二年次研究:ハウルの動く城の家族研究⑶
こんにちは。
今回の投稿で二年次研究のまとめ、最後の投稿に入ります!
ここまで通してお読みくださっている方、本当にありがとうございます、好きです🥰
さて、前回は「キャラクターの生い立ち分析」「先行研究2:認識上の家族」の二つについて紹介しました。
今回はその分析まとめから入るので、前回を読んでからの方が面白いかなと思います◎!
1.各キャラクターに見られた共通点
この研究は、彼らが自分たち「家族」と認識するに至るまでにどのような共通認識要素があったのか?ということが論題でした。
それを明らかにするために、前回のキャラクター分析を踏まえ彼らの共通点を見出していこうかなと思います。
私はこれまでの研究より、彼らが城での生活を選ぶ前に「家族と満足に共住できていなかった」という共通点を挙げたいなと思います。
ソフィーは母子家庭かつ妹とは別居、母とも寝食を共にしていた訳ではないようですし、
ハウルは姉家族と距離をとりつつ城での生活を選び、
マルクルは家族と生き別れみなしご生活を送り、
カルシファーはそもそも共住とかいう概念のない存在でした。
それぞれの「孤独」を抱えた者達同士が、「共住」を通して家族認識を育んだのではないかなと分析しています。
また、前回紹介した先行研究においても「主観的家族」の中で、「親族のみを成員基準とする諸活動」「共住」「家族としてするべき活動を一緒にしている」というワードがありました。
ハウル達が本来親族のみで、家族で行われる行為をともにしている、という部分で彼らにとって「共住」がいかに大きな要素だったかは、そのように結論付けてもいいのではと考えます。
しかし、「共住」を「家族」における共通認識要素とする上である疑問点が生じるんです。
それは、ソフィーが現れる前のハウル・マルクル・カルシファーの三人で生活していた時代も、互いに「家族」だと思い合っていたのか?という点です。
2.本当に共住だけでハウル達は「家族」になれた?
「共住」だけが家族を形成する上での共通要素なら、ソフィーが現れる前のハウル・マルクル・カルシファーが三人で暮らしていた時代から彼らは「家族」だった、ということになりますよね。
彼らが以前はどのような関係性だったのか、という点を考える必要があります。
それに関しては、映画冒頭の朝食シーンでマルクルが「久しぶりですね、ちゃんとして朝ごはんなんて」と発言しているシーンや(映画31分地点)、
連日帰ってこないハウルを心配し不安になるソフィーに「ハウルさんなら心配いらないよ。前も何日もいなかったことあるから」と発言しているところを見ると、
あまり寝食をともにするような共住ではなかったようです。
さらにマルクルがハウルのことを「お師匠様」と呼んでいるシーンをみても、ハウルとマルクルは家族関係というよりも「師弟関係」という印象を受けます。
彼ら3人が家族関係ではなかったと仮定するならば、「共住」の他にもハウル達の間には何らかの共通要素がまだあるということになります。
私は、それが前回の先行研究でも登場した「情緒的動機付け」なのではないかと考えています。
3.「情緒的動機付け」をハウル達に当てはめよう
「情緒的動機付け」とは、対価が支払われない、無償で行われる行為を指しますが、これをハウル達三人に当てはめてみます。
ハウルとマルクルの関係は「師弟関係」であり、マルクルはハウルの留守を守る代わりに弟子にしてもらっています。
これは無償とはいえません。
ハウルとカルシファーの関係は互恵関係、いわゆるwin-winな関係です。魔力と大切なものを取引し契約を結んでいるので、対価が支払われており、無償ではありませんよね。
ここでソフィーが登場するんです。
彼女は当初こそ「掃除をする代わりに住まわせてもらう」という対価が支払われていたでしょう。
しかし、母からの共住提案を断ったり、周りも引き止めたりと、次第に対価のみの関係ではなくなっているのが映画を通して分かるかなと思います。
(もっとも、彼女がしていた「掃除」はやや過度なものがありおせっかいに近かったので、ソフィーの行為そのものが「対価の支払われない無償で行われる行為」だったのかもしれません。ハウルが緑のねばねばを出し寝込んだ時もきちんと看病していましたし)
さらに、荒れ地の魔女に関しても彼女に行われている「介護」は無償で行われているものです。
ヒンのペット枠に関しては、先行研究2にて山田氏が主観的家族の例に挙げていました。
そんな彼らをまとめてハウルが「我が家族」と称したのも、マルクルが「僕ら、家族?」と言ったのも、ソフィーの登場を契機に彼らの間に「情緒的動機付け」が生じたからではないかと考えます。
そう考えると荒れ地の魔女やヒンの脚色変更は、より分かりやすい形で「情緒的動機付け」を印象付けるためだったのかもしれませんね。
4.結論
これまでの調査と分析に基づき、私は「ハウルの動く城」において「共住」というものが、彼らが互いを「家族」と認識していた共通要素だったのではないかと考えます。
また、あとから発生した「情緒的動機付け」の発生がさらにそれを後押しした結果、彼らは非親族にも関わらず「家族」を形成できたのではないでしょうか。
さて、これにて私の二年次研究:ハウルの動く城の家族形成はおしまいです。
スタジオジブリ作品では今作以外にも、「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「コクリコ坂から」「耳をすませば」のように様々な家族像が描かれています(前期の間は「耳をすませば」の家族にフォーカスをあてて研究していました)。
つたない文章と分析だったかとは思いますが、これを読んでくださった方が「ジブリってそんな見方もあるんだ!」と思ってくださったらすごくうれしいです◎
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!
🙇♀️
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