点の前

食卓では不都合な真実が話されていた。
「ダンスは終わったのか?」
「私のステップを確認すればいいだけのこと。簡単なことです」
「それができないんだ」
「どうして?どいつもこいつも足元ばかり見てるじゃないですか。計算しているんでしょう?生まれてからずっと」
「俺は頭上のリズムに気を取られて、足元を見る余裕がない。生まれてからずっと」
「そんな詩的なこと言われても騙されませんよ」
大きな音は鳴らない。
小説をめくる音が得意げにこちらを見ている。
「見るな!見るんじゃない!」

私はこの出来事を絶対に保存する。
それが生きるということだからだ。
空白?余白?そんなことは考えるな。
詰め込んでしまえ。
春夏秋冬など感じることなく。