外観が高級ホテルみたいな動物病院へ行った

犬を家族に迎え入れて数年、初めて愛犬の世話になっている動物病院を訪れた。
というのも、私自身が犬アレルギーが酷く少し触れただけで蕁麻疹が出てしまう程だったので今まで避けて通ってきたのだが、その日は愛犬の定期検診と普段付き添いをしている家族に外せない用事が重なってしまった為真夏に長袖長ズボンという地獄のようなフル装備で人生初の動物病院へ乗り込んだ。

え?ここホテル?

磨きあげられたガラスの自動ドアを抜けると高級ホテルを思わせるシックな院内。照明は暖色で少薄暗く洒落たソファや大きめの観葉植物が置いてあり、なんと診察の待ち時間を気遣った人間へのドリンクまで完備してある。
正直普段自分がちょっとした宿泊に使う安ホテルのエントランスなんかより遥かに豪華である。そしてなんと言っても待合室には既に5家族が待機しているのに動物臭どころか犬の毛1本すら落ちていない。
犬、いるのか?犬に見えるなにかじゃないのか?

実際直立仁王立ちしてこちらを見つめるサマーカットのポメラニアンらしきものがいたので多分あれは犬ではなかったと思う。お前だけは絶対に犬じゃなかった。私と目が合った瞬間「あ、やべ」という顔をして四足歩行に戻ったし。

それはさておき、初めての動物病院。見るもの全てが新鮮で自分の犬がオーニング付きベビーカー(?)に乗っているのをいい事に待合室を色々と物色してしまった。

前足をクロスさせソファーに伏せる麗しすぎるボーダーコリー。素朴だけど清潔感があり、よく見ると犬用のトランクがHERMESのとんでも男性。受付で売られている普段私が食べているものより遥かに高いドライフルーツ。衝撃が抜けずまだ言うが仁王立ちのポメラニアン。そして一匹たりとも暴れないし吠えない賢い子達。ウロウロしている私の方が犬以下なのではと思えてくるほどだった。

「住めるな、ここ。」

そんな浅い感想を抱きながら診察の順番を待っていると、先に受付を済ませていた子達が呼ばれ診察室へ通される。しかし呼ばれる名前があまりに人間より人間なのである。
例えば「さとうたつみちゃん」であったり「やまだりんたろうちゃん」であったり。
昨今の日本では子供にキラキラネームを付ける親が多いと問題視される中、今回訪れた動物病院ではここは小児科かと勘違いするレベルで人らし過ぎる名前が次々と呼ばれていくのである。育ちも良ければ名付けも良過ぎる。

新しい世界を見てしまったと自分の犬の診察を終えてぼんやりしながら家路に着いた。

私より犬の方がいい生活を送っている。 まだ見ぬ知らない世界を知ってしまった。

そして何よりショックだったのは「焦げパンみたいな色してるから今日からパンね!」と名付けてしまったばかりに人の子の様に意味とその子の生き方についてをしっかり考えられたであろう名前の中で「パンちゃん」と呼ばれてしまったわが子。マジでごめん。お前だけだったよ、パンみたいな名前で呼ばれてたの。

でも可愛いよ、パン。

これからも健康でいてくれよな。パン。


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