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小説、エッセイ、俳句etc
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記事一覧

ひとりぼっち 青ブラ文学部

キツネの花嫁さんは泣いていた。お婿さんになるはずのキツネは目の前で銃で撃たれた。お婿さんは大きく宙返りをするとそのまま倒れ、もう二度と起き上がらない。 キツネの花嫁さんは、駆け寄ることもできずに、ただ息を殺し隠れることしかできなかったのだ。 キツネのお婿さんは、猟師の肩に担がれ山から姿が消えてしまった。 これがお婿さんを見た最後。 キツネの花嫁さんは、一生懸命作ったお花のベールをそっと外したのだった。 それからキツネの花嫁…いや、キツネさんは泣いて暮らしました。 何日も何日

謎解きの紙 秋ピリカグランプリ

ボクは魔法使いのじいじと魔女のばあばと住んでいる。ボクは魔法使いでも魔女でもない。両親はどうなのか。 ボクの両親は長い事外国に行ったまま。時々動画やメールが届く。誕生日にはプレゼントも届くけれど、会った記憶は無い。本当に両親は存在するのか疑問に思い始めている。 じいじの部屋には隠し部屋があって、たくさんの魔法に関する本が並んでいる。どの本にも見たことのない文字だけが並んでいる。 ボクは11歳だけど学校には通ってはいない。勉強は隠し部屋でじいじが教えてくれる。昔は学校の先

白いワンピの女の子 青ブラ文学部

もう白いワンピの女の子の話なんて止めてちょうだい。 私は見たくもないし聞きたくもないんだから。 いつも私を怖がらせて楽しんでいるなんて悪趣味! ホント最低! え? 昨夜も見たの? 至近距離で? 顔もはっきり見えたの? 美人だったって? フ~ン……。 彼、見る目あるのね。 結構いいヤツ? だけどさあ… 私ってわからなかったのかしら。 と言うより…… 私彼に会ったかしら。 了 170文字 山根あきらさん いつもありがとうございます。 今回も参加させて頂きます。どうぞよろし

雨の七夕 青ブラ文学部

乙姫が特別な携帯電話で呼び出したのは織姫。 「ねえ、織ちゃん。もう7月になったわね。今年も七夕パーティーのご招待ありがとう」 「乙ちゃんも出席してくれるわよね」 「もちろんよ、何か素敵なプレゼントをって思っているのだけど欲しいものある?」 「そうね、乙ちゃんのプレゼントなら何でも嬉しいけれど……」 「織ちゃん、はっきり言いなさいよ、遠慮なんてしないでね」 「実はね、乙ちゃん。私ボーイフレンドが欲しいの。一年に一度会えるかどうかって彼氏、寂しすぎるわ」 「そうよね。私の彼氏

スキャンダルへの第一歩 青ブラ文学部

あのね、健太君て酷いのよ。 私と結婚するって言ったから、私ね、パパとママに話したんだ。なのに、健太君、真理ちゃんと結婚することにしたって。私、パパとママに言わなきや良かった。なんだか恥ずかしい。 これって失恋って言うんだって。マナちゃんが昨日教えてくれたの。 幼稚園に行くの嫌になったって言ったら、マナちゃんが 「陽ちゃん、良いこと教えてあげよっか」って言ったの。 「あのね、内緒なんだけど。絶対、誰にも言わないでよ」ってね。 「あのね、真理ちゃんには好きな人がいるのよ」

帰りたい場所 青ブラ文学部

とても静かな昼下がり とても静かな雨が降る 私に遠慮するかのように 雨の日は眠りたい 雨が降り続く間だけ あなたが夢に現れそうで 雨男のあなただもの 雨に託した私の言葉 読み取ってくれたかしら 私に告げたい言葉は無いの? 知りたい気持ちは空回り あなたが帰りたい場所はね 私の部屋ではなかったの ずっと前から知っていた 知っているのは悲しいことよ 私の帰りたい場所はね あの小さなウィンドウのあるお店 あなたと白いドレスに見入ったわ そうよ あの場所なのよ 詮ないことだ

