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図書館は出会いの場~植物交換会


 夏日が続くわ、雪が降るわと毎日ジェットコースターに乗っているかのような天気ががようやく落ち着いてきた4月25日から27日にかけての3日間、ミュンヘン市の図書館で植物交換会が開かれました。

ガーデニングシーズンに本格突入するタイミングを狙ったタイムリーな企画です。

 交換会は、育てていた植物が増えすぎちゃったり、種をまいたらたくさん芽が出て植えるキャパがなくなっちゃった、という人達が余った植物を図書館に持ち寄り、その代わりに他の人が持ってきた植物を持ち帰ってもいいというもの。

交換が前提という建前ですが、最終的に残った植物は交換でなく、欲しいという人たちの手元に渡ったようです。 

どんな植物が出されているのかしらん、と図書館に偵察に出かけるとゼラニュームがなんだか多い感じ。(こいつらどんどん増えますもんね)。

カボチャ、トウガラシ、トマトと野菜もちらほら。自家製野菜に勝るものなし!と意気込んで種をまいた人たちの荒い鼻息が聞こえてきそうです。

かと思えばアロエやフィロデデンドロン、オリヅルランなんかの室内向けの観葉植物もあったりとなかなか多彩です。時にお手入れのコツを書いたメモも添えられていました。 


持ち帰り用には新聞紙や卵ケースが用意されています。
 
ベンチに腰掛けて眺めていたら全身を薄緑色でコーディネートしたマダムが肩掛けバックからクジャクサボテンを引っ張り出して、その後から植物を物色していました。

念入りな吟味の結果、彼女が連れていったのはチリとトマト。植物を見るその真剣な眼差しからはお召し物だけでなくグリーンフィンガーの持ち主と拝察いたしました。

 本の海にぽっかりと浮かぶ植物の島に、本を借りに来た大人も子どもも興味津々で、小学生低学年くらいの女の子はうれしそうにちっちゃな植物を大事に手に持って図書館を後にしていました。 

すぐ近くには植物や園芸の本が置いてあります。知らない植物ならば本を借りてお調べくださいとでもいうような図書館サイドの心憎いセッティング。

 こうやってミュンヘンの図書館ではいろいろなイベントを開催しています。植物交換会以外の例をあげると、多様性をモットーにしたドラァグクイーンによる家族向けの朗読会があったり、あるいは持続可能な世界とは、をテーマにした哲学の討論会だったり。


軽いものだったら編み物講座や子供を対象にしたリペア(修繕)講習会なんてのもあります。


そしてそれらすべての根底にあるのは「図書館を出会いの場に」というスピリットです。老若男女、国籍も貧富もなにを問われることもなく誰もが立ち寄れる図書館。知らない人やモノ、コトと出会うことで自分の世界を広げ、本でさらに、知識や思索を深めてもらおうというコンセプトは、アナログ故にゆっくりとしていてとってもいい。

中央図書館とミュンヘンフィルの本拠地である文化複合施設は新規建設中。仮設施設(HP8)は元工場を利用しており、豊田泰久さんが音響を手がけたコンサートホールはとても高い評価を受けてます。

ドラァグクイーンがなんぞやなんて、こうやって取り上げてくれなければ薬物でもやるドラッグクイーンかと勘違いしたまま私は一生終えていたでしょう。

もちろんこういったテーマを扱うと物議を醸したりもするのです。が、どんな問題もタブー視することなく意見の相違を乗り越えて互いに理解しあっていきましょうというミュンヘン図書館の姿勢が大好きです。

 そうそう私も図書館を訪れた機会に手に取ったベランダ菜園の本にヒントを受けて「家計防衛隊」と名付けたガーデニングを新たにスタートさせました。でもそれはまた別のお話。 

図書館前にあったリサイクル本棚では「ヒアシンスグラスの歴史と伝統」を見つけました。ヒアシンスの花瓶ごときで1冊の本になるのですね、と妙に感心しながら連れて帰ってきました。


 なんてことを振り返りながら書いているうちにあれあれ、あっという間に春を通り越して夏がやってきちゃいましたよ。交換会でもらわれていった植物も今ごろはぐぐんと成長しているかな。

まさに五月晴れ。母の日のニンフェンブルク城

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