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4年ぶりに東京へ行った話の続きの続き

ドトールで無事腹ごしらえしたわたしは待ち合わせ時間より少し早めに西新宿五丁目駅に到着した。

お仕事相手ではあるけれど、それを超えて大好きなおふたりと久しぶりに会えるとあってちょっと緊張していたのに、トイレから出た途端に後ろから「ちょっと!ちょっとちょっと!」と声をかけられ、すわ!怪しいやつ!と思ったらユミタさんだった。

ユミタさんは『鯵ぽた屋』という陶器を中心に展開するユニットの絵付け担当さんだ。かわいい上にねこ愛があふれてて実はロックな画風が大好きで、それ以上にご本人が面白いヒトなのだ。そしてちょっと変。

「やだ!トイレから出たらさ前にいるからさ!ちょっとちょっと!」と言いながらガツンガツン肩をぶつけてくる。これはあれだな、ねこでいうところの愛の頭突き。

西新宿五丁目駅は新宿から二駅なのに改札がひとつというところが待ち合わせに最適だ。さっきまでいた上野や浅草に比べるとここはわたしの地元駅ではないのかと思うほどにひとがいなかった。

そんな改札前で「やぁだ〜元気だったー?」「元気だよぅ〜」とぬるぬるしたやりとりをしている妙な二人組にふわりと近づく70年代風おしゃれお嬢。

「あっ!あっ!コ、コンニチハ!!」
ああかわいい。
今回久しぶりの東京で、今後のことも含めてユミタさんとお茶でもしながらお話しようと決めたのだが、それならもうひとりとお誘いしたのがこのおしゃれお嬢、すぎはらゆりさんだった。

すぎはらゆりさんもユミタさんと同じく、わたしが100%信頼している大好きなねこ作家さんだ。アイテムは多岐に渡り、企画展のたびに新作山盛りで、かわいいものやコレはいいぞ!と思うものの中に必ずひとつかふたつ(……お、おぉ?)と思う謎なものが混じっているのもすごいと思っている。どこから思いついた?的な、なぜこれを作ろうと思った?的な、なのに見ているうちに納得してしまうというか、まあとにかくユミタさんもすぎはらさんも、すごい作家さんなのだ。

そしてすぎはらさんもやっぱり、ちょっと変。

とりあえずねこが縁で知り合った3人でお茶をする。
「このへんどっか知ってる?」と聞くと地元民ふたりともまったく知らないと言う。
「わたし、この駅初めて知りました」とすぎはらさん。
「あたしも初めて来た」とユミタさん。
だからと言って検索するとかそういうことは一切せず、3人ともにやにやしながら地上に出た。なんとなく会えただけでうれしくてにやにやが止まらない。

「あっち行くと新宿方面だからなんかあるんじゃない?」というユミタさんの提案に、うんうんとうなづくすぎはらさん。そうなの?と訝しみながらも先頭に立って歩き出すわたくし。
「わぁ名古屋の人が先頭だ」「本当だ」
いやいや、キミらが行かんからやないか。てゆーかほんとに店ある?
と数メートル行くと店らしきものが。
松屋。
さすがに松屋のカウンターでは仕事の話はできんな、ともうしばらく進む。
あ、と思ったらファミマ。
あ、と思ったらセブンイレブン。
あ!よさそげな!
「本当だ!いい感じ!」
とゴロゴロとパートナーをせかして行くも、素敵喫茶店は残念ながらクローズ。

「このへん日曜休みなんだねー」
「そうみたいですねー」
あのね、この時点で、この三人の中でいちばんどうしようかと思ってたの多分わたしだと思うの。ほんとにね、このふたりときたら。


都庁と記念写真

「あ、都庁ダヨ!」
「本当だ!都庁!」
たしかに都庁が見えてきていた。
わぁ。
「大きな公園だね」
「なに公園ですかね」
「新宿中央公園?」
「そうみたいですねぇ、初めて来ました」
「あたしもー」
どこかお茶飲めるところを!と必死でキョロキョロしているのがあほらしくなるくらい、のほほんと楽しそうなふたりに、公園行ってみる?と声をかけると行こう行こうと二つ返事が返ってきた。


