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NHK大河ドラマ『光る君へ』/『枕草子』

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2024年放送NHK大河ドラマ『光る君へ』および清少納言『枕草子』について取り上げた記事をまとめています。
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記事一覧

【光る君へ】第23回「雪の舞うころ」

【光る君へ】第23回「雪の舞うころ」


座長が映ると今回は久しぶりに、そうイライラせず見られた。制作陣が故意に貶めて描く方針のキャラクターが登場しなかったためだろう。道長の言動もようやくブラック化してきたし。やはり道長には父親以上の「ワル」になってもらわなければ。

越前の松原客館や国府における、宋人や地元の役人たちの思惑の交錯も、それなりに見ごたえがあった。昔の大河ドラマならばメインパート扱いになるところだろう。異文化との出会いや、

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短いほうの時間

短いほうの時間

春はあけぼの。
夏は夜。
秋は夕暮。
冬はつとめて。

『枕草子』冒頭の、あまりにも有名な言葉である。
有名になりすぎて、『枕草子』はそれだけかと思っている人は、数ヶ月前までの私自身も含めて、少なくないだろう。

改めてこれらの言葉を見ると、各々の季節において「より短いほうの時間帯」に風趣を感じる心が伝わる。長いのは好きでないのだ、いろいろな意味で。

あけぼの、すなわち夜明けの薄明は忍び足のよう

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【光る君へ】第21回「旅立ち」

【光る君へ】第21回「旅立ち」


感涙にむせびたかったけれどウイカさんが「現時点での一生のお願いです。」と勧めていた「光る君へ」第21回。

『枕草子』起筆が描かれた。
本来ならば「感慨無量」と涙するところだが、なんでまひろ発のアイデアにするのかな~。まずそこでしらけてしまう。

作劇上やむを得ず、為時宅で油を売っている場面から発展させたいのならば、せめて清少納言が自ら思いつく筋書きにしてほしかった。

たとえば…

中宮が懐妊

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失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(2)

失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(2)


『枕草子』の読者は多い「光る君へ」制作陣の大きな誤算は、『源氏物語』のみを特別視して、『枕草子』を一段下げて位置づける姿勢を取ったことにも認められる。

NHK出版で発行された「大河ドラマガイド 光る君へ 前編」で大石静先生は次のように述べている。

大石先生自身はそのような感触を抱いても、いざ脚本を執筆する段となったら大切な仕事だから、大人の対応をなさるだろう、あだやおろそかには扱わないだろう

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失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(1)

失速する光~「光る君へ」第20回までの総評(1)


はじめに&おことわりNHK大河ドラマ「光る君へ」は、2024年5月19日に第20回が放送された。次回の終盤からしばらく、舞台を越前に移す。物語は大きな区切りを迎えた。

そこで、本稿では第20回までを「第一次平安京編」と位置づけて、総評的な意見を書いてみたい。

…と意気込みつつ、大枠を設定した下書きを作っていたが、「こんなはずではなかった」と、正直ぐったり疲れている。ドラマ放送を機に『枕草子』

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温泉とほうとう

温泉とほうとう

早くも真夏日が到来している昨今、いささか季節はずれのタイトルをつけてしまったが。
『枕草子』のお話である。

『枕草子』お勧めの名湯?『枕草子』の一部の本には、以下の記述が掲載されている。

現在一般の書店に流通している『枕草子』の本に、この段はない。『枕草子』には”三巻本”と”能因本”という、異なる系統の写本があるがゆえの現象である。

平安時代にはもちろん印刷やコピーの技術はない。書かれた作品

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【光る君へ】第19回「放たれた矢」

【光る君へ】第19回「放たれた矢」


はじめにお礼ですSNSを見ていたら、「光る君へ」第17回・第18回についての本noteレビュー記事を紹介している方がいらっしゃった。過分にも、好意的なご感想をいただけていた。

no nameさん、この場を借りてお礼申し上げます。お目に留めてくださりありがとうございました。

平安時代や文学作品についてのわが知識は、はるか遠い昔の受験生時代のままで止まっています。今回大河ドラマで平安時代中期を取

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【光る君へ】第18回「岐路」

【光る君へ】第18回「岐路」

今回も簡単に済ませたい。

大石先生や制作統括さんは、道隆一家(中関白家)に何か個人的な恨みでもあるのだろうか?道長を少しでも良く描くために負のバイアスをかけなければならないという固定観念にとらわれすぎていないだろうか?道隆も道長も、当時の貴族の常識に則って政を進めていたはずである。

