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光と影の調和、人生のリテイク。


唐突に岡山に行きたい思いが芽生えたはいいものの、岡山についてはてんで予備知識がなかった。あるとすれば、倉敷と桃太郎の吉備団子くらいだっただろうか。

新幹線は「のぞみ」で行くという手もあったが、新幹線車内で観光情報を得る時間を作るため、そして交通費を浮かすために、「こだま」の指定席を購入した。新大阪から岡山まで、1時間と少し。dマガジンに登録されている「るるぶ」を見ながら、気になることを見つけてはGoogleMapに印をつける作業をしていた。ふと車窓に広がる車窓からの景気に目をやると、日々目にすることはない田園と青の河川、その先には山々があり、旅の始まりを実感する。


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岡山に到着したのは12時すぎ。少し歩けば岡山城や岡山後楽園といった観光地があることは事前に調べていたものの、私の足は迷うことなく、倉敷へと向かっていた。山陽本線は都会の電車よりも大きな音を立てながら、乗客ひとりひとりを、それぞれが目的地とする場所へ運んでいく。

岡山から倉敷までは20分弱。今日の目的地に到着したのは13時前ごろだっただろうか。駅前は想像していたよりも観光客を中心に賑わいを見せており、美観地区をはじめとするこの地の引力を実感する。チェックインの15時までにはまだ少し時間がある。先に荷物を預けた私は、朝食はおろか昼食も撮っていなかったことに、この時点で気づいた。

倉敷駅と美観地区の間には商店街があり、そこで昼ご飯をいただくこととした。調べてみると、行列必須の洋食屋や昔ながらの喫茶店など、店は比較的多く見つかった。一旦は洋食屋に行ってみることにして、GoogleMapをチラチラ見ながら、到着した店前の行列を前にして、私は一瞬にして踵を返した。さすがに昼飯1つで1時間半以上を費やすわけはいかない。あくまで今日のメインは美観地区なのだ。はて、どうしたものかと考えていたその時、駅前にあった大きな看板を目にしたことを思い出した。そのデジタルサイネージはうどんの宣伝広告をしていた。どうやらここ倉敷にぶっかけうどん発祥の店があるらしい。うどんであれば回転率もよく、そこまで時間を要しないだろうと思い、私はそのぶっかけ発祥の店で、もちろんぶっかけうどんを注文した。

倉敷のうどんにはわさびと一緒に食べることが風習らしいのだが、これがうまかった。普段そばと一緒に食すわさびだが、コシのあるうどんにもよく合う。自宅でうどんを食す時もやってみようと思った。


お昼ごはんを食べてもなお、チェックインの時間にはならない。待ちきれなかった私は、荷物だけをホテルに預けて倉敷へと歩き出した。

駅からは徒歩10分と少しと言ったところだろうか。向かって左手に急に現われる情緒溢れる街並み。

倉敷美観地区のメインストリートはL文型の水路があり、その水路に沿って多様な店が並ぶ。

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装着していたレンズはオートフォーカスのため、自然と風景ばかりを撮影していた。

奥に進んでいくと阿智神社と倉敷アイビースクエアがある。

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アイビースクエアに向かう途中で見つけた光と影。魅了されるのは光でも影でもなく、両方であって、その調和にあった。影の写る面と、影を生み出す物体の距離が遠くなるほどに、影はその輪郭をぼやかし、光と混じり合うかのような柔らかな表情を生み出す。

写真を撮る者たちは皆、光と影に心と体を揺さぶられながら、その一瞬を捕まえようと、もがいている。そしておそらく、その光と影を超越する写真家はこれまでもこれからも、存在しないと思っている。


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聞けばアイビースクエアは基を正すと、倉敷紡績(クラボウ)の工場であったらしい。煉瓦造りの建物と、その建物を覆う無数の蔦。中央に広がる庭園と、巨木となったメタセコイア。


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陽光の差すこの地区一帯は、どこか広島の西条を思い出させた。もちろん、西条はここまで建物の密度は濃くないのだが。

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美観地区を一通り巡った頃にはすでに夕刻となっていた。


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最後の1枚だけはシネスティル800Tのフィルム写真を。


これから倉敷に行き、かつフィルムカメラを扱う方々に1つだけお伝えしたいことがある。倉敷駅から徒歩圏内でフィルムを購入できる場所はおそらくない(2020年11月現在)ので、事前に十分なくらいにフィルムを持っていくことをお勧めしたい。(倉敷駅周辺でフィルムがありそうな店を1時間ほど巡ったが一向に見つからなかったので・・・)


お昼に行列を成していた洋食店に再度訪れて、夕食を食べた後、ビアダイニングでアントワープのボレケ、奥多摩のロエアスを飲み、ホテルのサウナで心身を整え、明日の準備をしていた。


明日はどこへ行こうか。明後日はいつも通り仕事に行かねばならない。ホテルでチェックアウトの時間までゆっくりして、岡山駅に戻って岡山城と公園に寄ってから早めに大阪に戻るか。いや・・・。

1日目のと2日目のさかいめに、僕はまた、自分の行動力に驚かされることとなる。

気づくと私はフェリーの時刻表を横目に明日の島巡りの計画をしていた。



つづく。

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