読書感想文嫌いによる読書感想文必要論

           夏休み直前、大教室の上段から転げ落ちてしたたかに股を打った。  弊学の大教室には座席が傾斜をつけて扇型に配置されているのだが、落下軌道上に不運にも机の角が連なっていたのだ。シラソファミレド、などと音が聞こえそうなほど見事な落ちっぷりで教室中の視線を集めて成人済女性全力金的を披露してしまっただけでも恥ずかしいのに、股が痛すぎて医務室に運ばれることになったから最悪だ。来室理由と疾病箇所に「隠部打撲」と書くときは本当に消えたくなった。  このバッドラックは私の夏に対する嫌悪感をま

          読書感想文嫌いによる読書感想文必要論