2023年角川俳句賞応募作
「仏忌」
眩暈に失明踊り場の銃で己を撃つ
春望の四方の椅子ひたすら磨く
海苔ひたすら食ふや蛍光灯が唸り
木香に眼のかぶれて通夜を白鳥引く
みな売り切れ仏忌の自動販売機
東京のテトラポッドに経沁むや
恋人と囁き三つ大椿
珈琲を乾してダーツや蘖ゆる
灰皿の拭かれて臭ふ涅槃西風
麗らかや明王の火に佳き木目
釣り針を引つこ抜く夜の山葵かな
灌仏会訊杖は血を覚えざる
蝌蚪や虫歯をいぢくる舌の酒臭き
雲龍のうらを打つ雨瓜の花
宍人の硬き掌ねぶる涼夜かな
タカラダニ地下の泉を恋うてをり
髪