六月の読書小記録
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🌧️六月の三冊
学ぶことは、とびこえること―自由のためのフェミニズム教育/ベル・フックス【著】里見実【監訳】
ブラック・フェミニストの大学教師であるベル・フックスが「自由の実践としての教育」の可能性について論じた一冊。論じた、というと堅苦しい印象を受けるかもしれないけれど、ナラティブな語りゆえにぎやかな大教室で講義を受けているような感覚で読める。
フェミニズムや人権を学んでいくなかで救われたこともあったけど、それまで気にならなかった日常の些細なことが目に付くようになってげんなりすることのほうが多い。学ぶことが生きづらさにつながるのなら何も知らないときのほうがよかったのではないか……なんて思う日もある。
だけどフックスはあくまでそれが当たり前の、そして大切にされるべき痛みなのだと言う。「文化的多様性が学問のすみずみにまでゆきわたるような場所に大学を変えるためには、闘うことや傷つくことをおそれてはならない」──正直私はフックスが言うほど強くはあれないかもしれない。それでも「痛いよね」「痛いね」と言い合える仲間をつくって、なんとか前に進んでいけたら、と思う。パワーー!
信仰/村田沙耶香
村田沙耶香の短編小説とエッセイが一度に読めちゃうお得な単行本!
現実とすこしの違和感から始まって、気づいたら村田沙耶香ワールドにどっぷり浸かってしまう小説たちももちろん面白かったが、一番刺さったのは引用したエッセイだった。
みんなの個性が、多様性が、まもられてほしい。
そう思うとき、私も無意識に都合のいい「違い」だけを思い浮かべているのかもしれない。非現実的で排他的な花畑を思い浮かべながら、”寛大な自分”に酔っているのかも。いやすぎるよ〜〜!
綺麗なことを口で言うのは簡単だけれど、それが誰かを傷つけることもある。言葉を使う機会がおそらく人より少しだけ多い身なのでなおさら、美辞麗句には警戒心をもって接していこうと思った。
「能力」の生きづらさをほぐす/勅使川原真衣
2037年の設定で書かれたこの本では、あの世からやってきた著者(母)が上司からの評価に悩む子どもたちと対話しながら「能力」を巡る生きづらさをときほぐしていく。
社会について考えるとき、私は「『能力』があるのにそれを発揮する機会を阻まれている人たちがいる(から、その不平等を是正しなければ)」みたいな考え方に陥りがちなので、そもそも「能力」って何なの?それって実はかなり不確かなものなんじゃないの?と問い直せたことには大きな意味があったと思う(読書に意味を求めすぎるとつまらないけどね!)。
ガン闘病中の筆者が大人になった子どもたちに向けて語る構成で、もがきながらでも他者とともに生きていくことを諦めないでほしいという母から子への想いが通奏低音として響いているのが素敵。涙腺よわよわなのでこういう“祈り”を浴びるとすぐ泣いてしまうね……。
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六月はやりたいこと、やらなくちゃいけないことのバランスをうまく取ろうとして頑張っていました。(激甘通知表)
いろいろな分野の勉強会に行ったり、新しい出会いを増やしてみたり。Xで欲しいと言い続けていた電動自転車もついに購入して、フットワークが軽くなった。
こういう充実しているときこそたまに立ち止まって静かな時間をとることが大事だと思っているので、時に大袈裟なくらい自分を甘やかしていきたい。なのに電動自転車のおかげで坂道がたのしすぎるせいで、年甲斐も目的もなく走り回る日々だ。
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