Lilaclavender

一風変わった交通手段を使う国内旅行、およびNHKドラマについて綴っていきます。

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  • NHK大河ドラマ『光る君へ』/『枕草子』

    2024年放送NHK大河ドラマ『光る君へ』および清少納言『枕草子』について取り上げた記事をまとめています。

記事一覧

あてなる甘葛

ある夏の日、車折神社に出かけた。 古くからの石造り玉垣のほとんどに「金壱百圓」と記されている。戦前に寄進されたものだろう。 境内には「清少納言社」という小さな祠…

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1日前
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【光る君へ】第23回「雪の舞うころ」

座長が映ると今回は久しぶりに、そうイライラせず見られた。制作陣が故意に貶めて描く方針のキャラクターが登場しなかったためだろう。道長の言動もようやくブラック化し…

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5日前
6

短いほうの時間

春はあけぼの。 夏は夜。 秋は夕暮。 冬はつとめて。 『枕草子』冒頭の、あまりにも有名な言葉である。 有名になりすぎて、『枕草子』はそれだけかと思っている人は、数ヶ…

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8日前
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【光る君へ】第21回「旅立ち」

感涙にむせびたかったけれどウイカさんが「現時点での一生のお願いです。」と勧めていた「光る君へ」第21回。 『枕草子』起筆が描かれた。 本来ならば「感慨無量」と涙す…

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2週間前
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失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(2)

『枕草子』の読者は多い「光る君へ」制作陣の大きな誤算は、『源氏物語』のみを特別視して、『枕草子』を一段下げて位置づける姿勢を取ったことにも認められる。 NHK出版…

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3週間前
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失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(1)

はじめに&おことわりNHK大河ドラマ「光る君へ」は、2024年5月19日に第20回が放送された。次回の終盤からしばらく、舞台を越前に移す。物語は大きな区切りを迎えた。 そ…

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3週間前
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温泉とほうとう

早くも真夏日が到来している昨今、いささか季節はずれのタイトルをつけてしまったが。 『枕草子』のお話である。 『枕草子』お勧めの名湯?『枕草子』の一部の本には、以…

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4週間前
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【光る君へ】第19回「放たれた矢」

はじめにお礼ですSNSを見ていたら、「光る君へ」第17回・第18回についての本noteレビュー記事を紹介している方がいらっしゃった。過分にも、好意的なご感想をいただけてい…

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1か月前
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50週

この記事を公開したら 「50週連続投稿!」 というメッセージがパソコン画面に表示されるはずである。 50週、すなわち1年近く毎週何かしら書き、noteに載せ続けたことに…

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1か月前
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【光る君へ】第18回「岐路」

今回も簡単に済ませたい。 大石先生や制作統括さんは、道隆一家(中関白家)に何か個人的な恨みでもあるのだろうか?道長を少しでも良く描くために負のバイアスをかけなけ…

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1か月前
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高齢者と呼ばれたい

東京から東名高速を西へ行くバスに乗車するとき。 都心を離れて40分ぐらい過ぎたところで 「70歳代を高齢者と呼ばない都市 ××市」 と大書してある横断幕が張られた陸…

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1か月前
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【枕草子】再び、香炉峰の雪

ドラマで作ってくれないのならば「光る君へ」では、『枕草子』のエピソードをあまり取り上げてくれないみたい。宣孝御嶽詣での時は期待したが、あれはまひろにも関わる話…

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1か月前
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【光る君へ】第17回「うつろい」

長文を書いて、消した。 思うところはいろいろとあるのだが。 かなふみをひとつ作った。 まずは楽しもう。 「ステラnet」のサイトで定子さまが、「もし(井浦)新さんが…

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1か月前
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「暮しの手帖」を読む~戦争を語り継ぐ心理

「いつものほうがいい」1968年夏。 仕事を終えて帰宅した父が勤務先の購買部から持ち帰った「暮しの手帖」を、母に渡した。 当時36歳だった母は雑誌を一瞥して 「おもし…

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1か月前
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【光る君へ】第16回「華の影」

1030年ごしに窘められる今回は「光る君へ」関連番組から紹介する。 まずは2024年4月20日放送「土スタ」。 藤原道隆役の井浦新さんがゲストで登場。 お話に入る前に流れ…

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1か月前
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続・「暮しの手帖」を読む

懐かしい寄稿者初期の「暮しの手帖」は、当時の各界著名人による随筆が人気コーナーだった。文壇で活躍する作家・評論家のみならず政治家や科学研究者、メディアで活躍し…

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1か月前
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あてなる甘葛

