Potato and Dr Pepper: Moses Lake Flight Test Center
和訳版を読みたいとのお声がけを聞いたので、トライしてみました。
航空機開発の舞台の裏にあった青春物語を読んでみてください。
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「ヒロ、こっちに来いよ。日本の航空関連の求人を見つけたんだ。ワシントン州モーゼスレ イクに飛行試験テストセンターを設立する予定とある。なー、一緒に申し込もうぜ。」 「ロバート、マジでいっての?僕たちは航空機に関する知識もないし、学位も持ってないぞ。 本気で受け入れられると思うのか?」ヒロが言った。 「それがこの求人の募集要項を見ると、採用条件はネイティブレベルの英語と日本語のみ で、大学の学士号があれば専攻内容は不問と書いてある。候補者の資質にあわせて職務を用 意するともある。要は、現地でのアメリカ人採用は、企業側にとっては、日本人などにビザ 発給や、スポンサーなる必要がないから望ましいのだろうな。だから、僕たちは採用される 可能性高いぞ。なんたって二か国語を操れるからな。」ロバートが言った。 ヒロは、そんなものかと「わかった。ダメ元で書いてみるか」と言った。 数週間後、ロバートが言うように、面接もすることなく二人とも簡単に採用通知を受け取っ た。 「いやっほー、ヒロ、なんて美しい青空だろう!素晴らしい!なっ、言っただろ。今までな んとなく子供の頃から純粋なアメリカ人でないことに悩んできたが、これが俺たちのアドバ ンテージだったんだ。やっと運気が回り始めたぞ。僕たちはこの陰鬱な町、ロックフォード から出られるんだ。 有名な会社でいい仕事を得るのは、僕たちのような日系アメリカ人にとっては難しいことだ と諦めていただろ?」ロバートは興奮して尋ねた。 「ああ。ただ、俺は大企業や大都市で働くのに興味はないんだ。」ヒロがため息をついた。 「なー、そんなにネガティブなんだよ。いつも。この車、君の父親から無期限で借りられた んだろ?これが僕たちの初めての旅になる。それに恐らくヒロが望むようにモーゼスレイ クという町は都会じゃないから騒がしい街じゃない。気が変わって、大都市が恋しくなった ら、シアトルに行けばいい。そこからたった 3 時間らしいぞ。」 ロバートは続けた。 「ところで、この車は君の父親が盗んだ車だよな。」 「あっ?」ヒロは睨みをきかせながら言った。 「パパがこのカローラを僕に貸してくれたのは、彼の顧客が約 2 年間取りに来ないからな んだ。その顧客は自分の国に戻らなければならないとも言っていたらしい。だから返す必要 ないんだよ。実際はパパのものだよ。」ヒロはロバートに向かって叫んだ。 「そうか。でも実はこの車を持ち込んだ奴が盗んだじゃない?」ロバートはしつこく、怪し んで尋ねた。 「違うって!車は事故車、パパが必死に修理してくれたんだ。でも顧客は取りに来なかった し、ましてや前金も含めて支払いも一切受けてない。だから、俺たちが使ったって、誰も文 句言わないだろ。修理しなければ廃棄同然の車だったんだよ。」 ヒロは声を強めた。 「ああ、そうか。ごめん、冗談だよ、ヒロ。わかってるよ、君のお父さんはこのアメリカ馴 染むために相当努力してきたんだ。君のお父さんが毎晩遅くまでガレージショップで働い ているのを見てたよ。僕らが幼稚園で知り合ってから、いつも親切で、気にかけてくれた。 悪いことをする人じゃないことはわかっているよ。 一方、僕のオヤジはイタリア系で、君のお父さんのように自分のレストランでさえ一生懸命 働いたことはない。」ロバートは溜息ながらに言った。 「とにかく、ちょっとそこらで休憩して少し仮眠しよう。まだ 1,700 マイルほどあるから ね。」ロバートは話題を変えた。 「レッドロビンどう?」ヒロが尋ねた。 「シェイクシャックならいいんだけどな。ただシカゴなどの都市部にしかないからな、この I-90 沿いのこんな田舎にはないかもしれない。」ロバートが返した。 「なんでそんな健康意識が高いの?都会も嫌いなくせに。自然食品を謳ってるけど、あんな もの高いだけで、ハンバーガーはバーガーだろ。リサはだって、僕と同じように何でも食べ られる子が好きって言ってたよ。」ヒロが不満を言った。 「君は何も知らないのさ。イメージはすべてに関して最重要項目なんだよ。見た目だよ。お れたちはアメリカ人なのに顔が違うしな。」ロバートがぶつぶついった。 「またか、ところで、リサはぼくたちロックフォードを去ることに同意したと思う?」ヒロ が尋ねた。 「たぶん、出発する何日前に電話したら、彼女は NGO の下でバングラデシュに移ることを 検討しているからとか言ってた。同じアメリカとも言っていた。本当のところは、行かない でとか。いっしょに行きたいという言葉を聞きたかったんだけどな。」ロバートは、後半は 聞こえないぐらい小さな声で言った。 「ところで、モーゼスレイクにはジムがあると思うかい?ウェブで町をチェックした限りで は、ウォルマートしかないみたいだ。時間をどうやって潰すつもり?」話を逸らすようにロ バートは尋ねた。 「PS4 を持ってきたよ。」ヒロはすぐに答えた。 「あらら…つまんねーな。仕事以外はまた部屋に引きこもるつもりか?アメリカのゲームは 日本のとは違ってつまんなくないか。ストーリーもキャラクターも。なんというか、似てい るだけど、コーラとドクターペッパーの違いみたいになんか違う。どちらも美味しいけれど、 ドクターペッパーが一番だよ。」ロバートは言った。 「意味がわからないが、なんとなくはわかる。じゃあ、僕は日本版の完全移植のカプコンの ストリートファイターだけをやる。」 ロバートは眉をひそめた。 バーガーを食べた後、ポテトとドクターペッパーを社内に持ち込んで、運転を再開した。 「運転を交代しよう、まだ 30 時間も運転しなければならない。途中どっか行きたいところ、 みたいところある?」 「特にない」ヒロは冷めた口調で言った。 「オタクめ。これが私たちの初めての“アベンドゥーラ”だよ!」ロバートはイタリア語叫ん だ。 「人生を楽しもうという気はないの?とにかく、私はサウスダコタのマウントラッシュモ アとイエローストーンには必ず立ち寄るつもりだから。」ロバートは勝手に決めたようだ。 「ラジオでもかけるか。」とロバートが尋ねた。曲が流れた。 「ルイス・フォンシの“デスパシート”だ。素敵だね。これが私の大好きな曲。メキシコの女 の子と愛を育みたいな。“Des-pa-cito Quiero respirar tu cuello despacito”」とロバートが歌 う。 「スペイン語も勉強したんだっけ?」とヒロが尋ねた。 「そう、国際関係専攻だからな。英語、イタリア語、日本語は親のおかげで話せる。それに 少しメキシコ語もね。しゃべれたってなんの意味もないけど。」ロバートは言った。 「いいな、ぼくは英語と日本語だけ。でもこの前ロバートが、僕たちの武器になるんだって いったんだぜ。」とヒロがつぶやいた。 なにかの運命的なつながりを少し感じたが、本当につながっているのだろうか。 この I-90 はどこまでつながっているが、空はもっとどこまで続いているのだろうか。
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