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履歴書には書かない特技

日曜日。
長男が帰ってきた。次男も珍しく家にいるという。

そんな休日、久しぶりに餃子を作ろう。

うちのレシピは特別なコツは何もない。いわゆる普通の焼き餃子だ。
皮も市販の一般的なものを使う。面倒なので、皮から作ったりはしない。
具はキャベツ(ときどき白菜)、長葱、豚ひき肉。
ニンニクと生姜を効かせて、隠し味は赤味噌少々。味付けもシンプルに。
おばあちゃんも夫も息子たちも、家族全員の大好物。

「今夜は餃子だよ!」
この一声で、みんなのテンションが上がる。

材料を用意する。
キャベツは多めに刻んで少し水気を絞る。
豚ひき肉は脂の多そうなところを、キャベツの半分くらいの分量で。
男メシなので、常にニンニクと生姜は標準の1.5割り増し。
具をこねて、少し冷蔵庫で休ませる。

そして、ひたすら包む。
この作業が大好き。

餃子を黙々と包む。思えばこれを何十年もやっている。
月3回くらいは餃子の日があるから、年間にして36回強。
何年もこの作業をやっていると、手が動きを覚えてる。
一心不乱に餃子を包む時、わたしは最高にマインドフルネスな状態にある。
ひとつひとつの具の量の違い、その時々の水分量の違い、皮のヒダの厚みの違いに気付いている自分に、満足感しかない。

とはいえ、10個や20個ではないのよ。
平均個数は100個。
誰かがいない時は75個。すごくお腹が空いている時は125個作る。
息子たちが高校生だった頃は、一気に200個作ってお弁当用に冷凍もしていた。
うちの近所で売っている一般的な餃子の皮が大体25枚入りであることが多いので、量の加減は25の倍数になる。
スーパーで餃子の皮を4つとか5つとか掴んでカゴに入れている自分は、きっと「肝っ玉かあさん」の顔をしてるんだろうなぁ、と想像してちょっと自分に酔う。

「25個は揚げ餃子にして、マヨネーズ風のソースにディップして食べよう。」
「昨日のエビが余ってたから、いくつか当たりを仕込んでみよう。」
きっちりと琺瑯の保存容器に並んでいく同じ姿の餃子たちを眺めながら、今夜の家族の会話を想像する。
愉快な想像が、わたしの餃子を美味しくしてくれる。

子供たちが小さい頃は、包み方を教えて、一緒に焼いたりもしていた。
ごま油の焦げ目がついた美味しそうな餃子の匂いが部屋中に溢れる。
「わぁ!」と歓声があがる。
上手にできて嬉しそうな様子を見るのが楽しかった。
けれど、ティーンも過ぎ、ただ空腹を満たすために大量の餃子を食べ続ける息子たちの様子を眺めるのも悪くはない。
そして、彼らが成人になってからは、全員で餃子とビールを楽しむこともできるのだ。

100個の餃子を包むのに、所要時間はだいたい30分。
1個1分もかかっていない計算だ。
どんだけ集中してるの、自分⁈笑

たぶん、修行中の中華料理屋見習いよりは早くて正確な仕事をしてるのでは、と思う。

決して履歴書には書かないけれど、日々積み重ねてきたわたしの技術は、確実に家族を幸せにしている。

さあ、
今夜も惜しげもなく得意技を披露して
家族と幸せな時間を過ごそう。


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