あてなる甘葛

ある夏の日、車折神社に出かけた。

古くからの石造り玉垣のほとんどに「金壱百圓」と記されている。戦前に寄進されたものだろう。

境内には「清少納言社」という小さな祠がある。

この神社は清原頼業(きよはらのよりなり、1122-1189)を祭神とする。彼は清原広澄(934-1009)を始祖とする「広澄流清原氏」の一員で、清原元輔や清少納言を輩出した「皇別清原氏」とは異なる一族と考えられている。しかし

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【光る君へ】第23回「雪の舞うころ」

【光る君へ】第23回「雪の舞うころ」


座長が映ると今回は久しぶりに、そうイライラせず見られた。制作陣が故意に貶めて描く方針のキャラクターが登場しなかったためだろう。道長の言動もようやくブラック化してきたし。やはり道長には父親以上の「ワル」になってもらわなければ。

越前の松原客館や国府における、宋人や地元の役人たちの思惑の交錯も、それなりに見ごたえがあった。昔の大河ドラマならばメインパート扱いになるところだろう。異文化との出会いや、

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短いほうの時間

短いほうの時間

春はあけぼの。
夏は夜。
秋は夕暮。
冬はつとめて。

『枕草子』冒頭の、あまりにも有名な言葉である。
有名になりすぎて、『枕草子』はそれだけかと思っている人は、数ヶ月前までの私自身も含めて、少なくないだろう。

改めてこれらの言葉を見ると、各々の季節において「より短いほうの時間帯」に風趣を感じる心が伝わる。長いのは好きでないのだ、いろいろな意味で。

あけぼの、すなわち夜明けの薄明は忍び足のよう

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【光る君へ】第21回「旅立ち」

【光る君へ】第21回「旅立ち」


感涙にむせびたかったけれどウイカさんが「現時点での一生のお願いです。」と勧めていた「光る君へ」第21回。

『枕草子』起筆が描かれた。
本来ならば「感慨無量」と涙するところだが、なんでまひろ発のアイデアにするのかな~。まずそこでしらけてしまう。

作劇上やむを得ず、為時宅で油を売っている場面から発展させたいのならば、せめて清少納言が自ら思いつく筋書きにしてほしかった。

たとえば…

中宮が懐妊

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失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(2)

失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(2)


『枕草子』の読者は多い「光る君へ」制作陣の大きな誤算は、『源氏物語』のみを特別視して、『枕草子』を一段下げて位置づける姿勢を取ったことにも認められる。

NHK出版で発行された「大河ドラマガイド 光る君へ 前編」で大石静先生は次のように述べている。

大石先生自身はそのような感触を抱いても、いざ脚本を執筆する段となったら大切な仕事だから、大人の対応をなさるだろう、あだやおろそかには扱わないだろう

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失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(1)

失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(1)


はじめに&おことわりNHK大河ドラマ「光る君へ」は、2024年5月19日に第20回が放送された。次回の終盤からしばらく、舞台を越前に移す。物語は大きな区切りを迎えた。

そこで、本稿では第20回までを「第一次平安京編」と位置づけて、総評的な意見を書いてみたい。

…と意気込みつつ、大枠を設定した下書きを作っていたが、「こんなはずではなかった」と、正直ぐったり疲れている。ドラマ放送を機に『枕草子』

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温泉とほうとう

温泉とほうとう

早くも真夏日が到来している昨今、いささか季節はずれのタイトルをつけてしまったが。
『枕草子』のお話である。

『枕草子』お勧めの名湯?『枕草子』の一部の本には、以下の記述が掲載されている。

現在一般の書店に流通している『枕草子』の本に、この段はない。『枕草子』には”三巻本”と”能因本”という、異なる系統の写本があるがゆえの現象である。

平安時代にはもちろん印刷やコピーの技術はない。書かれた作品

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【光る君へ】第19回「放たれた矢」

【光る君へ】第19回「放たれた矢」


はじめにお礼ですSNSを見ていたら、「光る君へ」第17回・第18回についての本noteレビュー記事を紹介している方がいらっしゃった。過分にも、好意的なご感想をいただけていた。

no nameさん、この場を借りてお礼申し上げます。お目に留めてくださりありがとうございました。

平安時代や文学作品についてのわが知識は、はるか遠い昔の受験生時代のままで止まっています。今回大河ドラマで平安時代中期を取

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50週

50週

この記事を公開したら

「50週連続投稿!」

というメッセージがパソコン画面に表示されるはずである。

50週、すなわち1年近く毎週何かしら書き、noteに載せ続けたことになる。最初はフェリー旅行記や下手の横好き写真、うどん店レポートなどを載せていたが、そろそろネタ切れかというところで大河ドラマ「光る君へ」が始まり、その感想で延命できた。最初は展開に夢中、やがてちょっとした違和感を持ち、それが次

