運命の悪戯。最後だったあの日

44歳の時に知り合った17歳年下の彼と、7年半の時を過ごしている私だが、私にはかつて、結婚していた2人の男たちがいる。



現在、52歳。バツ2、最初の夫との間に授かった娘、アラサー長女とアラサー次女。2番目の夫の間に授かった娘、美大生の三女(戸籍上は長女)3人の娘たちには、17歳年下の彼の事は秘密だ。


今日は、別れた2人の夫の事を話そうと思う。


不思議でちょっと悲しいお話・・・


第2話 2章-1 運命の悪戯。最後だったあの日


最初の夫との別れ


最初の夫は「太郎」高校の同級生だった。背がすらっと高くて、顔が小さく整っていたので高校時代とてもモテていた。


私の周りにも太郎を好きな子がたくさんいて、なぜかいつも私は、太郎好きな女子に相談されていた。


私には別に好きな男の子がいて、太郎に興味は無かったからかもしれない。もちろん、太郎も私には興味なかったと思う。私は周りの女子たちに安全パイだと思われていたのだと思う。



そんな私たちが付き合い始めたのは、21歳になってから。付き合って2年後の23歳で結婚をした。



太郎は友達も多く、同級生という事もあって、結婚前は皆でスキーに行ったり、温泉に行ったりと楽しかった。


結婚してからも、我が家に友人たちが集まる事も多く、楽しい日々を送っていた。


翌年には長女が生まれ、2年後には次女が生まれ、表向きは幸せな家庭だった。


でも・・・私は幸せでは無かった。



長女として「結婚した女はこうあるべき」という、両親の常識に合わせるように、長男の嫁として太郎の両親や親せきを優先してきた。



子育ても大変な中、料理は、なんでも手作りし、家族の健康を考え、掃除も全て完璧にと頑張っていた。



太郎は優しかったと思う。



今思えば、もっと太郎に甘えればよかったのだと思う。でも、それが私には出来なかった。1人でなんでも頑張ってしまったのだ。


1人で頑張って1人で自爆…


結婚生活の意味が見出せず、離婚を決意した。結婚6年目の事だった。



どちらの両親も離婚は大反対だった。決定的な理由が何もないからだ。太郎もそう思ったはずだった。でも、最終的には太郎の一声で離婚する事が出来た。


子供が2人もいて、ずっと専業主婦だったあゆが、離婚したいと思っているなら、余程の事があったのかもしれない。本当の理由を言いたくないだけかもしれない。だから、あゆの希望を叶えるよ。

太郎がそういうなら…と、両家の親も納得してくれた。


太郎は人当たりがよく、みんなに好かれていた。でも、私にはそれがとても苦痛だった。


皆に優しくしなくていい。私と娘たちにだけ、気持ちを向けて欲しい。


ずっと思っていたけど、言わない私が悪かったと思う。太郎にはそんな私が、子育てばかりに集中しているように見えていたのだと思う。



随分後になって分かった事なのだが、この時、太郎は会社の女性と浮気していたのだ。恐らく太郎は、その事に私が気付いて、離婚を切り出したと思っていたのだと思う。



いやいや、私は・・・全く気付いていなかった(笑)


3人の新生活とパパ


離婚をしてしばらくは実家にいたが、頑固な父と共依存の母との暮らしは、出戻りの私には地獄だった。



実家なのに精神的に参ってしまい、体重が激減。身長163センチで体重が42キロ…体脂肪も15%ほどになり、生理も止ってしまった。



ガリガリになった私は、このままでダメだ!とアパートを借り3人だけの生活をはじめる事にした。実家を出る事で、気持ちは楽になったが、当時5歳の長女と3歳の次女を保育園に預けて働く事は辛かった。



長女が生まれてからというもの、6年間専業主婦だった私は、こんなに小さい子供たちを朝から夜まで、他人に預ける事に罪悪感を感じていたからだ。



それでも、働くしかなかった。PCの使い方も分からない私を雇ってくれる会社があっただけラッキーだ。



実は、その会社で知り合ったのが2番目の夫「次郎」彼は、9歳年上の私の上司。「踊る大捜査線」の映画が観たい!と、職場で話が盛り上がったのがキッカケで、私たちはその後、付き合う事になったのだ。



