SHIFT INNOVATION #59 「ワークショップ(KYOTO Design Lab編5)」
SHIFT INNOVATION #58において、「自然発送」「強制発送」に対して、「反転発想」(「逆転発想」「表裏発想」「背反発想」)や「シフトイノベーション」の方法論による「半強制発想」「半自然発想」の方が、固定観念を排除することによって、今までとは異なる視点により事象を捉える上で、有効性が高いことを説明しました。※個人の感想です。
また、半自然発想に関する思考プロセスを活用することに関しては、今までとは異なる視点により事象を捉える仕組みを理解する上で、有効であると考えられる一方で、半自然発想に関する思考プロセスに基づき、事象をそのまま適用し思考した場合、今までとは異なる視点により事象を捉えることにより、新たなアイデアを必ずしも導出することができるものではないことを説明しました。
それでは、今回、「シフトイノベーション」の方法論において、今までとは異なる視点により事象を捉えたことにより、導出した様々なアイデアに関して、一定の思考プロセスを経て導出されていますが、どうして異なる課題であるにもかかわらず、一定の思考プロセスを経ているのか、そして、どうすれば一定の思考プロセスにより新たなアイデアが導出されるのかついて、認知心理学的側面および脳科学的側面より説明することとします。
【脳科学的側面および認知心理学的側面による思考プロセス】
SHIFT INNOVATION #46 「レコグニション1」において、認知心理学的側面に基づき、「洞察問題解決」と「シフトイノベーション」の方法論に関する関係性および具体的な方法について説明しました。
また、SHIFT INNOVATION #47 「レコグニション2」において、脳科学的側面に基づき、「トップダウン情報処理機能」と「イノベーション」の方法論に関する関係性および具体的な方法につて説明しました。
そこで、「洞察問題解決」「トップダウン情報処理機能」と「シフトイノベーション」の方法論との関係性を踏まえた上で、今までとは異なる視点により事象を捉えるための思考プロセスについて説明することとします。
【「トップダウン情報処理」に基づく新たなアイデア】
それでは、脳科学的側面より、脳機能における「トップダウン情報処理」に関して、「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」「恒常的な特徴を抽象化する」「特定の事象と過去に生じた事象を比較する」という原理に基づき事象を処理することとなります。
これらの原則のうち、「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」の機能により、今までとは異なる視点により事象を捉えることができず、今までと同じ視点により事象を捉えることとなります。
そして、「恒常的な特徴を抽象化する」「特定の事象と過去に生じた事象を比較する」の機能により、今までと同じ視点により捉えた事象を抽象化し、様々な事象を比較することにより、捉えた事象に対して適切な事例を適用することによって、新たなアイデアを導出することとなります。
しかし、導出した新たなアイデアは、今までと同じ視点により捉えた事象に基づき導出したアイデアであることから、今までとは大きく異なるアイデアとはならないこととなります。
【「洞察問題解決」におけるインパスの発生の重要性】
それでは、脳機能における「トップダウン情報処理」に関して、今までとは異なる視点により事象を捉えるためには、「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」という機能を抑制する必要があり、そして、それらの機能を抑制するためには、「洞察問題解決」の「インパスの発生」が重要となります。
はじめに、「洞察問題解決」においては、「インパスの発生」「心的制約の緩和」「問題空間の切り替え」「類推の利用」というプロセスにより、問題を解決することができることとなります。
これは、インパスが発生した場合、心的制約が生じることとなり、その心的制約を緩和することができた場合、問題空間を切り替えることができます。そして、切り替えた問題空間において、類似する事例を適用するなど、類推を利用することによって、問題を解決することができることとなります。
この「洞察問題解決」は、「シフトイノベーション」の方法論における思考プロセスと類似しており、「シフトイノベーション」の方法論においては、「解決困難なコンセプト設定」からはじまり、「究極的状況の想起」「固定観念の知覚」「本質探究の問いの発信」「固定観念の排除」「反転事例の適用」「適用事例の構造化」「関連事象へ収束」「新機能の適用」「新アイデアの導出」となります。
そして、「シフトイノベーション」の方法論においては、「どうすればインパスが発生させることができるのか」「どうすれば心的制約を緩和させることができるのか」「どうすれば問題空間を切り替えることができるのか」「どうすれば類推を利用することができるのか」ということが方法論の中に組み込まれています。
そこで、「シフトイノベーション」の方法論と「洞察問題解決」のおける問題解決の方法との関連性として、インパスを発生させるための「解決困難なコンセプト設定」、心的制約を緩和させるための「究極的状況の想起」、問題空間を切り替えるための「本質探究の問いの発信」、類推を利用するための「適用事例の構造化」が関連しており、シフトイノベーションの方法論が起点となり、「洞察問題解決」の課題を解決へ導くことができます。
【「シフトイノベーション」「洞察問題解決」「トップダウン情報処理」の関係性】
それでは、今までとは異なる視点により事象を捉える上で、「シフトイノベーション」の方法論における解決困難なコンセプトを設定するにより、困難な課題を解決してようと、極限まで思考を繰り返すことによって、究極的状況が想起されることから、「洞察問題解決」におけるインパスが発生することとなります。
そして、究極的状況が想起されたことにより、限界であることを知覚する、つまりは、固定観念を知覚することによって、その固定観念は事実であるのか、本質探求の問いが発せられることから、「洞察問題解決」における心的制約が緩和されることとなります。
そして、本質探究の問いを発することにより、固定観念に対して反転した事象を想起することによって、固定観念が排除されることから、「洞察問題解決」における問題空間が切り替えられることとなります。
これらの結果、問題空間が切り替えられる、つまりは、「トップダウン情報処理」における「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」という機能が排除されることにより、今まで無視されていた事象が無視されなくなることから、今までとは異なる視点により事象を捉えることができることとなります。
これらのように、「シフトイノベーション」の方法論における解決困難なコンセプトを設定することにより、認知心理学的側面および脳科学的側面における事象が影響または排除されるなど、自然に「究極的状況の想起」「固定観念の知覚」「本質探究の問いの発信」「固定観念の排除」という思考プロセスを経ることから、異なる課題であるにもかかわらず、一定の思考プロセスを経ることになると考えます。