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ありとあらゆる物事の上達に通ずるこの世の真理

 最近ジムに通い始めた。トレーニングやランニング自体はもう十年ほど続けているのだけど、基本的にはずっと自宅や外で独自に行ってきた。しかしそれにも限界を感じて久しかった。一定のレベルに長い間留まっている気がし、現状打破したくなったのである。実は以前にも近所のジムに入っていた時期はあったものの、引っ越しのタイミングで退会した後にコロナウィルスが流行し、復帰するタイミングをずっと逃していた。
 当然ながら専用のマシンや設備を使うとトレーニングの効率は格段に上がる。これまでずっと現状維持状態が続いていた体がすぐに悲鳴をあげ、次の日には(というか部位によってはその日のうちに)強烈な筋肉痛が襲う。シャワーを浴びる際に腕が頭まで上がらなくなる。これまで自分が地道にやってきたことがただの時間潰しだったのを思い知り、さっさと課金すれば良かったと反省する。

 筋肉が発達していく過程でギターを始めたばかりの頃を少し思い出した。初心者は特定の曲やテクニックを完全にマスターしようとずっと同じ練習を繰り返すものだが、実はある程度習得できた時点でもう一段階上のステップに移行してしまった方が上達は早くなる。そしてそこを八割方できるようになった頃に前のステップに戻ってみると、いとも簡単にこなせてしまうわけだ。これを体の各部位のトレーニングで少しづつ繰り返していけば、全体的な完成度は効率良く高くなる。さらに別の例えを出すけれど、家具を組み立てる際に各ネジを一度に締め切らずに全体のバランスを取りながら順に締めていくのと同じだ。おそらくこれはありとあらゆる物事の上達に通ずるこの世の真理である。
 「何を目指しているの?」とテンプレ通りの揶揄を安易に使ってしまう人間はこういうことを学べない。おそらく学生時代には数学の因数分解くらいでつまずいて「こんなの社会でなんの役にも立たない」とか言い訳していたのだろう。僕も別にボディビルの大会出場なんかを目指している訳では全然なく、それ自体に意味はない。生きることと同じである。なにもここで実存主義的な論を展開する気も教養もないし、僕だって学生時代には歴史や地理の勉強をほとんど放棄していた。テスト前にただ暗記していただけだった。しかし少なくとも「何かを学ぶ」ということの意味は学んできた。それが理解できるようになったのはずっと後になってからなのだけど。

 ところでジムの入会特典として水素水のサーバーを使っている。味は完全に水と同じで、効能や化学的根拠について調べれば調べるほど意味がよく分からなくなる。


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