粉雪と初恋
ゴォォオォーー。。。
小学六年生のある曇りの日、僕は車の振動で揺れながら、その想いまでもグラグラと揺れていた。
これから動物園に行く、という車の中だった。
家族はみんな、何の動物を先に見ようか、何の動物が好きだ、といった話題で賑わっているなか、僕一人だけ黙って曇った空に想いを馳せていた。
今でも忘れない。グラグラと揺れ、痛いほどに心臓が脈打っているのを感じるあの感覚。
きっと、あれが最初で最後だったのだろう。あの感覚は。
そのときの曇った空は、その当時の僕のモヤモヤを表しているようだった。ただ曇っているだけではなく、雲々の間からは明るい光を纏った真っ赤な夕陽が密かに顔をのぞかせていた。
僕の頭の中で、ずっと「あの子」が放浪している。頭から離れない。何とか気を紛らわせようとしても、痛いほどドキドキと脈打つ心臓がそれを許さなかった。
気づけば、空からハラハラときれいな粉雪が降り注いでいた。
僕は粉雪を見ていた。なんだかいつも以上に神秘的なものに感じられた。
粉雪を見て、「あの子」のことを考えて。
その繰り返し。
そのときの僕はまだ知らなかったが、この時バックミュージックかのように車で流れていた曲こそ「粉雪」だった。
意識は全くしていなかったが、
後日から、いや、なんなら今でも「粉雪」を聞くたびにこのときの感情が、蘇るようだった。
きれいな粉雪と初恋。
一生忘れない。
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