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「誰にでも敬語」について

「萱場さんって、年下や部下、社内でも社外でも常に敬語ですよね。」と言われることがあります。「関西出身なのに関西弁が全然出ないですね!」の次によく言われる(笑)ので、よくあるご質問ということでnoteに書いておきたいと思います。

時は2002年、監査法人時代に遡ります。

当時、大阪の某大手監査法人に入所した自分は、大阪という土地柄もあったのか、いわゆる体育会系といいますか、「入所した順番で先輩後輩が確定、先輩の言うことは絶対、後輩は服従」といった雰囲気のある職場でした(今は大きく変わったようで、当時の話です)。監査業務も大詰めを迎える繁忙期の終盤は、ストレスやプレッシャーもあったのでしょう、パートナー(一般企業でいう取締役)がマネージャーをパートナー個室に呼びつけ、「お前、なんでこの手続きやってへんねん!」といった怒号がスタッフルームまで漏れてきてスタッフ一同怯えるというのも日常でした。

今でいうところのブラック気質な職場だったのでしょうけれど、当時、自分にとっては、初めての社会人経験だったということもあり、それが当たり前でしたし、疑問にすら思いませんでした。

そんななか、自分がJ2(入所2年目)だった頃だったでしょうか。東京から年次で3つぐらい上のシニアクラスの東京人、公認会計士Mさんが我らが大阪事務所に異動してくるという人事がありました。眼鏡がキリっとしてやせ型の真面目そうな、そしていかにも頭がよさそうな風貌の東京人です。確か人材交流だか何かの理由で、期間限定で東京事務所と大阪事務所でシニアクラスの人材を交換派遣するといったプログラムだったかと思います。

ところがそのMさん、大阪事務所に異動してきて精神的に若干病んでしまい、交換期間を終えることなくフライング気味で東京事務所に帰ってしまいました。聞くと、「この事務所では、プロなのにプロとして扱われないしリスペクトもない。オマエ呼ばわりとか、、社会人として信じられない。早く東京に帰りたい。」と常日頃漏らしていた(繰り返しですが昔の話です)ようで、後から聞くに、大阪事務所の上層部とも職場環境の改善について戦っていたとのこと。オラオラ系の大阪事務所育ちの我々スタッフとしては、「上品で頭の固い東京人が打ちのめされて帰っていったでえ~」としか思えなかったのを今でもよく覚えています。

時は進んで2008年、東京に移り住みました。大阪の監査法人を辞め、ちょっとした海外滞在や2年間のプータロー時代を経て、貯金も底をついた状況で働く必要が出てきたためです。丸の内の仲通りで紅葉の絨毯を踏みしめながら、スタバのコーヒーを片手に外国人と英語で打ち合わせをする、そんなかっちょいい会計士になるために選んだ次のキャリアは、海外案件も多い、丸の内にある中堅の会計事務所でした。

久しぶりのお仕事、中途採用の監査法人出身公認会計士とはいえ、新しい職場では新人。新たな出発です。大阪の監査法人時代にも、東大を卒業して事業会社に入り、30歳前後で会計士試験を一発合格して入所してきた大型新人(自分よりだいぶ年上)がいましたが、キャリアがあろうがなかろうが監査法人では新人で、こないだまで大学生だった新卒社会人と同じ扱い。20代中盤の上司からは「じぶん、何でキャリアチェンジで会計士なんて目指したん?」などと聞かれる始末。

そんな業界ですから、自分も、丸の内の新しい転職先では一番下っ端からの再出発。残確の発送でもコンパの主催でも、上司の言うことは絶対服従、なんでもやりまっせという意気込みと覚悟で意気揚々と上京しました。

しかしそんな思いも裏腹に、、なんだか空気が違うことに気づきます。新人のはずなのに、意外や意外、なにやら全員が敬語で接してくるではありませんか。なんか自分の知っている「新人の扱い」と全然違う・・。