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【光る君へ】第18回「岐路」

【光る君へ】第18回「岐路」

今回も簡単に済ませたい。

大石先生や制作統括さんは、道隆一家(中関白家)に何か個人的な恨みでもあるのだろうか?道長を少しでも良く描くために負のバイアスをかけなければならないという固定観念にとらわれすぎていないだろうか?道隆も道長も、当時の貴族の常識に則って政を進めていたはずである。

今回描くべきだったできごと伊周の「皇子を産め」暴言ハラスメントは正視に耐えなかった。前回の道隆は病身で余命いくば

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高齢者と呼ばれたい

高齢者と呼ばれたい

東京から東名高速を西へ行くバスに乗車するとき。
都心を離れて40分ぐらい過ぎたところで

「70歳代を高齢者と呼ばない都市 ××市」

と大書してある横断幕が張られた陸橋が前方に見えてくる。

旅心が一瞬曇る。

…余計なお世話。

バスが陸橋をくぐると、次の風景が苦い思いをすぐ洗い流してくれるから、まだ救いがある。

この市の住民でなくてよかった。

いつのころからだろう。
70歳、80歳…

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【枕草子】再び、香炉峰の雪

【枕草子】再び、香炉峰の雪


ドラマで作ってくれないのならば「光る君へ」では、『枕草子』のエピソードをあまり取り上げてくれないみたい。宣孝御嶽詣での時は期待したが、あれはまひろにも関わる話だから採用したということなのか。そもそも藤原道隆一家の描き方が雑過ぎ、下げ過ぎと感じる。貴族の傲岸ぶりは道長政権になってからもそう変わらないと思うが…。

嘆いていても詮なきこと。ドラマで作ってくれないのならばnoteで書こう。スキの数など

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【光る君へ】第17回「うつろい」

【光る君へ】第17回「うつろい」

長文を書いて、消した。
思うところはいろいろとあるのだが。

かなふみをひとつ作った。
まずは楽しもう。

「ステラnet」のサイトで定子さまが、「もし(井浦)新さんがあんなふうに責めてきたら、自分の記憶を改ざんしそうですね。」と仰せになられていた。

せっかく素敵な役者さんを呼んでいるのに、演じていてそのような思いを強いる脚本って…どうなのよ。

井浦さんにプライベートで「ヴィラン(悪役)の関白

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「暮しの手帖」を読む~戦争を語り継ぐ心理

「暮しの手帖」を読む~戦争を語り継ぐ心理


「いつものほうがいい」1968年夏。
仕事を終えて帰宅した父が勤務先の購買部から持ち帰った「暮しの手帖」を、母に渡した。

当時36歳だった母は雑誌を一瞥して

「おもしろくない。いつものほうがいい。」

と言い、嫌そうに顔をしかめた。

☆☆☆

「暮しの手帖」第96号(第1世紀)は、一冊丸ごと「戦争中の暮しの記録」だった。料理レシピも商品テストも、ルポルタージュも随筆も、暮らしのヒントも連載

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【光る君へ】第16回「華の影」

【光る君へ】第16回「華の影」


1030年ごしに窘められる今回は「光る君へ」関連番組から紹介する。

まずは2024年4月20日放送「土スタ」。
藤原道隆役の井浦新さんがゲストで登場。

お話に入る前に流れた、番組スタッフが編集したダイジェスト映像「藤原道隆の歩み」は、主役がほとんど登場しないにもかかわらず見ごたえ十分。さすがは大河ドラマである。

井浦さんは「歩くマイナスイオン」と形容されていた。ひと目見るだけで穏やかで優し

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続・「暮しの手帖」を読む

続・「暮しの手帖」を読む


懐かしい寄稿者初期の「暮しの手帖」は、当時の各界著名人による随筆が人気コーナーだった。文壇で活躍する作家・評論家のみならず政治家や科学研究者、メディアで活躍していた人たちも寄稿している。現在も元気にご活躍中の、あるエッセイストさんのお名前の由来も「暮しの手帖」で知ることができる。

1965年発行の第80号から、グラビアページに続く本文用紙ページの頭から15ページを「雑記帳」として、読者からの寄

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