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読書日記231 『真壁家の相続』

朱野帰子あきのかえるこさんの作品。なんせ登場人物が多い。主人公である大学生の真壁りんから始まって、祖父と、母親、父親、叔母が2人の叔父が1人、それに旦那様や奥さん同棲相手、娘などがそれぞれにいて、それに得体のしれない植田という男性……

話の始まりは、りんの祖父である麟太郎が亡くなったところからで、父親の渓二郎はりんが高校生のころに失踪して5年間になり、現在りんは大学の法学部に通っている。

祖父の麟太郎は街の米屋(穀物店)を経営して土地とわずかな預貯金をもっていた。それからこの「真壁家」の泥沼の遺産相続がはじまっていく。

りんの母親の容子は失踪した渓二郎の代わりに、パートでフルタイムに働き、一人暮らしの義父の麟太郎の介護を懸命にしていたが、実の子供でないために相続の権利がない。それを理不尽に思う謎の人物の植田。

「相続の権利というのは失踪ではなくならない」
父親である渓二郎の居場所を知る植田と複雑な気持ちで父親に会いに行くりん。母親は祖父の介護をこなして最後まで面倒をみていたのだが相続がないことを理不尽に思う植田が何とか容子に相続をさせたいと代襲相続をりんにさせようと目論んでいた。


スペシャルドラマとして映像化されてみたら面白いだろうという作品。

遺産相続などを今風の話題も取り入れているし、作者自体がとても構成のうまい作者なのでしっかりと読める作品になっている。最初は長編用にプロットが考えられたんだろうなと想像がつくし章のタイトルは登場人物の名前が書かれている。

経済雑誌とか、法律雑誌とかに掲載されそうな内容で、章を読んでいくと面白く読める。(そういう関係に掲載されていたのかな?)時期も2000年ぐらいの設定でほのぼのしている感じもよい。

この本のちょっと前になるけど有川浩さんの「フリーター家を買う」という本がドラマ化されて有名になったけど、最初の掲載は日経ネットのWeb掲載だったみたいだし、掲載されるまえに単行本化された作品なのかもしれない。

色々なディテールが張り巡らされている。登場人物を減らしてもっと深く話を掘り下げていたら、すごく面白い作品になっただろうなとちょっと勿体ない感じはする。




朱野帰子さんと言えばnoteによく投稿しているし、つい最近は短編小説の書き方みたいなものを公開している。

付箋を使って登場人物の色分けをして、物語の構成をしていく内容なのだけど、これであの複雑な人物像の多さが理解できる。普通なら短編にこれだけの内容を詰め込むというとちょっと大変な気もするが、最後まで読んでいくと(三部作になってます)プロットというか創作活動の種明かしみたいで目から鱗の部分がすごく多い。小説を書く人なら必見な内容になっている。

勉強家なのか「文章の書き方」てきな内容のnoteも多々あるし、noteのハウツーがしっかりとできていて投稿されるたびに読みやすくなっている。こういうのって他の作家にはない芸当というか、庶民的目線でいつも世界を見ているんだろうなとすごく理解できる。

すごいのは書いてから何か月かしてしっかりと読まれているというかいいねが増えている点でフォロパしてファボされているわけでないのがすごいと思う。

SNSあるあるなんだけど読まなくてもファボいいねする)のはよくあっていいね欲しさにフォローを増やしてというのはよくある話なんだけど、それがないのにジワジワといいねが増えている。(自分も読まないものをいいねしないようにしています。エヘッ!)

SNSはそこらへんが曖昧でフォロワーが多いと自然にいいねが多くなるけど、実際に記事を読んで納得してとかが少ない人って書かれてからすぐにいいねの数が異様に多かったりする。(そんなに早く読めないでしょw)

ちゃんと読まれて評価を受けていいねが増えてっていうと、1500文字から2000文字以上になるし、Twitterみたいな大喜利や告知てきな内容ならリアタイというかで読まないとよくわからないから、noteみたいなエッセイやブログ向きSNSでは中々追いつかないしと推測すると朱野帰子さんはすごいなとあらためて思ったりもした。朱野帰子さんのnoteも一読してみてもいいかもです。






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