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SHIFT INNOVATION #45 「アビリティ3」(情報力編)

 新たなアイデアを生み出すための「SHIFT INNOVATION」の事例を紹介します。

 SHIFT INNOVATION #42 「クリティカル思考3」(能力編)において、「枠外」のアイデアを導出するために必要となる能力として、「情報力」「批判力」「抽象力」「連想力」「収束力」があることを説明しました。

 各々の能力に関して、有効な情報を想起する上で、多様なケースを抽出するための「情報力」、今までにはない情報を想起する上で、固定観念を排除するための「批判力」、異なる情報を想起する上で、事象を抽象化するための「抽象力」、枠外のアイデアへ導く上で、関連性の低い事象へ移行するための「連想力」、そして、対象となる事象と新たに抽出した事象を関連付けるための「収束力」が必要となります。

 今回は、これの能力の中でも、「情報力」の詳細な内容に関して、新たに導出した「ブレインスタット」の事例に基づき説明することとします。

 新たに導出した「ブレインスタッド」とは、「快適な生活環境を作る完全自動化のサーモスタット」というコンセプトに基づき、導出したアイデアですが、「快適な生活環境にすることにより、人間の季節感が無くなってしまう」という不便益に対して、いつも季節を感じることができるよう、季節に応じた体温調整をすることができる、「脳へつながる温度調整機能に刺激を与えることにより、季節に応じた体温調整することができるサーモスタット(ブレインスタット)」というアイデアとなります。 ※妄想です。

 なお、説明する内容に関しては、思考する過程において、抽象化を意識的に試みたものであり、無意識的に思考・知覚した場合とは異なる場合があること、また、科学的根拠に基づいた内容ではないことを前提にお読みください。

【「ブレインスタット」の思考プロセス】 ※参考

コンセプト設定
 「快適な生活環境を作る完全自動化のサーモスタット」
アブダクション事象(固定観念)
「快適な生活環境にすることにより、人間の季節感が無くなってしまう」

(反転事例)
問題提起(抽象化) ※反転
「快適にすることにより、人間の感覚が良くなる場合はあるのか」
アブダクション事例
「音源をハイレゾにすることにより、綺麗な音を聞くことができる」 ※ハイレゾを想起
アブダクション事例の抽象化
「より多くの情報を入手することにより、感性を高めることができる」
問題提起
「本当により多くの情報を入手することにより、感性を高めることができるのか」

(反転事例)
アブダクション事象 ※反転
「より少ない情報により、感性を高めることができる」
アブダクション事象の抽象化
「不便ではあるが、感性が高まる」
アブダクション事例
「昔のラジオは選局するとき、ダイヤルを微妙に調整する必要があった」 ※ラジオを想起
アブダクション事例の抽象化
「調整するためには、指の微妙な感覚が必要となる」
アブダクション事例
「天ぷらを作るとき、素材や気温により、あげる時間が異なるので、微妙な感覚が必要となる」 ※天ぷらを想起
問題提起
「本当は微妙な感覚により設定を変えるのは難しいのではないか」

(反転事例)
アブダクション事象
「微妙な感覚により設定を変えるのは難しいので、温度を一定にする」
アブダクション事象の抽象化
「調整せず、温度を一定にする」
アブダクション事例
「コンピューターが高温にならないよう、いつも低度に設定している」 ※コンピューターを想起
アブダクション事例の抽象化
「コンピューターは頭脳であり、頭脳は冷やす必要がある」 ※頭脳(コンピューター)を想起
アブダクション仮説
「脳に温度が低いと認識させることによって、暑い場所にいても低温に調整することができる」
アイデア
「脳へつながる温度調整機能(神経)に刺激を与えることにより、季節に応じた体温調整することができるサーモスタット」(「ブレインスタット」) ※妄想です

「プレインスタット」は、アイデアを導出する上で、思考プロセスを確認したものであり、実現可能性を問うたものではありません。

【「ブレインスタット」の事例における情報力】

 「ブレインスタット」の事例の場合、「サーモスタット」から「頭脳」へ転換しましたが、どのような情報に基づき連想したのでしょうか。

 そのプロセスとは、「サーモスタット」から「ハイレゾ」「ラジオ」「天ぷら」「コンピューター」「頭脳」と連想することにより、新たなアイデアである「ブレインスタット」を導出しました。

 「サーモスタット」から「ハイレゾ」への転換に関して、「サーモスタットから「快適にすることにより、人間の感覚が良くなる」という抽象化した機能を抽出しました。

 そして、抽象化した「感覚が良くなる」に対して、どのような状況で感覚が良くなるのか思考したところ、最近、ウェブサイトでソニーのハイレゾウォークマンを調べていたもあり、ハイレゾ音源により感性が研ぎ澄まされることを知覚したことから、「サーモスタット」から「ハイレゾ」を想起したものと推察されます。

 「ハイレゾ」から「ラジオ」への転換に関して、「ハイレゾ」から抽出した「より多くの情報を入手することにより、感性を高めることができる」という抽象化した機能を、問題提起した上で反転させたことにより、「不便ではあるが、感性が高まる」という抽象化した機能を抽出しました。

 そして、抽象化した「不便ではあるが、感性が高まる」に対して、相反する特異な経験はないか思考したところ、昔のラジオは選局するとき、ダイヤルを微妙に調整する必要があったことを知覚したことから、「ハイレゾ」から「ラジオ」を想起したものと推察されます。

