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【弱ネタバレ有】映画レビュー 『PLAN75』

Amazon Primeでずっと気になっていた映画『PLAN 75』を見ました。

高齢者が増え、若者による高齢者殺害などの社会問題が多発した社会で、75歳を超えた老人が自身で安楽死を選べる制度:「PLAN 75」が国会で可決されたというディストピア化した日本を描いた映画です。なお「PLAN 75」を選択すると、

・10万円支給
・安楽死当日までのケア(コールセンターとの時間制限付きの会話など)
・死後の遺品整理もろもろ

などの特典が与えられます。また葬式についても、集団火葬・集団墓地への埋葬を選べば葬儀代はかからないため、身寄りのない高齢者(そもそもそういう方がメインの対象ですが)はこちらを選んでできるだけ最期の贅沢をして当日を迎えたい、という方も多いようです。

他にも細かな設定が結構ふんだんに盛り込まれ、役者の演技もありかなり重苦しい雰囲気が流れています。特に主人公の一人である78歳の未亡人ミチを演じる倍賞美津子の演技は素晴らしく、ところどころかなり息苦しくなるシーンがありました。

息苦しくなるのは勿論このディストピアへの共感性でしょう。自分は今36歳で今年37歳。PLAN75から考えるとちょうど今年で折り返すことになります。自分が75歳を迎える2061年には、65歳以上の高齢化率は約40%に達しており、この作品で描かれている以上のディストピアに自分は生きているかもしれません。突然の解雇、賃貸マンションは借りれない、そして遺体は永代供養など嘘っぱちで動物の遺体と同列に業者に安価に処理される---共通しているのは、直接口にこそ出しませんが、社会において老人が「お荷物」になっており、「できる限り摩擦なく」社会からご退場頂くためのロードが敷かれているということですね。


世界では、今現在10か国以上の国で医師による自殺ほう助が認められているようです。積極的安楽死を合法化する国も増えているとのこと。いずれもこの映画のように老人、ましてや五体満足な老人対象ではもちろんなく、主に脳性麻痺などの難病の患者相手ですが。世界トップクラスの高齢者大国である日本ではもちろんそれらは認められておらず、逆に恢復の見込みのない患者・特に老人をいつまで生かすのか?がたびたび議論の的になってたりもしますね。

自分も「苦しい病気や寝たきりになったりアルツハイマー型認知症になったりするくらいだったらさくっと死にたい」と思うことはありますが、では自分の両親に対してそのようなことを言えるのか?両親が仮に何らかの理由でこの映画のような安楽死を選んだとしたらどう思うか?についてはなかなか答えをするのは難しいと思います。

未来ある子供たちのために財源は使ってほしいと思いつつ、自分の両親には満足に可能な限り長生きしてほしい。だからこそ、「PLAN75」がそのままの形で現実化をすることはないと思いますが(そもそも今の日本でいうと重鎮の政治家たちで75歳超えている人が多数いるわけで可決されるはずもない笑)、この超少子高齢化の進む日本において、どのような未来が今後やってくるのか。もっと言うと自分の子供が老人になった時にはもうどうなっちゃってるのか。そんなことを暗鬱と、悶々と、考えさせられる映画でした。同じようなテーマでかの大傑作、藤子・F・不二雄氏の『定年退食』がありますが、あのラストシーンのセリフが途中からずっと脳裏を回っていました。

Amazon Primeで無料配信中ですので気になった方は是非観賞してみてください。サブスクリプションも今後どんどん発展していくだろうから、老人になってもその手の楽しみはきっと今より増えるんだろうな…とかのんきなことを一方で考えていたりもします笑。


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