つきのふね
私が敬愛する、森絵都さんが書いた「つきのふね」
この本に出会ったは、この本の主人公・さくらと同じ歳の頃だった。
手に取ったのは我が母校の図書室。
この写真の文庫版ではなく、ハードカバー版のものだった。
主人公・さくらをイメージした少女の光の無い瞳が印象的で、何を思っての表情なのかがとても気になった。
この本を読み終えての感想は
エモーショナルの一言だった。
心が揺さぶられっぱなしだった。
この年代の特有のめぐるましく変わっていく人間関係、日常生活、そして登場人物たちの刹那的な心情が繊細に描かれている。
ラストまでページをめくる手が止まらないほどの疾走感、この年代だからこそ感じることのできる喪失感がこの一冊に凝縮されている。
そしてこの本の最大の特徴と言っても過言では無いのが、ハードカバー・文庫、両方ともカバーデザインが最高に良いことである。
ハードカバー版は前述の通りで、この年代(13~18歳くらい)の悩みや葛藤、喪失感を主人公・さくらを模した少女の光の無い瞳で表現していることが印象深い。
一方、高校生になった私が購入した文庫版のカバーデザインは
ラストのシーンを思わせるような幻想的な風景で、まるで読んでいる自分もその場所にいるかのような錯覚に陥る。
そして、青・緑のように深く、落ち着いた、そしてどこか心がちぎれそうになるくらい寂しい風景を表現している。
まるで、つきのふねが舞い降りてくるのを待っているかのような風景である。
このデザインを手掛けたのは、「高柳雅人さん」という方だそう。
この方の作品を拝見したところ、流れるような、綺麗な色遣いで、見ただけで手に取って読んでみたいと思うものばかりだった
この文庫版の「つきのふね」に出会ったことで、私はどんな人がカバーデザインしたのかまで見るようになった。
確かに、本は中身が重要だけど、表紙は挨拶であると思っている。
表紙だけで、どんな表情の作品なのか、どんな時間を過ごしたい時に読む作品なのか、読んだ時に心臓のどこがぎゅっとなる作品なのかがわかるような気がする。
表紙について熱く語ってしまった。
結論は、表紙・物語・表現。総じて最高で、10代の人、この本の主人公たちの歳を通り越した人でも読んで欲しい一冊であるということ。
10代の人たちには、自分と重ね合わせて読んで欲しいし、20代以降の人でも「ああ、あの頃確かにこう思ってたな、大人に理解してもらえなかったな」というのを実感してもらいたいななんて思う。
今は家にいる時間が長いから、ぜひハードカバー版でも文庫版でも、表紙からも何かを感じて、手に取って読んで欲しいと思う。
ちなみに私はこの本が好きすぎて、読みすぎて、カバーがボロボロになってしまった。
それだけ、響く人には響く。
永遠に私のバイブルである。
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