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【ShortStory】今日、なに食べる?

テーマ:食事

「なんでもいいよ」

当たり前のように君は言う。

 食事は必要だ。必要な栄養素が不足すれば集中力が落ち、免疫力が下がる。身体の節々に痛みを覚え入院してしまうのだ。

それと同じくらい会話も大切だ。言葉の1つ1つが心の栄養になると言っていい。
もしかしたら君は面倒くさいのかもしれない。それでも言葉は大切だ。

質問を変えよう。
「魚とお肉どっちが食べたい?」

君は考える。
「魚。なんだか鍋が食べたいわ。鮭の入ったやつ」

僕は嬉しくて、笑いながら考えを言う。
「いいね。鮭の入ったちゃんこ鍋なんかどう?イクラも買って海鮮丼も付けようか。どう思う?」

つまらなそうにしてた彼女は、少し元気になった様に見えた。
「いいんじゃない?」

足りない材料を確認すると、僕は出掛ける準備をし始める。
「何処に行くの?」
「材料が足りないから買い物。一緒に行く?」

彼女は考える。
「シャワー浴びてない...」
心無しか悲しそうだ...
「浴び終わるまで待ってようか?」
「ひとりじゃヤダ...」

時計を見て考えた。確実に家を出るまでに1時間はかかる。いつもそうだから。

僕は、確認のため聞いた。
「一緒に行きたい?」
「うん...」
「一緒にシャワー浴びよっか。」
そう言って彼女の手を取る。

「何着る?」
僕に言われるまでもなく、着替えを手に取る。
「今日は寒いよ?」
「これでいい」
ジャケットを脱いで貸せるように、僕が少し厚着すればいいか。

「夕飯に間に合うように準備しなきゃだね。」
「うん」

デートとは言わなかった。
たぶん、そうじゃない気がしたから。

君にとって僕は何者なんだろう?
家族として数えてるのか、ただのお節介人、便利な人...
僕には君に気持ちが分からないけど、信用はされてるってのは分かる。

僕に出来ることって、なんだろうか?

ここまで考えて僕は、思考を止めた。
これ以上は、僕の問題じゃないから。

好きだけじゃ、愛してると思ってるだけじゃ、何も掬えずサラサラと落ちていく。

結果を出した後にでも考えよう。
何も今すぐ必要な訳じゃないのだから。

「明日は、何食べたい?」

とっさにでた言葉に、彼女は笑って答えた。

「気が早すぎるよ。今日の晩ごはんのこと考えようよ。」

・・・・・・

私が書いた短編小説

サムネ


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