Lilaclavender

一風変わった交通手段を使う国内旅行、およびNHKドラマについて綴っていきます。

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マガジン

  • NHK大河ドラマ『光る君へ』/『枕草子』

    2024年放送NHK大河ドラマ『光る君へ』および清少納言『枕草子』について取り上げた記事をまとめています。

最近の記事

温泉とほうとう

早くも真夏日が到来している昨今、いささか季節はずれのタイトルをつけてしまったが。 『枕草子』のお話である。 『枕草子』お勧めの名湯?『枕草子』の一部の本には、以下の記述が掲載されている。 現在一般の書店に流通している『枕草子』の本に、この段はない。『枕草子』には”三巻本”と”能因本”という、異なる系統の写本があるがゆえの現象である。 平安時代にはもちろん印刷やコピーの技術はない。書かれた作品は人力で筆写して広めていくより他なかった。誤写や脱落などの”うっかりミス”は当然

    • 【光る君へ】第19回「放たれた矢」

      はじめにお礼ですSNSを見ていたら、「光る君へ」第17回・第18回についての本noteレビュー記事を紹介している方がいらっしゃった。過分にも、好意的なご感想をいただけていた。 no nameさん、この場を借りてお礼申し上げます。お目に留めてくださりありがとうございました。 平安時代や文学作品についてのわが知識は、はるか遠い昔の受験生時代のままで止まっています。今回大河ドラマで平安時代中期を取り上げると聞いて『枕草子』および関連作品に目を通してみたら存外面白くて深掘りしは

      • 50週

        この記事を公開したら 「50週連続投稿!」 というメッセージがパソコン画面に表示されるはずである。 50週、すなわち1年近く毎週何かしら書き、noteに載せ続けたことになる。最初はフェリー旅行記や下手の横好き写真、うどん店レポートなどを載せていたが、そろそろネタ切れかというところで大河ドラマ「光る君へ」が始まり、その感想で延命できた。最初は展開に夢中、やがてちょっとした違和感を持ち、それが次第に広がっていく過程まで記録してしまった。 テレビ番組や読書で得られた発見や思

        • 【光る君へ】第18回「岐路」

          今回も簡単に済ませたい。 大石先生や制作統括さんは、道隆一家(中関白家)に何か個人的な恨みでもあるのだろうか?道長を少しでも良く描くために負のバイアスをかけなければならないという固定観念にとらわれすぎていないだろうか?道隆も道長も、当時の貴族の常識に則って政を進めていたはずである。 今回描くべきだったできごと伊周の「皇子を産め」暴言ハラスメントは正視に耐えなかった。前回の道隆は病身で余命いくばくもなく、錯乱状態ということにしていたからまだしも、今回はシャレにさえならない。

        温泉とほうとう

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        • NHK大河ドラマ『光る君へ』/『枕草子』
          17本

        記事

          高齢者と呼ばれたい

          東京から東名高速を西へ行くバスに乗車するとき。 都心を離れて40分ぐらい過ぎたところで 「70歳代を高齢者と呼ばない都市 ××市」 と大書してある横断幕が張られた陸橋が前方に見えてくる。 旅心が一瞬曇る。 …余計なお世話。 バスが陸橋をくぐると、次の風景が苦い思いをすぐ洗い流してくれるから、まだ救いがある。 この市の住民でなくてよかった。 いつのころからだろう。 70歳、80歳… 年老いても労働を続ける人がことさらにもてはやされ、唯一正しい行いであるかのように喧

          高齢者と呼ばれたい

          【枕草子】再び、香炉峰の雪

          ドラマで作ってくれないのならば「光る君へ」では、『枕草子』のエピソードをあまり取り上げてくれないみたい。宣孝御嶽詣での時は期待したが、あれはまひろにも関わる話だから採用したということなのか。そもそも藤原道隆一家の描き方が雑過ぎ、下げ過ぎと感じる。貴族の傲岸ぶりは道長政権になってからもそう変わらないと思うが…。 嘆いていても詮なきこと。ドラマで作ってくれないのならばnoteで書こう。スキの数など気にせずに。 これまでもいくつか取り上げてきたが、不定期にでも『枕草子』にある

          【枕草子】再び、香炉峰の雪

          【光る君へ】第17回「うつろい」

          長文を書いて、消した。 思うところはいろいろとあるのだが。 かなふみをひとつ作った。 まずは楽しもう。 「ステラnet」のサイトで定子さまが、「もし(井浦)新さんがあんなふうに責めてきたら、自分の記憶を改ざんしそうですね。」と仰せになられていた。 せっかく素敵な役者さんを呼んでいるのに、演じていてそのような思いを強いる脚本って…どうなのよ。 井浦さんにプライベートで「ヴィラン(悪役)の関白でいなければならないゆえ」と断りを入れさせる脚本ってどうなのよ。 定子さまを、

          【光る君へ】第17回「うつろい」

          「暮しの手帖」を読む~戦争を語り継ぐ心理

          「いつものほうがいい」1968年夏。 仕事を終えて帰宅した父が勤務先の購買部から持ち帰った「暮しの手帖」を、母に渡した。 当時36歳だった母は雑誌を一瞥して 「おもしろくない。いつものほうがいい。」 と言い、嫌そうに顔をしかめた。 ☆☆☆ 「暮しの手帖」第96号(第1世紀)は、一冊丸ごと「戦争中の暮しの記録」だった。料理レシピも商品テストも、ルポルタージュも随筆も、暮らしのヒントも連載記事も投稿欄も、全てが「1回休み」とされた。 今思い返せば、この時の私はまだ小

