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春とその日の色


荒廃に死んだこどもに誘われ春の目覚めに雨は降る降る

きっとそれなりの名を持った命だったのだろう

あわよくば触れてみたいとさえ痛んだこの胸は

あの小さなからだをついに抱きしめられなかった

わたしが若葉の原に踏み入って歓びと希望にある中でさえ

清新な魂まではこちらへ宿らなかった

未熟な戸が開き、去らねばならぬこの身の上は

極めて輪の大きな観覧車に詰められた

遠ざかるまで雪だと思っていた

雪だと思っていた

輪転の果てあの日の記憶はトレイに乗せて

微笑、ようやく聴こえかけた声も灰色に固まったままに

過ぎ去りし色に名を置く御心よ声の代わりに雨に伝えて

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