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圧巻「白痴」

ドストエフスキニーに圧巻!

 とても悲しいお話です。公爵は本当に白痴であったのしょうか?

 おりしも19世紀、科学の進歩・社会の変容・宗教のあり方は、…。いずれも大きな曲がり角であったことは、言うまでもない。しかし、急変するそれら諸要素を、じっくりと人間の生活に溶かし込めたのでしょうか?あるいは、熟成させるべく器を、こしらえられることが出来たのしょうか?
 著者は当時を時代背景とし、未来の人類を憂い、この著作を書き上げたと思う。在りし日の公爵は、天から舞い降りたキリストと思えてならない。
 確立した正義を信じ、行動を実践する。この様は現実社会においては、些か滑稽に他ならない。喜劇であるが、行動様式はまさにドン・キホーテさながらである。
 悲劇にの中の公爵、喜劇の中のドン・キホーテ、いずれも、世知に長けた者が忘れがちな、人類の思想的豊かさ欠如に、警鐘を鳴らしていると感じる。そこに、時を越えた素晴らしさの裏打ちがあるのでしょう。
この長い小説の大方は、ナスターシャ=フィルボビナの亡骸の前にした朋友ロゴージンと公爵の末期の一幕のために書かれたのであろう。とても悲しい作品を描きつつ、人間に美しさを描くことに挑戦したドストエフスキニーに圧巻です。私は、公爵を「白痴」と思えませんでした。(Amazon書評へ加筆)

かわせみ💎

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