「おまえ、あの客からのメール、どうすんねん?」はもう聞こえてきませんし、「あの連結仕訳、どないなってんねん!」は前世の記憶に思えてきます。ある意味、これが人が行き交う人間交差点、東京の東京たる所以なのか分かりませんが、どうやら業界全体としては、中途採用の人材がそれぞれ異なるキャリアを持ち合って知見を集合させ、チームとして会社として1タス1ヲ3ニスルというのが常識らしく、地方の監査法人のように新卒で入所してタマゴからニワトリまでを家族のように寄り添って働く文化は少々特別なようです。全員が中途採用の前提なので、自分が迎え入れられる時もあるし迎え入れる時もあるしで、全員がプロとしてニュートラルでリスペクトし合う関係(ある意味で希薄な人間関係)の模様。「なるほど、これが東京人Mさんのいうリスペクト。プロとして接するということなのか」ということを実体験しました。

そして2012年、日本を後にしてシンガポールに渡りました。

日本から出て日本以外の文化を知ると、逆に日本の特徴が見えてきます。そこで見えてきたのが、日本人の多くが、それこそ息を吸うように自然と無意識に「相手の年齢によって態度を使い分けている」という事実です。外国人が年上にも年下にもあまり態度の使い分けをしないこととは対照的です。

例えば飲みの席。初めて会った人の年齢を会話の中で探り、「何年に大学卒業ですか?へえ●●年ですか、じゃあ俺の一個下か。」みたいに、相手が年下だと判明したら何故かタメ口やクン付けでドヤりだす日本人がたくさんいます。出身大学が同じで年下だと分かった日にはもう、一瞬で下僕扱いです。しかし一方で、そんなマウント取りたがりマンに限って、自分より稼いでいる若者や、有名人だったり起業家として成功している若者に対しては、何故か年下なのに若干よそよそしいペコリーマンに早変わり。

自分の価値観からいうと、これはちょっとダサいと思うのです。そんな色眼鏡で人を見て、推し量ってから自分の態度変えるとかフェアじゃない。いやむしろ、年齢が上か下かで態度変えるなら、徹底してくれた方がすっきりしてます。相手が有名人だろうが富裕層だろうが、年下だったら一律にクン付けでドヤって欲しい。

例えば初対面で、年齢不詳の相手との会話になり、宇多田ヒカルのAutomaticが流行った時に何歳だったとか、BOФWYの現役時代知ってるかといった、それとなく年齢を聞くテクニックを駆使しつつ、年上ならこういうアクション、年下ならああいうアクションを、と身構えながら探りつつ会話を進める。そのうえで「金融系ですか?」とか「駐在でいらっしゃってるんですか?」といった質問を織り交ぜて経営者なのかサラリーマンなのかを探りにいったり。

「そもそも相手が年下ならタメ口、みたいな文化、どこからくんだろう・・。相手の人生は35年、自分の人生は36年だとしても、どうやって人生過ごしてきたかでその1年なんて経験値を計るうえでも関係がないし・・・」とまあそんなことをあれこれ考えていくと、

あーもう、考えるの面倒臭っ!!

と思うんですよね。そういう矛盾に対する自分なりの対策が、「社内社外問わず、誰にでも敬語丁寧語で接する。歳は聞かない。聞いても態度は変えない。」という現在のスタイルなわけです。年上でも年下でも稼いでても稼いでなくても、何も配慮する必要も頭を捻る必要もありません。

秒速で億を稼ぐ20歳が現れたとしても、見た目で年下だと思ってタメ口聞いてたら意外と年上なことが判明しても、新しく入社してくる人が年上でも対応が変わらない、無敵の(あれこれ考える必要のないラクな)コミュニケーション術だと思うわけです。

正直、人と仲良くなりにくいというデメリットはありますが、あれこれ探る労力削減や、仕事をするうえで信頼を集めるという意味ではお勧めの戦略だと思うんですけどね。

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公認会計士カヤバ ゲンです。シンガポールの会計事務所CPAコンシェルジュ代表 / Kindle「シンガポール入門」/ オンラインサロン「シンガポール入門 最新実務編」/ シンガポール進出や移住など / 常に採用中です→ https://cpacsg.com/recruit/