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バイト先にいる、器用なあの子から感じた影の部分

はじめに

 私は現在、カフェで朝方にアルバイトをしている大学生。このアルバイトをしていて、今まで経験したアルバイトでは比べ物にならないくらい私の胸を刺す言葉達に出会っている。これを手放して、忘れてしまうのはとてももったいないと思ったので、ここに書いて忘れないようにしたいと思う。

目次
1.器用なあの子
2.あの子への印象が変わった瞬間
3.あの子のお洒落は、誰のためのお洒落なんだろう
4.何を身に付けるかは自分で決めたことだったとしても
5.あの子は、何に満たされていないのか


1.器用なあの子

 私は大学生になってずいぶん経ってからカフェのアルバイトを始めたので、出会う人たちは大体自分より年下が多い。このバイト先の10代や二十歳なりたての子ってどことなく何か雰囲気が違っていて、人を信じる力や人に何かを話そうと自分から信頼しようとしてくれる力が大きい人が多い。
 今回話題になる「あの子」は、不必要なことはあまり話さないけれど、求められたら話します。というようなスタンスを貫いている子だった。その場その場を障害なく乗り切る術を身に付けているようにも見えた。私はバイトに慣れるまでかなり時間がかかって、ミスも多かったし怒られることも多かった。『ええ?年上なのにこんなダメなところを年下に見せてしまうとは…』と落ち込む時もあった。そんな時も、彼女は切り替えが早くサラッとしていた
 特に私が彼女に対してすごいと思っているのは、朝早い出勤なのにお洒落やお化粧が完璧なのだ。清潔感があって丁寧な印象を受けたし、ドタバタな準備をしている自分とは違う世界にいるなあと本気で思っていた。


2.あの子への印象が変わった瞬間

 その日のバイト中は閑散としていたので、会話をする余裕があった。そこで私は彼女がお洒落で丁寧な印象を受けていたことから、どんな服を普段見ているのか、ネットショッピング派か実際に見て買う派なのか等、洋服について色々聞いてみたいことがあった。

私:「ねえ、ずっと思っていたんだけど、着ている洋服(私服)すごくかわいいよね。服好きなの?」
あの子:「えぇ?!(驚いて困った顔)………(少し考え込んでから)、うん、好きかも。たぶん、好きだと思う。」
私:「えっ、好きじゃないの?(聞いちゃいけないこと聞いたかな)」
あの子:「いや、うーん、周りにいる子、かわいい子しかいないから…

いや、えええええ。この子が謙遜してしまうようなかわいい子たちしかいない環境ってどんな環境なの…。

「…そうなんだね。」

とだけ言うのがその場では精一杯だった。
もっと何か言えたんだろうけど、このままこの話をしていたら、彼女の闇の部分に触れてしまいそうな気がした。



3.あの子のお洒落は、誰のためのお洒落なんだろう

 私は、この会話の後、彼女がどんな気持ちで身にまとう物を選んでいるのか気になってしまった。
本来、服が好きなら、「服が好きなの?」という質問に対してすぐにyesと言うはずだと思った。それに私は、彼女がお気に入りの服屋や系統について話を広げてくれることを期待していた。(マニア!ってほど好きだったら、あまり教えたがらない人もいるかもしれないけど…)
でも、それが顔が曇らせるものだから、『ええっ、この質問しちゃダメだったかな』とびっくりしてしまったのだ。

 朝、6時にはバイト先にいなければいけないから、必然的に家を出る時間はそれより前でないといけない。それにお洒落をするとなると準備に時間がかかるだろう。
そういう限られた時間の中なはずなのに、私が出会う彼女はいつも小綺麗で、キラキラしていた。会うたびに今日もとってもかわいいなと思っていた。
身に付けている服やアクセサリーも彼女につけてもらって喜んでいるような気がした。

 でも、あの一瞬の会話だけだったのに、今日選んだ服は誰のために選んだのかな。学校、楽しめてるのかな。と気にかかるようになってしまったのだ。なぜなら、彼女の回答から、あの子がお洒落をする理由は彼女自身の気分を上げるためではないということを感じ取っていたからだ。全然そんなことはなく、本人もお洒落を楽しんでいるのなら万々歳だと思うけど、そのようには見えなかったので、今の私はそう解釈している。

 誰かに「今日の服素敵だね」とか「そのアクセサリーかわいいね」とか言われると嬉しい人は多いだろう。身に付けているものを褒められるということは自分のセンスを褒められている気持ちになるからだと私は思う。
 だから、「それいいね」というようなほめ言葉は、物に対してだけではなくて自分に対しての評価としても受け取る人は多いと思うし、私も言われたらニヤニヤしちゃうと思う。


4.何を身に付けるかは自分で決めたことだったとしても

 彼女とこの会話をしてから、私は自分が見えている世界がいかにフィルターがかかっているかを改めて思い知った。あの子はもしかしたらとてもとても頑張っていて、限界ギリギリのところにいるのかもしれない。そして、身に付けているものについても、あまり考え無しに発言しない方がよいのかもしれないと考えるようになった。
 あの日から、彼女への印象は、お洒落で丁寧から、よく周りを見ることができる人に変わった。周りを見ることができるから、それに合わせて自分の身に付けるものも注意深くなれるし、慎重に、一生懸命考えて選ぶことができるんだと思う。これは、簡単にできることではない。そんな彼女を、私は尊敬する。これを努力と言わないで、何というんだろう。


5.あの子は、何に満たされていないのか

 あの曇った顔が忘れられない。あの顔は、「私なんて、そんなお洒落じゃないのに」って顔だった。私はそう感じた。その歪みが私にとって強烈だった。きっと私があの一瞬をテーマに、2000文字も超える文章を書くことができたなんて、彼女は絶対知らない。笑
 それと同時に、何かに満たされていない表情、思い悩む、何かを考え込む表情は私にとって魅力を感じるもののひとつなのだと知った。その瞬間は、その人の価値観や人との関わり方の根本になっている考え方を捉えるのに役に立つからだ。



 あの子が何に満たされていないのか、なんとなくわかる。でも、それをここで言葉にするのはもしかしたら誰かへの攻撃になってしまう可能性もあるし、違うと考えるから、言葉にして書くのはここまでにしたい。
 読んでくれて、ありがとう。


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