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記憶と傷

「やりたいこと」がない子を考える(29)

トラウマとは、決して慣れることのないサリエンシーであると述べました。
しかし、そもそも世界とはサリエンシーであり、記憶とはサリエンシー的なものです。
つまり、記憶とトラウマとは、根本的に同じだと言えます。
國分は以下のように述べます。

「トラウマ」はもともとギリシャ語で「傷」を意味する。あらゆる経験はサリエントであり、多少ともトラウマ的であるとすれば、あらゆる経験は傷を残すのであり、記憶とはその傷跡だと考えられる。絶えずサリエンシーに慣れようとしながら生きている我々は傷だらけである。いや、より正確に言えば、傷跡だらけである。

僕たちは記憶という傷を常に増やしながら生きています。
しかし、全く予測できなかった傷がざっくりを心の中にできてしまうと、常に痛む傷口となって苦しめ続けるようになります。
一度トラウマが発生すると、自分を苦しめる興奮を避けるように心が機能します。
トラウマは興奮の回避を生み出すのです。

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