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知っておきたい医療との関わり方や医療費の事

薬局経営者下楠薗康司×TACOS☆KID
 Special対談1

筑紫野市でセンター薬局を経営する薬剤師・下楠薗康司さんに聞いてみました。

市民が知っておきたい医療との関わり方、知らずに無駄遣いしている医療費≒税金のこと!
 
 
下楠薗:多くの方は、病院や薬局を利用するとき、昔から通っているとか、ご近所であるとか、〇〇さんがよいと言っていたとか、口コミや経験則で利用されているのではないかと思います。こういう症状のときにはこの病院へ行けばいいというように、知識に基づいて病院を受診する習慣が根付いているとは言い難いですよね。
 
TACOS☆KID:たとえば、子どもが目の病気になったとすると、眼科なのか、小児科なのか、どこを受診するの?となりますからね。
 
下楠薗:子どもの病気は基本小児科だと思われていますが、「目の病気の場合は小児科へ行く前に眼科へ行ったほうがいいですよ」と言うと驚く方が結構いらっしゃいます。
「子どもでもいいんですか?」と。
薬局の窓口で相談されたときに必ず言うのは、耳、鼻、目、整形、皮膚科、特定の部位を診療科として掲げて開業している先生のほうが、患者さんの年齢を問わず、その部位や疾患に対しては詳しいということです。
 
TACOS☆KID:私もほとんど病院を受診したことがないので、どの診療科へかかったらよいのかとなると、悩みます。
 
下楠薗:「〇〇内科の先生は自分の思うような治療にならなかった」というような患者さんの声をよく耳にしますが、専門が違えば患者さんの満足度を上げることは難しい。でも、専門分野では、地域で一番のお医者さんである可能性があります。声の大きな方の満足度が低かったときに、その口コミで先生の評価が決まってしまうようなことがあると、その先生のプロフェッショナルが必要な患者さんに届かなくなってしまう。
お医者さんには、それぞれ専門性があるという基本的な知識がないまま、経験則で医療にかかることの弊害です。
病院や薬局を利用する方法を体系的に学ぶ機会がなく、医療に関する知識が本人任せであるため、仕方のない面もありますが、結果「無駄な受診や無駄なお薬が後を絶たない」という状況が生まれています。
 
TACOS☆KID:しかも、その医療費の多くは、みなさんが払っていらっしゃる税金でまかなわれています。
 
下楠薗:1~3割負担で済む国民皆保険制度(※1)は、それ自体はありがたい制度ですが、国民がどういうふうに医療にかかればよいのか、どういうふうに薬局を利用すればよいのか、医療との付き合い方について知識を持っておくことがとても大切です。
今後、団塊世代が後期高齢者になり、団塊Jr世代が中年層になれば、一層の医療費増は避けられません。医療費削減という面からも重要です。
 
TACOS☆KID:行政と薬局が協力して、医療との付き合い方を伝える場をつくりたいですね。市立保育園や幼稚園、小・中学校で講演をしたり、公民館などで高齢者へ向けた講話の場を設けたり。医療との付き合い方に関する教育は、年代を問わず必要だろうと実感します。市民が知識に基づいて医療にかかることができれば、医療費削減もですが、医療機関側の負担軽減にもつながりますね。
 
下楠薗:クリニックと町の基幹病院と大学病院。病院の規模に合わせて、分業が可能になれば、必要な患者さんに必要な医療を届けやすくなります。国の方針はあるのですが、患者さん側の医療行動が知識に裏付けされていないため、救急車がどんどん来るような、町で一番大きな病院を風邪で受診するということが平然と起こってしまう。それは医療機関と患者さん、どちらにとっても不幸ですし、医療費という側面からも不適切です。
 
TACOS☆KIDさん:知識がないまま受診をして、大きな病院の多忙なお医者さんと十分に話す時間もないまま、薬を何種類ももらって帰ってきて、結局飲まないといった無駄も生まれてしまいます。
 
下楠薗:そうなんです。
飲みたくないならば、もらって帰らなければいい。お薬もなぜあんなに何種類も飲まなくてはならないのかという基本的なところを知らないがゆえに損している。お薬に関しては、専門家である薬剤師を上手に使ってほしいですね。「先生とあまり話ができなかったんだけど」というところから、「実は今日出ているお薬で、自分はこんな症状が出るんだけど、どう思う?」と、相談につながることも。薬局は患者さんが家に帰る前に、最後に接する医療機関でもあります。不安を持っている方が不安を持ったまま帰らなくて済む可能性が薬局にはある。
相談相手は、お医者さんだけでなく看護師もいるし、薬局の薬剤師でもいいということももっと広く知っていただきたいですね。
 
TACOS☆KID:広く市民に知ってもらうために、行政の役割は大きい。
 
下楠薗:いまは病院なんか行きたくないという人と病院大好きという人との差が激しいですが、どちらも正しい知識に基づいていないのが問題です。
地域の人に医療のことを広く知ってもらい、正しい知識で病院や医療行為と付き合うことが当たり前になれば、医療費の削減にもつながり、医療行政がスムーズになると確信しています。

(※1)国民皆保険制度とは、全ての人が公的医療保険に加入し、全員が保険料を支払うことでお互いの負担を軽減。持病があって通院回数が多い人でも、入院や手術により医療費が高くなってしまう人でも、定められた負担割合で医療を受けることができる制度の事。


プロフィール

 
下楠薗康司 (39歳) 
製薬会社のMRとして11年勤務し、退職後、2016年より筑紫野市でセンター薬局を経営。
 
 

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医療福祉ライター     
今村 美都

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