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夏至祭、スウェーデンのいつまでもつづく夏の1日

2022年6月24日金曜日、スウェーデンでは夏至祭が行われていた。その日、わたしはスウェーデン第2の都市ヨーテボリに居た。もうこんな機会はないかもしれないからと、この目で夏至祭を見るためにデンマークから長旅を経て辿り着いた。

事前に調べた情報によると、毎年夏至祭の日は決まったように雨が降るとのことだったが、当日は雲ひとつない晴れだった。日光が肌を刺すように強く、とても暑い日になった。

滞在先のアパートからバスに乗って、夏至祭の開かれるお城のある公園を目指す。バスの窓に広がる景色は少し非現実的にも思えた。北欧の夏の空、青々した木々の佇まいは、海外の映画にみるシーンそのもののようだった。

窓の外の景色から目が離せない。うっとりとしていると、湖が見えてきた。青すぎるくらいに青く、吸い込まれそうだった。湖には何人も子供たちが飛び込んでいて、楽しそうに水浴びをしている。夏がこんなに愛おしく思えたのは初めてかもしれない、と思った。

バスを降りて、他の大勢の人々とともに森の中を歩いた。どれだけ日差しが強く、痛いくらいに暑くても、日陰はひんやりとしていて気持ちが良い。熱せられた肌を撫でていく涼しい風を感じた。

しばらく歩くとお城がある公園が見えてきた。もうすでにたくさん人が集まっているようだった。家族で来ている人たちがほとんどのように思った。そして、老若男女問わず、みな花冠を付けていた。思い思いの花が編み込まれた花冠は、どれも個性的で、いくら見ても飽きそうになかった。花冠を付けた人々のあの美しい笑顔は、とても忘れがたい。

しばらくして夏至祭開始の時間になると、メイポールと呼ばれる草花で覆われたポールを立てる。ポールを立てたら、みんなでダンスを始める。カエルダンスと呼ばれるものがポピュラーで、子どもも含めたくさんの人が踊りに参加していた。

全員参加の踊りのあとは、伝統衣装を着た人々のパフォーマンス。これこそ非現実世界では、と疑うくらいに美しかった。

肌に差す日差しの暑さを忘れるくらい、夢中で踊りに見入った。気がついた時には肌が赤く日焼けをしていたけれど、それも、ここにいたんだという証明のようで嬉しかった。

夏至祭はまるで永遠のように続いた。ただみんなで集まって踊って、休憩して、また踊って。さすがに体力の限界がきたわたしは、終了時刻より早く帰ったけれど、まだまだ北欧の祭りの昼は長く続いていった。

1年で1番太陽が高く昇り、1番昼が長い日。長かった冬が終わり、みんなが大好きな夏を迎えるという、多幸感に溢れたお祭りだった。

日本の夏は、じめっとしていて、外に出ていられないほど暑く、汗は滝のように流れて、食欲さえも無くなったりと、なんとか生きるだけでも必死になるような季節だけれど、北欧の夏は、夏の良いところだけをぎゅっと集めたような季節だと思う。日差しは強くても、日陰はひんやりと冷たい。湿度は低くカラッとしているし、夜はいつまでもやって来ない。まるで、夜ふかしを肯定されているかのような、遅くまで楽しんじゃおうよ!と言われているような陽気ささえある。幻のような、わたしの北欧での夏が始まった。


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