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【web小説感想】『王子の偽婚約者になったら警護団が作れました!』著:高岩 沙由

夏といえば読書感想文。小学生の頃、好き勝手に書いていたら当時の担任から「ふざけすぎです」とご指導いただいたのを今でも根に持って……覚えています(笑)
先生へ。私は今でも読書が好きです。私より。

さて、今年の4月にとある創作系ディスコ―ドサーバーに参加しました。小説やイラストだけでなく、動画配信やゲームクリエイトなどの幅広いジャンルに携わるサーバーさんです。
せっかく参加しているので、同じ参加者さんの小説をぜひ読ませていただきたいと思い、『夏の読書感想文企画』をサーバー内で開催しました。企画の開催を許していただいた運営さんたちには圧倒的感謝です。

<企画概要>
目的:スガが皆さんの小説を読んでニッコリする
参加条件:
○募集数は先着10作品。1人につき1作のみ。
○字数制限は設けませんが、長編は2万字相当部分まで読んだ時点で感想を書きます。
○投稿サイトは会員登録不要かつ無料で閲覧できるサイトのみ。
○作品ページへの評価はカクヨム、ノベルアップ+、Nolaノベルのみ。その他のサイトはスガのnoteにて感想を投稿します。
※スガが上記3つのサイトのアカウントしか持っていないためです。
○ジャンルは不問ですが、地の文にこだわった作品をお願いします。
※スガがニッコリするのは美しい情景描写や、心を揺さぶられる心情描写だからです。
○感想に求めることを教えてください。
(例:)とにかく褒め倒してほしい、良かったことも気になったことも教えてほしい、誤字脱字を見つけてほしい 等

今回は第1弾として、高岩沙由さんの『王子の偽婚約者になったら警護団が作れました! 』を読ませていただきました。参加いただきありがとうございました!

あらすじと作品傾向

<あらすじ>
舞台は自然豊かな国、ランメルト。
この国は周囲を森や山に囲まれているため、頻繁に魔物の被害にあっていました。しかし、それに対して国が対策を立てることはなく、国民は町ごとに自警団を組織し、日々魔物の被害を国の援助なしで防いでいるという状況にありました。
主人公はその自警団に所属する公爵令嬢レーヌ・アストリ。レーヌは両親や使用人に心配されつつ、得意とする魔法で魔物に立ち向かう日々を送っていました。
そんなある日、レーヌの所属する自警団が国の開催する慰労会に招待されます。「今まで関わろうとしてこなかった国が、なぜ今さら?」そんな疑問を持ちつつ向かった王城。そこで、第一王子テオドールがレーヌを婚約者に指名するところから、物語は動き始めます。

<作品傾向>
恋愛/異世界ファンタジー/長編/女主人公

感想

今回は長編小説ということで、企画概要にあるとおり2万字相当部分の8話まで読ませていただくつもりでした。が、結論からいうと最終話まで読みました(笑)

シンプルに続きが気になったのと、話の展開的に最後まで読まないとちゃんとした感想が書けんなあと思ったのが理由です。今回の感想は最終話まで読了した時点のものであることをご了承くださいませ。

また、作者さんからは、
『初めての恋愛が主題の小説で、ものすごく苦労しながら書いた大切な小説です。これから恋愛小説も書きたいので、良いところも悪いところも教えてほしいです。』
とのことでしたので、今回は良かったところと気になったところをメインに語らせていただきます。感想よりも批評っぽくなるかもしれませんが、お許しください。

<良かったところ>

まず最初に、この作品は主人公を取り巻くキャラクターがすごく良いです。私の推しキャラは主人公の親友ポジションにいるイネス。薄紫色のドレスが似合う女はだいたい好き。イネスの恋のお話もそのうち読めるのかしら、なんて少し期待しています(笑)

主人公のレーネも、公爵令嬢でありながら自警団に所属するほどの正義感をもっており、時には身を挺して他人を庇うこともある強かな女性です。年頃の女の子らしいところもあり、それは4話でレーネがとある男性から花束をもらうシーンに現れているのではないでしょうか。男性が花束(花言葉)に込めた自分への恋情に気づき、赤面してしまう姿はとてもかわいらしくて好感が持てます。

後々この花束も良い仕事をしてくるのですが、このシーンは伏線のはり方が綺麗だなとも感じました。

次に、物語の展開が面白いなあと思いました。
これは個人的な考えなのですが、恋愛小説って、
①メインカップリングの二人が出会う
②お互いが意識し始めて良い感じの関係になる
③と思ったら困難が立ち塞がる(離別、ライバルなど)
④困難を解決して結ばれる
というのが王道展開かなと思っています。
本作はその王道展開からちょっとずれた展開だと感じました。