 「ラジオ」から「天ぷら」への転換に関して、「ラジオ」から「指の微妙な感覚が必要となる」という抽象化した機能を抽出しました。

 そして、抽象化した「指の微妙な感覚が必要となる」に対して、過去における特異な経験はないか思考したところ、天ぷらを作るとき、素材や気温により、あげる時間が異なるので、微妙な感覚が必要となるということを知覚したことから、「ラジオ」から「天ぷら」を想起したものと推察されます。

 「天ぷら」から「コンピューター」への転換に関して、「天ぷら」から抽出した「微妙な感覚により設定を変える」という抽象化した機能を、問題提起した上で反転させたことにより、「調整せず、温度を一定にする」という抽象化した機能を抽出しました。

 そして、抽象化した「調整せず、温度を一定にする」に対して、私自身が冷え症ということもあり、職場のコンピューター室はいつも低温に設定しているということを知覚したことから、「天ぷら」から「コンピューター」を想起したものと推察されます。

 「コンピューター」から「頭脳」への転換に関して、「コンピューター」から「コンピューターは頭脳である」と抽象化(擬人化)しました。

 そして、「コンピューターは頭脳である」について思考していたところ、頭脳であるコンピューターと同様に、人間の頭脳も冷やす必要があるということを知覚したことから、「コンピューター」から「頭脳」を想起したものと推察されます。

【無意識的想起における「時間的要因」】

 通常、事象を抽出しようとした場合、過去に経験した事象の中でも、時間的に短い時期に経験した事象であるほど、優先して想起することとなると考えます。

 例えば、「ブレインスタット」の事例における新たなアイデアとして、「音源をハイレゾにすることにより、綺麗な音を聞くことができる」を抽象化した「より多くの情報を入手することにより、感性を高めることができる」に関して、反転による具象化した事例を抽出しようとしました。

 それと同時期に、クレジットカードを契約する会社を選定していたことから、「インターネットによる情報過多により、どの『クレジットカード』を選択すれば良いのか迷ってしまう」という事例を抽出しました。

 そして、具象化した事例における「クレジットカード」の目的を「現金を持ち歩かなくてよい」とした場合、手ぶら(フリー)の「クレジットカード」とサーモスタットの「温度」を融合させることにより、「ウエアラブルデバイスで体温を計り、個人の体温(一人暮らしの場合)から最適な室内温度を設定できるサーモスタット」(「サーモフリー」)というアイデアを導出しました。 ※妄想です。

 このように、事象を抽出しようとした場合、最近経験した類似する事象であるなど、事象を抽出しようとした時期に対して、時間的に短い時期に経験をした事象を優先して想起する可能性が高いと考えます。

【「時間的要因」と「意味的要因」による事象の想起】

 「ブレインスタット」の事例の範囲において、想起した事象は、「時間的要因」と「意味的要因」に分類することができ、時間的要因に関しては、「最近経験した事象」「特異な経験をした事象」「恒常的に経験している事象」があり、意味的要因に関しては、「関連性の強い事象」があります。

 時間的要因に関しては、現在形の「最近経験した事象」、過去形の「特異な経験をした事象」、現在進行形の「恒常的に経験している事象」があり、「恒常的に経験している事象」や「最近経験した事象」は、過去に経験した「特異な経験をした事象」より、事象が発生した時期と想起した時期が時間的に短いことから、想起される可能性が高いのではないかと考えます。

 一方で、意味的要因に関しては、事象に対して、関連性が強いほど、想起しやすいものの、時間的要因における各事象との関連性の強さとも関係することとなり、例えば、最近経験した事象と過去に特異な経験をした事象があった場合、過去に特異な経験をした事象の方が、事象に対して関係性が強い場合は、最近経験した事象よりも過去に特異な経験をした事象の方が想起される場合があると考えます。

 例えば、「ブレインスタット」の事例の場合、最近経験した事象である「ハイレゾ」や恒常的に経験している事象である「コンピューター室」を想起した箇所に関しては、コンテクストを抽象化した時点において、直ぐに「ハイレゾウォークマン」や「冷え症」というテクストを知覚したことにより、「ハイレゾ」や「コンピューター室」を想起しました。

 一方で、「ラジオ」や「天ぷら」を想起した箇所に関しては、コンテクストを抽象化した時点において、抽象化したコンテクストに対して、「不便ではあるが、感性が高まる」という相反する特異な経験をした事象はないか、「天ぷらをあげるとき、素材や気温により、あげる時間が異なる」というインパクトがある事象はないか、過去に経験した事象を探索(思考)したことにより、「ラジオ」や「天ぷら」を想起しました。

 これらのように時間的要因において、低い順位となる事象の場合であっても、経験した事象を探索する中で、過去に特異な経験をした事象やインパクトがある経験をした事象である場合、優先して想起される可能性があると考えます。

(時間的要因)
最近経験した事象
「ハイレゾ」 ハイレゾウォークマンを調べていたことにより想起する
特異な経験をした事象
「ラジオ」 相反する特異な経験をした事象を思考したことにより想起する
「天ぷら」 インパクトのある経験をした事象を思考したことにより想起する
恒常的に経験している事象
「コンピューター室」 冷え症であることにより想起する
(意味的要因)
関連性の強い事象
「頭脳」 コンピューターを疑似化したことにより想起する

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