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ゴミ出しで感じた冷たい風がなによりも嬉しかったあの日の話 ”ドライブ/Base Ball Bear”を聴いて。

趣味のひとつが音楽です。コロナ前はフェスに行ったりライブに行ったり、結構大忙しでした。高校〜大学の頃は毎週のようにライブハウスに行っていましたね。それが本当に楽しくて、あの頃に爆音を浴びる楽しさを知りました。

高校生の時に初めてライブに行ってから、現在に至るまで約10年ずっと好きなバンドがあります。下北沢で結成されたBaseBallBear(ベースボールベアー)というバンドです。

通称ベボベというのですが、私の青春時代はこのベボベと共に過ごしてきたと言っても全く過言ではありません。

フロントマンの小出裕介さんという方は、いろいろなことをしっかり考えている人だと思います。いろいろなと曖昧な言い方をしたのは、本当にいろいろ考えているからです。説明できないほど、音の作り込み方や制作への向き合い方など、本当に奥深くまで考えていると感じます。

小出裕介さんのつくる音楽と共に生きてきました。つらいことがあった時ももちろん聞きましたし、表出しづらいけど抱えている感情を出したい!という時にも手伝ってもらいました。

生きていれば色々あるように、ベボベというバンドも色々なことがあって(ギターが突然姿を消してやめたり)、その度に乗り越えて、そこで感じたことを歌として届け、教えてくれるかっこいい教科書のような存在です。(ギターがツアー直前に脱退し大変だった時を乗り越えようとしていた頃、このことすら物語として作品で昇華させたいと言っていた様にはマジで泣きました。)

小出裕介さんやベボベのおかげで、出来事に対して自分の思いを持つことを学びました。いろいろ考えてそれって自分に置き換えたらどう?とかどう思った?世間に惑わされないで考えてみようと思えました。そしてその後、感じたことを歌詞や文章にして書く面白さを見つけました。

仮に誰に見せるわけでもない歌詞や文章も、誰かに届けることを想定すると緊張します。と同時に、見てくれるならちゃんと伝えたいと思いますし、誰か特定の人にだけ伝わるものではなく、普遍的なものでありたいと思います。その姿勢を学びました。

ベボベは歌詞を丁寧に作っているバンドでもあるので、語ろうと思えばいくらでも語れますが、最新曲でどうしようもなく共感して心がえぐられた歌詞があります。


ドライブ

という曲です。これはちょうどこのコロナ禍の期間でできた曲ですね。

これを初めて聞いた時、日に日に増えていく感染者に怯えながら孤独でいた1年前を思い出してそれはそれは泣きました(イントロがすでに泣きそう)本当に素晴らしい歌詞と声と音。


届いたスニーカー 部屋着のまま 合わせてみたら

という歌詞があります。

自粛期間中家から出ることもないけどどうも元気が出なくて、新しいスニーカーをネットで買ったのでしょうか。当時は新しいコスメや服を買ってもどこにも着て行けないし、なんだかそんなものを買うのすらためらわれるような雰囲気がありました。

本来家はリラックスできるところなのに、ちゃんと家でじっとしていなきゃと気を張って生きてたんですよね。部屋には1人だし、地元にも帰れない。帰ってはいけない。小さいこの部屋で長い冬を1人で過ごさなければいけない・・・そんなしんどさがありました。

でも届いたスニーカーを部屋着のまま合わせて鏡を見たら、なんだかちょっとだけ気持ちが晴れて、そんなに頑張りすぎなくてもいいのかもとそっと思えた。そんな状況が浮かびます。


サビの

生きている 音がする やんでも また再生しよう

も大好きな歌詞です。

先程のインタビューで小出裕介さんが、

”転校して行った友達といくら遊ぼうとか連絡取り合おうと約束しても、実際は連絡をとったりしない。で、だんだん疎遠になっていくけど、別にその間に死んだんだろうななんて思わない。当たり前に生きてるんだろうなと思っている。その予感だけで人のことを感じるって、雑な感じがするけど、自粛中ってそれに近いことになっていたと感じた”

とおっしゃっていました。そこから生きている“音”が遠くでするよいう表現になったようです。

SNSで繋がっているとはいえ、毎日はなかなかできないし顔色を見て様子を知ったりすることもできません。きっと元気で生きているんだろうなと思いながら生きる。こういうことを考えると、地元にいる親や友達に猛烈に会いたくなります。


最後に、

ゴミ出しの ついでに触れた風 澄んだ冷たさで

という描写があります。これを見た時、まさに自分の体験と重なりました。

不要不急の外出は禁止、という人生で聞いたこともないワードが飛び交う中、一日中1人で過ごし、1人でご飯を食べ、”え?下のゴミ置き場に行く時もマスクいるよね・・・?”と思いながらやっと外に出てゴミを出す。

ずっと部屋で澱んでいた空気に浸っていた自分が、風の冷たさでちょっと生き返る。ちょっとだけでもその時なんだかすごく嬉しかったんです。そのまま空を見上げてみるけど、散歩はできない。早く戻らなきゃ、不要不急の外出は禁止だから。

そんなことを思っていました。


とまってもいいし、また再生すればいい。人と人との繋がりが薄くなったり濃くなったりいろいろあって、あの頃につらさをまた経験したいとは思いませんが、ゴミ出しの時の冷たい風にうれしさを感じた感覚は忘れたくないなと思います。

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