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真夏日

 これは昼食の片手間に書いているものだから、大変お行儀の悪い文章ということになる。
 最近はあまり外出したくない。外出、といっても涼しい屋内なら話は別である。
 真夏日、炎暑、熱中症。これくらい空が青いと、悩みの多い人の逃げ場はないのかもしれない。
 それでも昨日は丸一日雨降りで、私は大変移動に困ってしまった。水曜日、週の半ば。妻がいるときでなければバイクしか移動手段のない私は、一軒仕事へ赴くごとに合羽を拭き、次の場所までに濡れ、また拭いての繰り返しである。仕舞いには湿気で内側までびしゃんこになった。
 雨にはなるべく私の都合の良いときにだけ降ってきてもらいたい。
 先日、妻が大腸の内視鏡検査を受けた。二週間ほど前から血便が出て、それも確実に痔ではないと分かっているから、私も哀願して近所の女医先生に掛かってもらった。
 このところ妻を取り巻く環境は、彼女にとって非常なストレスだったろう。極めて人嫌いだから、若いバイトや年長のパートをまとめていくことに神経をすり減らしたはずだ。友人とさえ請われても会いたがらない。残業も多い。夜中に愚痴の電話も入る。
 転職してまだ半年だが、大学生あたりの若いバイトにはお姉さんのように慕われ、親ほどの年長者には担ぎやすい御輿の成長を期待されている。妻には分かっている。妻は私よりずっと頭が良いし、まして忍耐力など……。
 結局、妻の大腸にはポリープひとつ棲み付いていた。それが傷ついて出血していたのだろうということだった。おそらく悪さをするような奴ではない、と先生は言った。けれど万が一のこともあるから、ポリープには申し訳ないが切除していただいた。検査に出されるらしい。
 検査結果は来週に分かる。
 しかしポリープ一つ取ってみても妻の体調不良は変わらない。不調の原因は他にあるのだろうから、結果を待ち望んだところで虚しいだけだ。ストレスか他の臓器か。私が「切り取ったポリープ欲しいよ」と言ったら、「ただの肉片だから気持ち悪いよ」と妻は首を横に振った。愛しい人のものはなんでも欲しく、なっても許せ。
 最近は芥川賞の発表があった。
 私は意気揚々と電子書籍を注文したが、残高が足りず駄目だった。こういうとき人生が少し好きになる。


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