「石くれ」
「石くれ」
さかしまに蜥蜴をつまむ指先は未生の炎宿してゐたり
がらがらに乾くギターの弦があり寒さうな蜘蛛音なく跳ぬる
絵の中に髭を捻れる白人の佇んでをり電球を買ふ
旧校舎ありし辺りに鉄棒は処刑用器具めきて煌めく
疲れ果ててくたばつてゐる鳥たちを電柱に入れ踊らしむかな
鋏てふ語に切れさうな汝が胃に溶け崩るるか三日月の銀
許されてゐよ我は許されてゐよと祈る氷の像解けはじめ
ぬばたまの樹々のあひだの夜といふ楽園ありき神より逃れて
心臓を蹴飛ばすときの閃光を知つてゐるのか薔薇の蕾は
ばらばらになつた三叉の夢路地を垂れさせてゐるパーカーの紐
心臓の中の汀に白鳥の羽うつさうと流れ着く朝
兄妹の心中を崇め奉る村の蟷螂石くれを喰む
※「立命短歌 第8号」より転載
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