ピクニック気分

広い芝生の上にマットを敷いてピクニックを楽しんでいる家族連れがわんさかいた。楽しそうでいいねえ。
だがしかし、公園内にある飲食施設はやっぱり見るからにひとがあふれていて、そこに切り込む度胸は誰も持っておらず。
「あっちにデニーズあったから」
「デニーズデニーズ!」
結局、デニーズにすんなり落ち着いたわたしたち。
昼、ドトール。お茶、デニーズ。
こだわりとは真逆の道をゆく。

すぎはらさんはタブレットでの注文が初めてのようだった。
でも自分がいちばんタブレットに近い位置にいるんだという意識が、彼女を注文へと駆り立てている。
壁にとりつけられたままのタブレットを90°の角度で覗き込み、どうしましょう?ドリンクバーがありますよ?とわたしたちを振り返る。
そしてドリンクバーを一つ頼んだところで次に進んでしまい、あっしまった…と狼狽えている。
なんなのこのかわいい生き物は。
「すぎはらさん、タブレットをはずそうか」
ほら、とタブレットをテーブルの真ん中に置くとすぎはらさんは「ああ!」とにっこり笑った。
「外れるんですね!」
もう一回言います。なんなのこのかわいい小動物は!!背は高いけど!


デニーズのちっちゃいパフェ

そしてその後は真面目に仕事の話をしたり、愚痴を言ったり、仕事の話をしたりした。ものづくりにおいてはユミタさんの方がちょこっとだけ先輩なのだけど、お互い刺激になってていいなと思った。わたしが午前中の仕事先で買ってきた作品をふたりが穴の開くほどじっくり見ているのもよかった。

そして夕闇が迫ってきて、赤福をそれぞれに渡しわたしたちの会合は終了となった。またのんびり駅まで戻る。
赤福も残り3箱になりパートナーもずいぶん身軽になった。

「わたし、今頃言うのもなんなんですけど、今日誕生日で」
帰り道で突然すぎはらさんが言った。
「えーー!!」
驚くわたしとユミタさん。当たり前だ、なぜこんな別れ際に!
「早く言ってよ!」
「そうだよ、せめてデニーズで言ってくれたらお祝いしたのに!」
「ほんとだよ」
「いえいえ、お誘いいただいた時にああ誕生日におふたりに会えるってすごく嬉しくて」

顔を見合わせるわたしとユミタさん。なんだなんだ、わたしらそんなこと言ってもらえるような人材じゃないぞ、とお互い目で語っている。

「とてもいい誕生日になりました」

マジか。
たらたら歩いて公園で家族連れ見て、この人たち車で来てるのかな、車だよね、免許持ってる?持ってない、あたし持ってる、え!本当ですか!免許持ってるなんてすごい!勉強したんだね!免許取るのってすごく難しいんですよね?!すごい勉強がんばった?いやあたしは免許とったの遅かったからまあまあ勉強頑張ったけどそこまでは…免許の勉強難しそう!などと東京育ちと名古屋育ちの温度差のあるどうでもいい会話をしてデニーズでドリンクバーを頼んだだけなのに。

そんな誕生日にしてしまって申し訳ない。
せめてケーキくらいご馳走したかったと言うと、すぎはらさんは
「赤福がなによりです!」と答えた。

ああよかったね、パートナー。
途中何度もパートナーで来た意味って…と思ったりもしたけれど、すぎはらさんの誕生日のためだったのか。報われたねえ。

西新宿五丁目駅に戻るとそこには次の約束の相手が待っていた。
かわいくってちょっと変なふたりの作家さんに別れを告げて、わたしはその相手の方へパートナーを連れて近づいた。

またお茶しただけで終わってしまった!!!
次で終わるはず。











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