まあ、付き合う・・・と言っても、娘たちが「パパ」と月イチで会う時だけ、デートするという関係だった。



実は、次郎さん自身も母子家庭で育ち、その辺りの事情はよく理解してくれていたので気も楽だった。



そんな関係が数カ月続いたある日、次郎さんから「娘に会いたい」と申し出があった。私は躊躇したが、なんとなく会わせてみる事にした。



娘たちと会う当日、次郎さんはかなり緊張していたが、私たちが思いもしない展開になっていった。次女が驚くほど次郎さんに懐いたのだ。



次女は元々パパが大好きだった。仕事で遅く帰ってくるパパを起きて待っている!と言っては、睡魔に負けて寝てしまうくらいパパを求めていた。



太郎も次女の事は、自分に似ているから「心配」だとよく言っていた。



何が心配なの?と尋ねると「表現が不器用なところ」。確かに次女は好きなものを「好き」と言えなかったり、欲しいものを「欲しい」と言えないところがあった。



そんな自分に似た次女を、太郎は特別に思っていたと思う。



そんな次女が、次郎さんとスグにうちとけた事で、私たちは子供込みで会う事が増えた。いつも全力で遊んでくれる次郎さんの事を「パパ」と呼びはじめたのは、あっという間の事だった。



一方、長女は「ママがいつも笑っているから、パパもスキ」と言ってくれた。そして、娘たちは次郎さんの事を「パパ」と呼び、太郎の事を「太郎パパ」と呼ぶようになっていた。


そして私たちは、家族になる事を決意していた。


結婚の報告と最後の日


私は久しぶりに太郎と2人で会った。再婚の報告をする為だった。


待ち合わせのレストランで話を始めようと思ったその時、太郎の携帯がブルブル動いた。出ないのか?と尋ねると、出ないけど電源切るとまずいんだ。という。


私が、彼女いるの?と聞くと太郎は不思議そうな顔をした。そして、こう答えた。


うん…まだ続いててさ、あゆと会うって言うと、激情するから、親と会うって事にしてるんだよ。携帯電源切ると家に押しかけてくるし、ちょっと我慢して、ごめんね


私はピンときた。いまさらピンと来ても遅いのだけど、やっと分かったのだ!太郎が浮気していたのだと。そしてその相手と未だに繋がっている。


だから・・・離婚してくれたんだ・・・。


私は、元々「知っていました」というていで、1つ質問してみた。


彼女は子ども達と会うのは嫌がらないの?


すると太郎がちょっと憂鬱な表情で答えた。


それがさ~あんまりいい顔しないんだよね…子ども達を帰り、車で送っていくのも嫌がるんだよ。「あゆさんと会っちゃうでしょ!」ってさ、小さい子供だけで帰せるなんて出来ないだろって言って、納得させているけどさ…

そうなんだ…


彼女とは結婚しないの?


え?!しないよ…別れようと思っているんだ


そうなんだ・・・


とりあえず聞いたものの、彼女とどうなろうと、私には興味が無かった。それより、私が再婚することを伝えて、早く太郎を帰らせようと思った。


私、再婚するんだけど・・・いいかな?


太郎は5秒程黙っていた。かなり驚いている様子だった。そして、深呼吸をして、私にこう言った。


良いも悪いも…俺がダメって言っても再婚するんでしょ?子供たちはなんて言ってるの?どんな人?これからも子供達とは会えるの?


子ども達が再婚相手に、とてもなついている事、再婚相手はとても穏やかで、良い人だという事。


子供たちが、女の子という事もあり、次郎さんが気を使い、私の両親の家を2世帯住宅に建て替えて、一緒に住む事(子供たちの味方が多い方が良いと言ってくれた事)などを伝えた。



太郎は、真面目な顔でつぶやいた。


あゆが再婚するって思ってなかった。離婚した時、もう結婚なんてしないって顔していたし…でも、良かったね。おめでとう。


太郎は悲しげな表情だった。

私たちは、離婚はしたけれど高校の同級生だ。娘たちを介しては父と母。


太郎も、この先も連絡を取り合って、困った時は相談に乗ると言ってくれた。そして、その日はそこで別れた。



じゃあまたね。お互いに手を振りあった。



私と次郎さんは、その数か月後、結婚をして新婚旅行に娘たちと4人で、グアムに行った。娘たちは「太郎パパにお土産を買う!」と言ってはしゃいでいた。



でも、そのお土産は太郎パパの手に渡る事は無かった。あの日、再婚を伝えた日が最後になるなんて、誰も思っていなかった。


そう、太郎本人でさえ知らなかった。

つづく

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