見出し画像

美術館考7 年末年始という暗黒期間

年末年始、美術館や博物館は休館になってしまうところが多いが、年末年始こそ、家族や友人と連れ立って訪れることのできるレジャー先になりえないだろうか。初詣の帰りに美術館に寄ったり、年末に芸術に触れることで一年間の厄落としを試みるなど、年末年始という節目こそ、芸術に触れて内省を深めるよい機会ではないだろうか。

静岡県立美術館は、毎年かどうかわからないが、1月2日から開館している。関東への移動中に途中下車で、1月3日に静岡県立美術館に立ち寄って富士の絵を視た年がある。来館者も多く盛況であったが、市民目線とはこういうサービスを言うのだろう。この1件をもってしても、静岡県立美術館はよい美術館だと思う。

すべての美術館が年末年始開館すべきとは思わないが、せめて県立級の美術館はどうか。年末はともかく、せめて年始は早々に開館できないか。新年を佳き芸術に触れて寿ぐ習慣が広がれば、美術館はより親しみのある場所として市民生活に浸透することと思う。

各都道府県には公立の県立級の美術館が1館以上存在する。県立美術館は、市立あるいは私立の美術館よりも大規模であることが多く、いずれも見ごたえがあると思うし、一定の地域色も楽しめる。各県立美術館には静岡県立美術館の取り組みを見習ってほしい。一方で、年末年始どころか、異常なほどの長期休館となっている県立美術館がある。滋賀県立近代美術館はリニューアル計画が破綻したまま、再開のメドが立っていないのである。それでいて県や知事に対する批判や不満が聞こえないのは、滋賀県ではその美術館の存在自体が忘れ去られつつあるのではないか。関心を持たれなくなることほど、美術館にとって無惨なことはあるまい。目立たないけれども、県の恥ずべき失政であろう。他にそのような都道府県があるのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?