ネタバレになるのであまり深くは言えないのですが、本作はメインカップリングの二人がお互いを認識するのが9話とかなり遅めのスタートを切っています。最後まで読むとこれも理由があったのだとよくわかりますので、ぜひご覧になってくださいませ。

遅めのスタートを切ったぶんか、出会いからテオドールの好き好きアピールが強かったのも印象的でした。我慢してたんだね、殿下……。そんなところも愛しくて好感が持てますし、甘々展開が遅れを取り戻すために全力でドコドコと疾走してくるようすは圧巻なのでぜひ読んでいただきたいです(笑)

<気になったところ>

気になったところというか、読者が読み進めていくにあたって阻害要因になりそうなところが2点ほどありましたのでそこを書きたいと思います。

1点目は前述したとおり、スタートの遅さです。
恋愛小説を読みたいと思っている人が求めているものは、『手っ取り早いトキメキ』ではないでしょうか。好みの殿方から囁かれる甘い言葉だとか、それに心を揺さぶられる主人公への自己投影を読者は求めているはずです。イチャイチャの供給が遅れれば遅れるだけ、読者は離脱してしまう恐れがあります。

本作の展開上、スタートの遅さはしかたのないことだとも思うのですが、読者が『今後の展開』を知るにはとにかく読むしかありません。これが『今まで読んでいて信頼している作家の手法』であると読者が知っているのであれば話は別です。信頼している作家の話は面白いと信じることができるので読み進められます。しかし、本作は作者さんが初めて書く恋愛小説なので、読者の信頼度は期待できません。

これは提案なのですが、額縁小説形式にするのはいかがでしょうか。
【冒頭に10話の一部(イチャイチャパート)をぶちこむ】→【どうしてこうなったのか、それは少し前にさかのぼる…で1話スタート】→【10話で戻ってくる】
なんてすると、ありがちではありますがスタートダッシュと共に「今後こうなるんだ」という読者の信頼は得られるかなと思いました。

2点目は、文章や説明が丁寧すぎることです。
本作を読むにあたって、一文の長さが少し気になりました。例えば、1話の冒頭部分。

国の王都ユルバンも例外ではなく、王都を出てすぐのところにある、魔物を見張るための塔の中から、24時間交代制で見張りを立てており、王都に魔物が入り込まないように日々目を光らせていた。

『王子の偽婚約者になったら警護団が作れました!』
1.今日もお呼びがかかります

この文章、一文で90文字ありました。ちょっと長いかな~?という気持ちになってしまいますね。わざと一文を長くして文章のテンポを楽しんでもらうという手法もありますが、特にそういったことを意識していないのであれば一文は短くまとめるといいかなと感じました。

一文が長いとどんなデメリットがあるかというと、
【読者の目が滑る】→【もう一度読み直す】→【読み直しを繰り返す】→【疲れて続きが読めなくなる】
ということが起きます。それは読者も作者も望むところではありません。

例にあげた所は、以下のようにすると短くまとめられるかなと思います。

国の王都ユルバンも例外ではない。王都を出てすぐのところに塔があり、そこでは24時間交代制で見張りを立てていた。王都に魔物が入り込まないように、日々目を光らせているのだ。

一文の長さの他にも、世界観やキャラクターの説明に文字数を費やしている部分が散見されました。恋愛をメインテーマにするのなら、1~8話は削れる部分が多くあるかなという印象です。

また、キャラクターが多いので読みながら「この人何の人だっけ?」となることが多々ありました。作中で重要な役割を担っていないキャラクターは、個人名ではなく、役職名だけの標記の方がわかりやすいかもしれません。

地の文は作者さんの好みだとかこだわりだとかが強く出るところかと思います。「これがいい!」と言ってついてきてくれる読者もいると思うので、私の提案は戯言程度に聞き流してください。

終わりに

感想と言いつつも批評じみたものになってしまいました。作者さんの望むような内容でなければ申し訳ありません。

ストーリーやキャラクターがとても魅力的だったので、上記のような阻害要因によって離れてしまう読者がいたら悲しい……という気持ちで書かせていただきました。ご理解いただければ幸いです。

夏の読書感想文企画は、現時点で9作応募があります。素敵な読書の機会をいただけて本当にうれしいです。残り8作、少しずつ拝読させていただきます。

最後になりますが、応募していただいた高岩 沙由さま、本当にありがとうございました。心優しいレーヌと、ちょっと強引だけど愛情の深いテオドールの物語、とても楽しく拝読させていただきました。
本作は以下のリンクから読むことができます。『小説家になろう』のアカウントを持っている方も、持っていない方もぜひ読んでみてくださいませ~!

王子の偽婚約者になったら警護団が作れました! (syosetu.com)


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