#君に届かない 青ブラ文学部

空を見上げる。 まるで皮肉のように赤い星が一番最初に目に留まる。 君が出て行くと言った時、私の目の届くところに居るなら良いと確かに私は言った。そして、君はそうしたのだ。 君の住む星は目視で確認できることもある。けれど、それは何の意味も持たない。 私が君に会うためには、かなりの距離と出費を覚悟しなければならない。 そんなに私から逃げたかったのか。 そこまで君を追い詰めていたとはね。笑うよ。いや、分かっていたさ。 認めたくなかっただけだ。君を離したく無かった。だが、する事なす

鬼化粧 色のある風景

最近の流行にはついていけない。 若者たちの化粧が根本的に変わってしまった。 分かりやすく言うと、若者たちのほとんどの顔が鬼に変わってしまったのだ。 顔の色が、赤、黄、青、緑、白、黒etc.。 まるで12色クレヨンの見本だよ。 最近では様々な年代で、若者文化を追従する者たちが現れ始めた。 SNSは鬼たちで溢れかえっている。なんという世の中だ! うちの孫たちも赤鬼、青鬼。紫鬼になってしまった。 そして、この私にも鬼化粧を施すように勧めてくる。 「ね、おばあちゃんはピンクの鬼

小さなオルゴール 青ブラ文学部

おばあさんが小さなオルゴールを開けたのは久しぶりでした。 オルゴールは鳴りません。もうずっと前からです。 修理に出すのは嫌でした。 このオルゴールを作ってくれたのは、亡くなったおじいさんでしたから。 修理に出すと、おじいさんのオルゴールではなくなってしまう気がするのです。 オルゴールは宝石箱でもありました。 確かにおばあさんの宝物が入れてありました。それは宝石なんかではありません。 おじいさんとおばあさんの結婚式の時の写真。少しセピア色に変色していましたが、二人の愛と、二

お遊びしてみました

三羽 烏さんにお薦め頂いたので早速やってみました。 名前を入力するだけでAI君が、あなたの想像画を描いてくれますよ。 どちらも美形ですよね。 美人に描いてもらうと、とても嬉しい。女ですもの😄  AI 君、ありがとう。 三羽 烏さん、楽しませていただきました。 ありがとうございま~す🎵 #お遊び企画 #AI画像生成 #三羽烏さん

祈りの雨 青ブラ文学部

雨が降ると悲しい。 子供の頃、そう思っていた。空が泣いていると思っていたのだと思う。 だけど今は、雨の日は落ち着く。雨音を聞きながら眠るのが何より落ち着く。雨音は眠りの精だ。 いつの頃からか、雨音に紛れて祈りの声が聞こえてくることがある。 「雨よ、雨よ、叶えておくれ。雨よ雨よ、お願いだから」 いつも同じ声。 怖くは無かったが、気になる。気になるというより……。 どこかで確かに聞いたことのある声。 誰だったろうか。 いや、本当は誰の声か分かっている。認めたくないだけだ。 あ

セピア色の桜 青ブラ文学部

セピア色の桜を見たことがあるかと問われれば、Yesです。 ただし、それは写真の桜。 1950年代。 私がまだ幼い頃、父の職場の仲間の間で写真を撮る事が流行った事があり、こぞってカメラを購入したとか。 カメラといっても、現在の一眼レフでは無い。二眼レフだ。ミノルタ製だったと思う。私が二十歳ごろまでは確かに家にあったはず。 私は長子だったので、妹達より多くの写真を撮ってもらった。 父の会社の施設の隅に暗室があり、現像も焼き増しも父達が自分でやっていたそうだ。 色付けも自分た

廃屋の門 青ブラ文学部 (762文字)  

小高い丘に立派な門構えの屋敷があるが、そこはすでに廃屋と化していた。 時折、夜に明かりが漏れることがあると言う者もあるが定かではない。昼間であっても夜であってもその家に出入りする人を誰も目撃した者はいないはずなのだから。 昔からこの地に住んでいる年配者も、この屋敷は昔から廃屋だったと言うばかり。役所に聞いても要領を得ない。 子供たちはお化け屋敷だと怖がっているが、門の中の庭は手入れが行き届いているようにも見える。庭師が見かねて手入れしているのだろうか。 それにしてもなぜこ

私のイチオシ(手前味噌ですが)

三羽 烏さんの「イチオシください」に参加させて頂きます。 2022年の作品ですが、私的には気に入っているものの一つです。 410文字のSSです。 三羽 烏さん、よろしくお願いいたします。 #itioshi