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友人にあまりいないタイプの奴

 近所のセカンドストリートで、これ以上ないであろう上物のトレンチコートを破格の2000円で購入したのが先月の中頃の話。それから三寒四温が無作為にやってきては、私にコートを着せたり脱がせたりした。そしてまだ脱げそうにない。

 このコート、触り心地はテラテラとしていて柔らかく、どこか"ちゃち"な風があるがそれと同時に併せ持つプチプラ感、色はイエローに近い黄土色。デザインも無難と言えば無難で、何にでも合うからこれひとつで合わせやすい。試しにスーツに合わせてみると、父曰く「落としの山さん」になるらしい。わたしゃくたびれたデカってことかい。

 そういえば最近、缶詰が好きだ。KALDIの缶詰を初めとした、プチプラ缶詰が持つあの"スペシャル感"。手に持って天に翳してみるだけでも、ちょっと誇らしい。和食にも洋食にも、和酒にも洋酒にも、孤独な食卓にも大宴会にも親しげに取り入ることができるこいつぁまるで千両役者だ。

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 郷に入っては郷に従うよりも、朱に交わって一際鮮明に赤くなれる人間でありたい。敵を欺くにはまず味方から、って云うでしょう。
 結局は誰にでも取り入ることができるカメレオンのような人間が、このカラフルな眩い世界でも自分の色を見失わずにのらりくらりと闊歩できるのだと思う。自分の個性をけして殺さずに相手の世界に嵌め込むことで、またとない存在感を確立できるのだ。

 アナタの『交友関係にあまりいないタイプの人間』になりたい。私は"親しい方々のその中のひとり"というポジションに甘んじたくないのである。ガンマンの流れ弾で死ぬオーディエンスではやりがい搾取もいいとこだ。
 友人の談義に幾度となく登場する私が"変わり者"としてであることを切に願っております。

 とりあえずどうしたらいいでしょうか、くたびれたコートを着ることから始めましょうか。明日も寒いらしいので。
 

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