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「公序良俗」の悪意

 

SNSの某プラットフォームでのことだが、ダチの一人の記事が無断で削除されているという。
 規約に反した内容ではもとよりなく、当人かなりのインテリとあって、時にその舌鋒は鋭くもなるが、概ね政治的発言等は控えているし……問題があるとすれば、ちょっと「H」な記事や画像くらいなのだが、それとて「クスッ」と笑える程度の、まあ「お色気」といったもので、見渡せばいっそ露骨な「猥褻」など他にも多く散見される。
 言うまでも無く、「詐欺」や「宗教」とも無縁である。


 規約に照らし合わせてみても首を捻るばかりなのだが、唯一くせ者なのが「公序良俗」の件だろう。
 何を以て「公序良俗」に反するのかは、偏に個人の価値観により様々であり、……だからといって「不快」に感ずる全ての事物を、世界から削除などできる相談ではない。
 例えば、何に「エロ」を感ずるかにしても、巷に溢れる画像等とは別に、二次元の漫画や、時には「ネクロフィリア」「タナトフィリア」「ペドファイル」、様々な「フェティシズム」……数え切れないくらいだ……

 だからと言って、ミロのビーナスにブラジャーを装着したり、女体を連想させるからといって、街路樹の木の股にパンツを穿かせたとすれば……「公序良俗」に準じたことになるのだろうか?

 いや、問題ももっと狡猾らしい。
 かって、あらゆる場面において、「削除」の対象となり得たのは、やはり「政治」絡みらしく、体制を批判したり、暴力革命を鼓舞したり、……そんな類いであったはずだ。

 確かに極端な発言等は、「公序良俗」と言わずとも、なかなか一般には受け入れがたく……本人がいかに力んだところで、あまり賛同も得られず消えていったようである。

 「圧力」なのか「自然淘汰」なのかはここでは措くが、やはり我々が望むのは「平和で安心できる社会」というステレオタイプに落ち着くのだろうが……実はそのカゲに、匿名の秘密警察である「公序良俗」が目を光らせているのだろう。

 そう。一見どこにでもありそうな、「苦情」という手作りのビラをばらまいて……

 個人の「苦情」は時として行政の頭痛の種ともなることを、我々は知っている。
 しかし、策略家がいるとすれば、その「苦情」を逆手にとって活用しようしいう悪知恵も働かせるはずである。

 国論を二分するような「苦情」には手をつけず、いっそ「子供の声がうるさい」的な「苦情」を取り上げることで、陋巷の「秘密警察」の人員を駆り集めるという手法らしい。

 先の友人も、そんな「苦情」の被害者なのだろう。その際、「エロ」も「エッチ」も言い訳に他ならず、かすみ網にも似た「公序良俗」という、あまり人目に付かぬところで行使される、「遠回しの権力」に違いない。

 人事といって放置しておけば、どういうことになるのか?

 「公序良俗」という価値のアメーバーを楯に、「苦情」のかすみ網は、知らぬ間に我々の人生そのものに身動きとれぬ枷をはめることにもなりかねない。

 よもや「note」にかかるゲスの秘密警察が潜んでいるとは信じたくないが、……少なくとも、「美味しいラーメン」の記事が削除の対象になるような事態だけは避けたいものである。

貧乏人です。創作費用に充てたいので……よろしくお願いいたします。