見出し画像

プラハの春〜柳の枝を編んだポムラースカ(鞭)

イースター(復活祭)のお休みを利用して訪れたプラハ。市内各地でイースターマーケットが開かれていた。屋台にはウサギ、鳥、羊、そしてカラフルな花々をモチーフにしたお菓子や飾りがこれでもかとばかりに並んでいる。

アイシングのかかったウサギクッキー

うーーー、たまらん。

卵も手芸品もどれもこれも可愛くって財布のヒモがゆるゆるになりそうになる。いかん、自制しろと理性が訴えるけど、せっかくの旅行じゃん、やっぱりなにかを連れて帰りたいじゃないの、と物色している時に屋台の中にリボンで飾られた枝に目がとまった。

巨大ポッキーにも見えた

あらこれは?

ドイツでもイースターの飾りとして枝が売られているのはよく見る光景。でもこれは単なる飾りではなさそう。辺りを見渡すと若いお兄さんが二人、首からかけた箱に小さな枝の束を入れて道行く人に声をかけていた。


真面目そうなお兄さん。寄付集めの枝売りでしょうか?

枝と引き換えに寄付を募っているのだろうか。動向を見定めようとこっそり後をついて歩いてみたけど誰も買おうしない。つい私も及び腰になってお兄さんに声をかけるのを辞めてしまった。

けれどなんだろう何だろう。。。気になる。

やっぱ聞けばよかったかなと後悔していると米国人観光客を連れたツアーガイドさんが枝を持ってデモンストレーションしている場面に行きあってめでたく謎が解消された。

柳の枝を三つ編みにしたものはポムラースカ(鞭)。イースターの月曜日に若い独身男性がポムラースカで想いを寄せる女性のお尻を叩いて、そのお礼に男性は赤いイースターエッグをもらうのだそう。

春一番に花を咲かせ、ハチに蜜を提供するヤナギのもつあふれる生命力が叩くことで女性に渡され、若返りの効果(=子宝)をもたらすという迷信からくるもの。

いや女性のお尻を叩くなんて、と思うかもですが、きっと叩かれたチェコ女性はエネルギーいっぱいになって旦那さんを尻にしき、さらにはムチで尻をひっぱたき返して「稼いできなさい」とばかりにたくましく生きて行くのだろう。そうやって世の中は丸くおさまっていくのだ。きっと。

凝った編み方ができる男性もポイントが高かったらしい

昨今はどうやら都市部ではこの風習も廃れる傾向にあるらしいけれど、街ゆく人が枝を買っていたことからして今なおチェコの春にとっては欠かせない風物詩であるようだ。

昔の絵はがき

枝を最初に見かけたヴァーツラフ広場はチェコの歴史が大きく変動するのを常に見つめてきた場所。1968年に自由化を求める運動「プラハの春」がソ連を主体とするワルシャワ条約機構の軍事侵攻によって潰されたのも、さらに1989年の東欧の民主化運動でチェコスロバキアで起きた民主主義を求めるビロード革命で数多くの集会が開かれたのもこの広場だった。

ヴァーツラフ広場

焼きソーセージの煙がたなびき、世界中からやってきた観光客で賑わう様子を見ているとそんな歴史的な事件がここであったなんて信じられない。

それは遥か遠い昔の出来事、とつい片付けたくなるけれど、広場の先にある国立博物館に連帯の意を表して掲げられた黄色と青の国旗は日常があっという間に引き裂かれる恐ろしさを訴えてくる。そして私たちと違って戦禍で春の到来をむかえている人たちが世界中にたくさんいることも。

イースターはキリストの復活を祝うだけの行事ではない。ドイツでは反原発運動に端を発して、平和を祈って行進するイースターデモが何十年にもわたって定着している。

色んなことに思いを馳せ、平和を願いながら。。。
ハッピーイースター
Frohe Ostern



この記事が参加している募集

みんなでつくる春アルバム

この街がすき

いただいたサポートは旅の資金にさせていただきます。よろしくお願いします。😊