          「暮しの手帖」を読む~戦争を語り継ぐ心理

          【光る君へ】第16回「華の影」

          1030年ごしに窘められる今回は「光る君へ」関連番組から紹介する。 まずは2024年4月20日放送「土スタ」。 藤原道隆役の井浦新さんがゲストで登場。 お話に入る前に流れた、番組スタッフが編集したダイジェスト映像「藤原道隆の歩み」は、主役がほとんど登場しないにもかかわらず見ごたえ十分。さすがは大河ドラマである。 井浦さんは「歩くマイナスイオン」と形容されていた。ひと目見るだけで穏やかで優しく、周囲の人をなごませる大らかなお人柄がうかがえた。『枕草子』に登場する「関白殿

          【光る君へ】第16回「華の影」

          続・「暮しの手帖」を読む

          懐かしい寄稿者初期の「暮しの手帖」は、当時の各界著名人による随筆が人気コーナーだった。文壇で活躍する作家・評論家のみならず政治家や科学研究者、メディアで活躍していた人たちも寄稿している。現在も元気にご活躍中の、あるエッセイストさんのお名前の由来も「暮しの手帖」で知ることができる。 1965年発行の第80号から、グラビアページに続く本文用紙ページの頭から15ページを「雑記帳」として、読者からの寄稿にあてた。最初は編集部員のご家族や花森編集長と親しい人に書いてもらい、合間に外

          続・「暮しの手帖」を読む

          【光る君へ】第15回「おごれる者たち」

          次回予告がトレンド入り!「光る君へ」第15回。(2024年4月14日放送) 今回は『枕草子』にわかファンにとって嬉しい内容だった。大好きなごちそうをたくさんいただいた気分。「腹をなでる女王」は出なかったが、よい意味でいっぱいになったお腹をなでたくなる。麗しい俳優さんが大勢登場、画面を美しく彩った。 ききょうの中宮定子拝謁と女房名「清少納言」下賜場面は、SNSでたくさんの人がイラストに描き、道長まひろ逢瀬以来の大盛り上がりとなった。 さらに、次回予告であの 「香炉峰の雪

          【光る君へ】第15回「おごれる者たち」

          「暮しの手帖」を読む(1957-1969)

          私の”幼なじみ”幼い頃、「暮しの手帖」を熟読する子供だった。 文章はほとんどわからなかったが、見出しの大きなアルファベットや数字、台所の流しやコンロの模型の写真、ビタミンの種類を紹介する妖精たちの絵、カラフルな表紙などを眺めることが大好きだった。飽きなかった。 母親は顔をしかめて 「友だちと遊んできなさい」 と叱ったが、同世代の子供は正直怖かったし、どのようにふるまえばよいのか、皆目見当がつかなかった。子供たちの流行り物にも関心が向かなかった。遊びに行かされるたび「早く夕

          「暮しの手帖」を読む(1957-1969)

          【光る君へ】第14回「星落ちてなお」

          赤い月、赤い橋2024年4月7日放送「光る君へ」第14回を見た。 前半は藤原兼家の死を描く。 時に狡猾で憎まれ役でもあった兼家だが、強いリーダーシップと政治力で物語の序盤を牽引した。 兼家は息子たちを呼び、道隆を後継者にすると告げ、「今より父はないものと思って生きよ」と命じる。 座る時は何とか自力で動けたが、話し終えて立ち上がろうとするとよろけ、従者の肩を借りて、歌いながら去る。現代ならば車いすを使うところだろう。 剃髪して床に臥す兼家は、妾の寧子と道綱に看取られる。

          【光る君へ】第14回「星落ちてなお」

          【枕草子】いつもの浦

          『枕草子』謎の一首しほの満ついつもの浦のいつもいつも 君をばふかく思ふはやわが 『枕草子』21段(※)「清涼殿の丑寅の隅の」に登場する和歌である。 (※)段数は角川ソフィア文庫2024年3月刊 河添房江・津島知明訳注本による 「潮が満ちるいつもの浦のように、いつもいつもあなたを深く想っているのは私です」 という意味になるだろうか。角川ソフィア文庫1979年8月刊 石田穰二訳注本では「恋歌」とされている。 しかしこの歌は、作者も出典も明らかでない。数百年にわたり無数

          【枕草子】いつもの浦

          【光る君へ】第13回「進むべき道」

          アイドル登場「光る君へ」第13回(2024年3月31日放送)を見た。 前回、第12回を以て主人公まひろと道長の恋模様、および藤原兼家の権力掌握への道筋の描写が完了。舞台は4年後の990年に移る。 冒頭から成年役(今回は14歳)の藤原定子が登場。 定子さまについてはずいぶん心配していたが、明るく優しく愛らしく、華のある人で安堵した。 というか、出た途端場の空気感が清々しく一新された。第9回で退場した直秀以来、久しぶりに現れた”アイドル”である。ここ数回、まひろと道長の関

          【光る君へ】第13回「進むべき道」

          伊那高遠 天下第一の桜

          2023年春、「青春18きっぷ」を買った。 今回は、関東甲信地方でこれまで出向く機会のなかったところへの日帰り散歩を5回しようと思い立った。 そのうち、長野県伊那市高遠に出かけた日について記す。 唱歌「たきび」かつて私は東海道本線東京発静岡行き、常磐線上野発四ツ倉行きなどの中距離普通列車によく乗車していた。1本である程度まとまった距離を移動できて、都心から少しずつ離れていく車窓風景が映画のように鑑賞できる。それをボーッと眺める時に、至上の価値を認める。この乗車目的に対して青

          伊那高遠 天下第一の桜