おどけたピエロは馬鹿なふり
例えば、
セックスで首を絞められた時
例えば、
あまりにも辛すぎる料理を食べた時
例えば、
熱すぎるサウナに入った時
例えば、
わさびが鼻にツーンと来た時
例えば、
身内の亡骸を見た時
例えば、
転んで膝をすりむき、ストッキング越しに滲んだ血を見た時
例えば、
海に入りどろどろの砂が足の上を滑っていった時
生きていると感じる
ひさしぶりに映画を見た
佐々木、イン、マイマインという映画だ
分かるよ、今お前は普通の状態じゃない。
まるで糸の切れた凧みたいに虚空をさまよって、過ぎていくものたちをゾッとする思いで見つめているんだ。
まるで死んだものを懐かしんで、墓場をさまよう道化のように。でもここはおしまいだぞジョー。もうどうしようもないんだ。いつかこれを物語にすればいい。でも今は行こうや。そして飲もうや。世界は偉いスピードで進んでいるんだ。着いて行かなきゃ。
テネシーウィリアムズの戯曲「ロング・グッドバイ」の一節を悠ニが叫んだ
瞳孔が開くような感覚がした
びりびりとひりつくような映画だった
世界は偉いスピードで進んでいるんだ。着いて行かなきゃ。
世界は偉いスピードで進んでいるんだ。着いて行かなきゃ。
わたしの中で繰り返し流れる。
傷付いてなんかいられない
そこにいつまでもとどまっている暇はない
佐々木が言う
「悠二、好きなことやれよ。お前は大丈夫だからさ。堂々としてろ。」
私は悠二になった気で、佐々木から元気をもらって
*
一週間も経てばまたこの感覚を忘れて、何かしらの刺激がなければまた生きた心地のしない日々に戻るだろうが、今はなんだか冗談みたいに、
明日もがんばろうという気持ちになっている
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