今回描くべきだったできごと伊周の「皇子を産め」暴言ハラスメントは正視に耐えなかった。前回の道隆は病身で余命いくば

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【枕草子】再び、香炉峰の雪

【枕草子】再び、香炉峰の雪


ドラマで作ってくれないのならば「光る君へ」では、『枕草子』のエピソードをあまり取り上げてくれないみたい。宣孝御嶽詣での時は期待したが、あれはまひろにも関わる話だから採用したということなのか。そもそも藤原道隆一家の描き方が雑過ぎ、下げ過ぎと感じる。貴族の傲岸ぶりは道長政権になってからもそう変わらないと思うが…。

嘆いていても詮なきこと。ドラマで作ってくれないのならばnoteで書こう。スキの数など

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【光る君へ】第17回「うつろい」

【光る君へ】第17回「うつろい」

長文を書いて、消した。
思うところはいろいろとあるのだが。

かなふみをひとつ作った。
まずは楽しもう。

「ステラnet」のサイトで定子さまが、「もし(井浦)新さんがあんなふうに責めてきたら、自分の記憶を改ざんしそうですね。」と仰せになられていた。

せっかく素敵な役者さんを呼んでいるのに、演じていてそのような思いを強いる脚本って…どうなのよ。

井浦さんにプライベートで「ヴィラン(悪役)の関白

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【光る君へ】第16回「華の影」

【光る君へ】第16回「華の影」


1030年ごしに窘められる今回は「光る君へ」関連番組から紹介する。

まずは2024年4月20日放送「土スタ」。
藤原道隆役の井浦新さんがゲストで登場。

お話に入る前に流れた、番組スタッフが編集したダイジェスト映像「藤原道隆の歩み」は、主役がほとんど登場しないにもかかわらず見ごたえ十分。さすがは大河ドラマである。

井浦さんは「歩くマイナスイオン」と形容されていた。ひと目見るだけで穏やかで優し

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【光る君へ】第15回「おごれる者たち」

【光る君へ】第15回「おごれる者たち」


次回予告がトレンド入り!「光る君へ」第15回。(2024年4月14日放送)
今回は『枕草子』にわかファンにとって嬉しい内容だった。大好きなごちそうをたくさんいただいた気分。「腹をなでる女王」は出なかったが、よい意味でいっぱいになったお腹をなでたくなる。麗しい俳優さんが大勢登場、画面を美しく彩った。

ききょうの中宮定子拝謁と女房名「清少納言」下賜場面は、SNSでたくさんの人がイラストに描き、道長

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【光る君へ】第14回「星落ちてなお」

【光る君へ】第14回「星落ちてなお」


赤い月、赤い橋2024年4月7日放送「光る君へ」第14回を見た。
前半は藤原兼家の死を描く。
時に狡猾で憎まれ役でもあった兼家だが、強いリーダーシップと政治力で物語の序盤を牽引した。

兼家は息子たちを呼び、道隆を後継者にすると告げ、「今より父はないものと思って生きよ」と命じる。
座る時は何とか自力で動けたが、話し終えて立ち上がろうとするとよろけ、従者の肩を借りて、歌いながら去る。現代ならば車い

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【枕草子】いつもの浦

【枕草子】いつもの浦


『枕草子』謎の一首しほの満ついつもの浦のいつもいつも
君をばふかく思ふはやわが

『枕草子』21段(※)「清涼殿の丑寅の隅の」に登場する和歌である。

(※)段数は角川ソフィア文庫2024年3月刊 河添房江・津島知明訳注本による

「潮が満ちるいつもの浦のように、いつもいつもあなたを深く想っているのは私です」

という意味になるだろうか。角川ソフィア文庫1979年8月刊 石田穰二訳注本では「恋歌

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