渚にて(ショートストーリー)
ただ歩くだけで良いからと君は言った。
「最後のお願い、一緒に渚まで歩いて欲しい。話しかけてくれなくても良いの」
私は小さく頷き、彼女の歩調に合わせてゆっくりと歩く。
私たちは終わったのだ。終わりがあるということは始りがあったはずなのだ。それはいつだったのだろう。どこで出会ったのだろう。
彼女の長い髪、その後ろ姿に見覚えがあるような気もした。
そうだ、この私はいったい誰なんだ。名前は?彼女の名前もわからない。自分の名前さえも。
だが、私は彼女を知っていたはずだ。愛していた記