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自販機の水を見て脳内が領域展開した話

僕の職場はアーケード内のビルの1階にある。隣は焼肉屋で、毎日終業後はいい匂いを嗅ぎながら家路を急ぐ。

焼肉屋の前には自販機があり、仕事の合間に水やらコーヒーやらを買っている。500ccの水は100円で売っている。110円で売っていたら買わないが、100円はギリギリ許容内なので歯を食いしばりながら購入ボタンを押している。

コーヒーは110円と120円のものが売っている。少し歩いた先のコンビニでは同じ値段で大きい容量のものが買えるが、職場を出てすぐ飲み物が手に入る便利さにかまけてつい自販機で買ってしまう。

ドケチで売っている芸能人がテレビ番組で「自販機で買うのはお金がもったいない」と言っていた。それに奥さんが激しく同意していたときは思わず息を飲んだが、その翌日には何食わぬ顔で自販機の水を飲んでいた。


先日いつものように水を買おうと自販機の前に立ったとき、目を疑った。

100円だった水が120円になっている。110飛び越して120になっている。

なんでお前そんなことなってしもたんや。


ほぼ毎日顔を合わせていた水の変わりようには少なからずショックを受けた。別の中学に進学した友達がちょっと会わない間にめちゃめちゃヤンキーになってたときの気持ちを思い出した。


そういえば、呪術廻戦に出てくる七海建人(ななみん)が主人公の虎杖悠仁にこう言っていた。

「君はいくつか死線を超えてきた。でもそれで大人になったわけじゃない。枕元の抜け毛が増えていたり、お気に入りの惣菜パンがコンビニから姿を消したり。そういう小さな絶望の積み重ねが人を大人にするのです」

漫画「呪術廻戦」より

小さな絶望を乗り越えることで人は大人になっていくのだろう。


そうか。今まさに僕は小さな絶望を積み重ねて大人になっている最中なのだ。変わり果てた姿になってしまった水は僕を大人の階段に導いてくれているのだ。

誰も皆、ある日突然大人になるわけではないんだな。
そんな大切なことを教えてくれた水、ありがとう。

だがもう買わん。












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